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日本が誇る内視鏡医療

内視鏡というとどのようなイメージをお持ちでしょうか。
人間ドッグで使用される胃カメラも内視鏡の一種ですので、比較的身近な存在です。
自動車産業、カメラや光学機器、ロボットなど、日本が誇る産業がいくつかあると思いますが、実は内視鏡治療の分野も日本が世界に誇れる産業の一つであり、今回は内視鏡治療についておはなしします。

日本人の主な死因はがん

日本人の主な死因は悪性新生物<腫瘍>(いわゆる「がん」)で、全死因の約26%を占めていることから、国民の4人に1人はがんで死亡していると思われます。また、2人に1人は一生の間でがんと診断され、この傾向は過去数年続いており、わたしたち日本人にとってがんとの付き合いは避けられないものとなっています。

日本人の主な死因※1

消化管(口から始まり、食道、胃、小腸、大腸、直腸、そして肛門まで続く器官のことです)のがんで、ステージ1と言われる早期がんの場合、胃がんの5年生存率は99.5%、大腸がんの5年生存率は99.0%と言われています※2。

早期がんであれば多くの場合、内視鏡医療により、手術に伴う痛みや出血などをできるだけ少なくし、患者さんの体に対する負担を減らす治療をすることができるケースが多いと言われています。

消化管

世界に誇れる日本の内視鏡医療

日本の内視鏡医療は、1950年代の胃カメラによる診断に始まりました。

発展が著しい内視鏡治療の技術レベルの担保と、さらなる治療技術の進歩のため、日本消化器内視鏡学会で専門医制度を設けており、約2万人の医師が消化器内視鏡専門医として登録されています。

また、内視鏡機器は世界市場の大半がオリンパスや富士フイルム、HOYAといった日本企業により占められていて、日本から世界に向けて高度でかつ高品質な製品が輸出されています。


内視鏡検査の様子※2

内視鏡による治療はどのように行われるか

内視鏡と言えば、胃カメラに代表される内視鏡検査がおなじみですが、実は消化器の治療にも広く行われています。

消化器内視鏡の治療としては、主にポリープ切除術、内視鏡的粘膜切除術(EMR)、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の3つの方法があります。

ポリープ切除術は、ポリペクトミーともいい、消化管や結腸内のポリープ(粘膜の突起)を取り除くための手術です。ポリープは通常、良性であることが多いですが、一部のポリープは悪性に進展する可能性もあるため、取り除くことが推奨されます。

ポリープ切除術(ポリペクトミー)※3

内視鏡的粘膜切除術は、EMR(Endoscopic Mucosal Resection)ともいい、消化管や胃などの粘膜上の腫瘍を取り除くための手術です。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)※3

高度な医療技術が必要とされる内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

内視鏡的粘膜下層剥離術は、ESD(Endoscopic Submucosal Dissection)ともいい、消化管の粘膜下層に生じた早期がんや粘膜内腫瘍を切除するための手術です。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)※3

ESDは、手術中の粘膜切除と剥離に使用する高周波ナイフや、止血鉗子等の医療機器による粘膜穿孔、手術後の後出血等の偶発症の発生リスクが、ポリープ切除やEMRよりも高く、その分医療従事者の負担も大きくなります。

日本の医師はこうした高リスクの治療に対しても、その類まれで緻密な医療技術をもとに勇気をもって挑戦し、発展させてきました。

日本のESD症例数は世界に比べ圧倒的に多く、医師の技術レベルも高い状況ですが、こうした高難易度なESDをより汎用性のある治療とするべく、企業は様々な内視鏡機器を医師と共に研究・開発しています。

消化器内視鏡領域における止血材

当社は、マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者が発見した自己組織化ペプチドをコア技術として、医療に貢献している会社です。
この自己組織化ペプチドを原料として、日本人医師の提案により吸収性局所止血材を開発しました。
液体状態なので内視鏡治療に使う細いカテーテルを通しやすく、血液等と接することにより瞬時にゲル化する性質をもっており、日本のみならず世界中の病院やクリニックにおいて広く使用されております。

※1 出所:厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」より当社作成
※2 出所:全国がんセンター協議会「KapWeb」
※3 出所:https://www.kango-roo.com/