津永　コウタ

エッセイともショートショートともつかないような文章を、不定期に投稿します。

津永　コウタ

エッセイともショートショートともつかないような文章を、不定期に投稿します。

君を煙に巻く　（第9回NOVEL DAYS 三題噺バトル　佳作）

　とある学生マンションの一室に、一組の男女が居た。二人は何をするでもなく、ただ黙ってだらだらと経過していく時間を同じ空間でやり過ごしていた。このような何の意味も生産性もない時間が、いつからか彼らにとっての日常となっていた。 　おもむろに、女の方が煙草を取り出し、それに火をつけた。吐き出しされた煙が、少しずつ部屋を白く埋め尽くしていく。 　彼女はこの家の家主であり、ついでに、傍らに座る男のサークルでの先輩に当たる。そんな関係性もあり、男の方はこの傍若無人な振る舞いを無理矢理

津永　コウタ

    • 微妙な果実

      　久々に梨を食べてみたら、あまり美味しいとは感じなかった。 　勿論、いわゆる「外れ」のものを引いた可能性はあるし、実際「当たり」か「外れ」かの二択であれば後者を引き当てるのがお似合いな人間だと自分でも思っている。 　しかし、実家からのお裾分けとは言えもう自力では顔もはっきりと思い出すことが出来ないような親戚がわざわざ送ってくれたものなのだし、この不満足の責任を梨に押し付けてしまうのも何だか気が引けた。きっと僕の味覚が変わったのだろう。梨なんて最後に食べたのは、もう随分と前

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    君を煙に巻く　（第9回NOVEL DAYS 三題噺バトル　佳作）

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