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心の扉をパァッと開けさせることができない側の人間

うっすらとだが、ずっと思っていたことがある。
これは、長く生きれば生きるほど、
人と接すれば接するほど、
私の中ではっきりとしてきていることで、
コンプレックスでもあり、
しかし、どうにかできることでもないので、もう諦めているし、
「狙ってやるべき」ではないということも分かっている。

だが方法やコツがあるならば抜け出したい状況である。
なにが自分に欠落しているのか、知りたい。


こういう漫画があったとする。

あったとして、寄せられる感想は、
「職場の先輩、ナイス!」「その気持ち、分かります」
「そうそう、周りに相談しても無駄なんだよね〜…」
というものが恐らく多数を占めると思う。
私もそんなような感想をもちます。

でも、超フラットな気持ちでこういう漫画を読んで、
自分が相談された側だったらどう返すかな……とよくよく想像してみると、


絶対に自分、こっち側じゃん!!と思うのです。

もちろん相談された場合、
一所懸命その人のためになるような回答を考えるけど、

相手の相談意図を汲み取りきれず、
自分の人生経験に重ねることもできず、
「あ〜、〇〇すれば大丈夫なんじゃないかな…」
みたいな、当たり障りのない軽いことを言って、
相手に「そっか…そうだよね」的な暗い顔をさせてしまう、
この、モブキャラとして登場する悪役なんです、自分は。

心当たりもちゃんとある。
相談してくれた人の顔が晴れる瞬間を見たことがない。
曇った顔を見て、あぁどうすればいいんだろうと自分も悩み始めて、
結果、顔が曇った2人が向き合うという状態になる。
それでしばらく考えて答えが出せるならいいが、
あんまりにも私の中で答えを出せないと「し、知らねぇよ…頑張るしかないんじゃないのか…」という気持ちも湧き上がり始めて、
もう本当に、相談相手として自分を選んでくれた人に申し訳ない結果になる。


私だってこう描かれてぇよ!
パァァ…みたいな光の中にいる人でありてぇよ!

でも、こう描かれたいけど、こう描かれる人って、
絶対に「こう描かれたい」ってわざわざ思ってないだろ!
さらっと出る答えが相手の心にフィットするんだろ!
羨ましいよ!

そういう人と私の違いってなんなんだ?

いや、それとも結構ちゃんと、
こういうパァァ…みたいな光の中にいる人も、
「的を得たことを言って相手の心をスッキリさせたい!」って思ってるのかな?
「いいこと言ったわ〜」って思ったりするのかな?

でも、私の想像だけど、
いい答えが出せる人は社会経験が豊富で、
自分自身もたくさん悩み、それを乗り越えてきた経験があり、
人の気持ちを知り、自分の思っていることをちゃんと言葉にして相手に伝える能力に長けている、いわばすごい人で、

大抵の人間はこっち側なんじゃないの!?
ねぇ、そうでしょ!?

……と思いたい。

それぐらい、自分のような人間が、
そして自分のような人間がするであろう回答が、
モヤのかかった、間違った側の人間として描かれていることが多くて、
勝手にダメージを受けています。


最近、特にそんなことを考えるようになった。
「ブルーピリオド」を読んだのがひとつの原因だと思う。
(めっちゃ面白いので一気読みしてしまいました)

主人公の八虎くんが美大合格を目指す中で、
学校の友達や先生、予備校の人の言葉に影響を受けたり、
または、八虎くんの言葉が誰かの背中を押したりする。

読んでいて、「あ〜自分はモブだ…この漫画でいいセリフとして描かれるようなことをなにひとつ言えない…」と落ち込んでしまったのですが、
(”自分がブルーピリオドの世界に入ったとしたら”というよく分からない目線で勝手に落ち込むな。)
(けど、読んでる人をそうさせるぐらいリアルな漫画だなと思います)

ーー
八虎くんが友達である世田介くんに”自信をなくしてほしくない”という理由で話しかけると、
世田介くんがその言葉に対して「はぁ…」とため息をつく。
八虎くんが「あ やば 台詞ミスったかも…」と内心で思う。
ーー
というシーンがあり、

「”台詞をミスったかも”と思うんだ!主人公が!人のために言葉を選んで、ミスったりするんだ!」と嬉しくなったのです。

ブルーピリオドは全体的にそうで、
主人公格の人たちも、一見モブっぽいキャラの人たちも、

こっち側の人間になったり、

こっち側の人間になったり、
みんなが時によってどちらの存在にもなるというのが、
私にとってはリアルに感じられて、救いがある。

主人公がずっと良いことを言って、人々を「パァッ…」とさせ続ける漫画よりも。


とはいえ、もしも誰かが悩んでいたら、
解決してあげられるのが一番いいし、
私もそのための答えをたくさんもつ人間になりたい。


難しいですよね。

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