雨さえ降ってなければ痩せてた

今日は、1ヶ月くらい前から緊張し続けていた仕事がひと段落した日だった。

ちょうどその仕事に手をつけ始めた頃から、あごにでかいニキビがふたつ出来て、
何を塗っても治らないので、
緊張により心から嫌な物質が出て、ニキビになってしまったのだろうと考えた。

この仕事が終わった瞬間に治るのかな、
だとしたら人体って面白いな、
と、ニキビが治るのをずっと楽しみにしていた。


結果、今日、アゴを見たらかなり良くなっていたが、
少し前からニキビに効くという漢方を飲み始めていたため、
治ったのはそっちのおかげかもしれない。

仕事への緊張がニキビに繋がるのかという人体実験を楽しみにしていた身としては、漢方を飲むべきではなかったと後悔した。


お酒をカーッと飲みたい気分だったけど、
内臓の調子が悪いし、
昨日も、一昨日も、いやその前からずっと禁酒に失敗していて、
自分への失望が積もりに積もっている。


今日こそは飲まない。
そんでもって、ランニングしてやる!!

仕事が終わって時計を見るとまだ20時。
家に帰って夜のランニングを楽しむにはちょうどいい時間。
いい気分で走れるなぁ、と思いながら、
昼からずっと居た編集所を出ると、
ザァーーーーーーーと雨が降っていた。


やめやめ。ランニングは、やめ!



こんな日に限ってなんで雨が降るんだ…と天気にムカつきながら駅に向かっていると、
目の前を走っていた自転車が滑って倒れた。
ちゃんと見えなかったけど、後ろに子供を乗せていたような気がする。

「大丈夫ですか!」と倒れた自転車に手を伸ばすと、
運転していたお姉さんが「大丈夫です!」と言った。
「大丈夫なのか」と思って、
自転車を掴んで立てようとした手を一瞬引っ込めた。

でも地面スレスレにある後ろの座席から子供の足が見えて、
どう見ても大丈夫ではなかったので、
もう一度手を伸ばそうとしたら、近くを歩いていた男性が駆け寄ってきた。

男性は「大丈夫ですか!」と言いながら同時に自転車をガッと掴んで、
後ろに乗っていた子供に「びっくりしたね」と声をかけながら立て直していた。

そうしてやっと、本当に「大丈夫」になった。


中村明日美子先生の漫画「卒業生」で、
草壁が佐条に対して「大丈夫?」と聞いたら「大丈夫」と返されて、
(「大丈夫?」って言うと「大丈夫」ってこたえちゃうんだ)
と気が付くシーンがあって、ぼんやりそれを思い出した。

私ももっと早く自転車に手を伸ばして、
それと同時に、すごく怖かったであろう子供のことも気遣ってあげたらよかったなぁと、
これは反省というよりも、男性から勝手に学ばせていただいた。

でも「大丈夫」っていう言葉を信じなきゃいけない時もあるから難しい。

帰りながら、そんなことを考えて、

何回も自転車が倒れた光景を思い返しながら、
無事でよかった、人を乗せて自転車を漕ぐのは大変だ、
なんで頑張る人があんな目に遭わなきゃいけないんだろう、
もし道路側に倒れたり、打ちどころが悪かったりしたら……

結果、家に着く頃には、めちゃくちゃに今日の雨を憎んでいた。
自転車を滑らせて危険な目に合わせた、憎き雨。



さらに、今日はお酒を飲まないと誓っていたはずなのに、
なぜか私が片手に持ったスーパーの袋の中には、
ハイボールの角瓶と、巨大な炭酸水のペットボトルが入っていた。


私は大丈夫です。


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