お星様
これはもう十数年前のおはなし。
ちょっと具合悪くして入院した。
6人部屋の窓際ベッド。
初日は私ひとりだった。
入職した年に就職先に入院って…
それも聞いたこともない病名。
ちょっと怖い。ついてないな。
退屈だろうからと同期が暇つぶしグッズ
たんまり持ってきてくれたのが嬉しかった。
入院翌日、向かいのベッドに
入院してきたのは、おばあちゃん。
私のおばあちゃんにしたら
まだ少しお若いのだけれど。
そんな風に駆け寄りたくなる様な
やさしい笑顔の素敵なおばあちゃん。
にっこり話しかけてくれた。
「 あなた見たことあるけど、病院の子よね? 」
入職したばかりというのに
受付で見かけて覚えてくれてたようだった。
「 シソ巻きは好き?作るのが好きなの 」
私の方は2泊3日ですぐ退院となった。
おばあちゃんも無事退院となり
次に来院した時にまた声をかけてくれた。
袋いっぱいにパック詰めされたシソ巻き。
「 皆さんで食べてみてちょうだい 」
ニコニコのおばあちゃん。今日もいい笑顔。
シソ巻きってそれまでまともに口にしたことがなくて、食べてみたらとっても美味しくて驚いた。
大好物になった。
おばあちゃんは来院の度に届けてくれた。
お話させていただくのが癒しの時間だった。
ある日、おばあちゃんが
ストレッチャーに乗せられていた。
「 ちょっと調子が悪くってね。 」
その日の帰りも次の日も毎日
帰りに病室に寄っては お話をさせてもらった。
日に日に状態は悪くなり、お話も難しくなった。
面会に来ていた旦那さんに
花を置いてもいいか尋ねた。
お花屋さんへ急いだ。
「 お見舞いにはビタミンカラーがおすすめです 」
オレンジのお花を抱えて病室へ。
大きな字で手紙を書いておばあちゃんに見せた。
酸素マスクを付けて、苦しかっただろう。
話せないけど、いつもの優しい可愛らしい笑顔でうんうん。と頷いて見せてくれた。
旦那さんに挨拶して
泣きながら帰ったのは覚えてる。
紙に何を書いたのかは思い出せない。
入職したての自分。
ずいぶん若かったね。
病棟の許可も取らず
身勝手だったな……と未だに反省する。
今の私ならきっと躊躇ってしまうだろう。
沢山の愛をくれたおばあちゃんに
何かの形でお返しがしたかったんだね。
あの日が最期だった。
おばあちゃん。
受け取った愛は今でもずっと
ここにしまってあるよ。
手作りのものを誰かに
喜んでもらう温かさは
おばあちゃんがくれたのかも。
わたしは何かひとつでも与えられたかな。
当時、どこかのblogに
このお話を書いたけれど
見つけられるはずもないから
また書かせてもらったよ。
またいつかお会いしたい大好きな人。
今度は私のお菓子たくさん食べてね。
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