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麻生田町大橋遺跡 土偶A 175:希少種の生きる杜

岡崎市秦梨町(はだなしちょう)の鏡山神社から県道35号線に降り、南に1.3km近く移動すると、左手(東側)20m以内を流れる乙川(おとがわ)に架かった築野橋の脇に到達しました。

岡崎市茅原沢町
岡崎市茅原沢町 築野橋/茅原沢神明宮

築野橋上から乙川の上流側を見下ろすと、谷は深く、左岸(下記写真右手)には高木が鬱蒼と茂り、右岸には川床に土砂が堆積して丘ができており、そこによく伸びた竹林ができている。

岡崎市茅原沢町 築野橋上流側

乙川の水量は少なく、川床にはおびただしい河原石が蓄積されているのが見える。
これほど川床にまんべんなく石が露出しているのは乙川を辿ってきて初めてのことだ。

一方、下流側を見ると、川幅は30mほどあるのだが、両岸の川床に石や土砂が堆積し、潅木と雑草がそれをすっかり覆ってしまっており、実際の水路幅は10mほどしか存在しない。

岡崎市茅原沢町 築野橋下流側

水の流れは速くなっており、川床に存在する石に当たって、白い波しぶきがあちこちで上がっている。

乙川の行く手、70mあまり下流で、左手から流れてきている男川(おとがわ)が乙川に合流しているが、合流した部分から下流は水面に石がまったく見えない。
それにしても、乙川も男川も、ともに読みは「おとがわ」で紛らわしいが、それぞれ名称の由来は異なる。
『新編岡崎市史 20 総集編』(p112〜113)によれば、以下のような由来がある。

・水音が高いので音川→乙川(当て字変更)
・川上に山神があり、そこから流れ出るのを「男神川」「男川」と言った

川筋を見ると、男川に乙川が流れ込んでいるように見えるのだが、合流点以後の川筋は乙川になっている。

35号線側(右岸)からT字状に東に延びる県道37号線に入り、左岸に築野橋を渡って、北東に40m以内で、左手に常夜灯と石鳥居のある社頭に出た。

岡崎市茅原沢町 茅原沢神明宮 社頭

社頭脇に愛車を駐めて、最初の石段を上がると、目の前の土壇上に設置されたのは石造伊勢鳥居だった。

岡崎市茅原沢町 茅原沢神明宮 鳥居

その伊勢鳥居と次の土壇に設けられた石段の麓にはアラカシと思われる樹木が荒々しい幹を伸ばしていた。
3つ目の石段のある土壇の左端には教育委員会の設置した『天然記念物 茅原沢神明宮社叢林』という案内板が立てられており、以下の案内があった。

茅原沢神明宮の社叢は、アラカシを主とした照葉樹林 で、乙川と男川の合流点に位置している。
林内の構成はアラカシが主であるが、ツブラジイ・コナラ・アベマキを従とし、その下にサカキ・ヤブニッケイ等が多く見られる。特に県下にも稀なトチュウヒメシャラヒメシャラがかなり多く混生することは、 注目に 価する。トチュウヒメシャラヒメシャラの一種で、葉の両面に毛の多い東海地方特産の品種である。
乙川ぞいの林には、木本としてオオズミ・ヒメシャラ、その林床にはムヨウラン等の分布上貴重な種が見られる。
県の環境保全地域にも指定されている。
昭和五十三年十月二十一日指定

鳥居をくぐって3つ目の土壇上に上がると社叢が開けて明るい空の下に出たが、その先には2.5mほどの高さの土壇が組まれ、4つ目の石段が立ち上がり、その土壇上にはアマテラスを示す8本の鰹木と内削ぎの千木を乗せた銅板葺切妻造平入の拝殿が立ち上がっていた。

岡崎市茅原沢町 茅原沢神明宮 拝殿

社殿の背後は再び社叢が壁になっている。

最後の石段を上がると、拝殿は4間幅の比較的新しい建物で、白壁に木部は素木、特に柱は丸太の柱が使用されていた。

岡崎市茅原沢町 茅原沢神明宮 拝殿

白壁や円柱は寺院の要素なのだが、不思議に神社のイメージが強い。
連子窓は力強いイメージがあり、中央の灼けた格子戸だけが旧いものが流用されている。
珍しいのは注連縄が太いものと細いものが二重に、八の字型に張られていたことだ。
拝殿前で参拝したが、『神社名鑑』によれば、祭神は以下の3柱となっている。

・天照大御神
・猿田彦神
・大地主神

創建に関しては不明だが、字家下の社口社と字梅薮前の地神社(大地主神?
)の2社が本社に合祀されている。

拝殿前から左脇に回ると、拝殿とは切り離された形だが、拝殿の真後に本殿覆屋が祀られていた。

岡崎市茅原沢町 茅原沢神明宮 本殿覆屋

瓦葺入母屋造妻入の建物で、総素木で柱は角材が使用されており、白壁は無いのだが、雰囲気は拝殿とは逆に寺院建築ぽい。

境内には自然石が露出しており、黒っぽくて摂理のある石だが、茅原沢町を代表する石をしらべてみたのだが、該当するものが見当たらず、名称は特定できなかった。

岡崎市茅原沢町 茅原沢神明宮境内 石

拝殿の東側の草原に石段と石を組んだ拝所を持つ境内社が建てられていた。

岡崎市茅原沢町 茅原沢神明宮 境内社/トチュウヒメシャラ

境内社の両側に幹が樺色に青磁鼠色がブチになった珍しい樹木が生えていたが、案内板によると、この樹木は「茅原沢のとちゅうひめしゃら」と呼ばれている愛知県では稀な樹木で、この杜には多く混成しているという。
トチュウヒメシャラはナツツバキ属に所属する樹木で白いツバキとでも言えるような花を咲かせる。

屋内を観ると、奥の棚の上に総素木の社が奉られ、雪洞が並んでいた。

岡崎市茅原沢町 茅原沢神明宮 境内社社口社?

ここに合祀された社口社ではないかと思われる。

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ヘッダー写真は愛知県内稀産の陸貝であるツムガタモドキギセルだが、上記に紹介した茅原沢神明宮社叢林に生息しているといいます。要するにカタツムリの一種ですが、担いでいる殻が円盤形ではなく、捻ったキセルの形をしている珍しいカタツムリです。2021年の時点では、愛知県内に生息するキセルガイ類は 22種が記録されているそうです。縄文時代にも生息していたかは不明ですが、彼らはカタツムリを食用にしただろうか。ナメクジは三河の無医村では咳止めのために生で呑み込まれていたのを知っています。

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