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エアライフルでベンチレスト射撃を楽しもう!

エアライフルのベンチレスト射撃、と聞くとゼロインのために行う委託射撃といったイメージを持つ方は多いと思います。
実際、しっかりと委託をした射撃では5発/50mでワンホール、そう感じるエアライフルも多くあり、何も疑わなければそこが到達点だと思う方も多いでしょう。

しかしそれは本当に1ホールでしょうか?

1ホールのサイズは何mmで、例えば3セット撃ったならどうでしょうか?100mでは・・・風の強い時は?

などと、疑い 突き詰め始めたらズブズブと埋まっていくのがベンチレスト射撃で、これが実に奥深い遊びなのです。

ベンチレストの楽しみ

1Hole,All for One、それがベンチレスト射撃です。意味はわかりませんけど。

実は1ホールという言葉ほど曖昧なものはありません。
的紙に空いた穴が繋がっているとして、横1列で並んでもそう言えなくはないですし、そもそも薄い的紙を使用していると、弾痕そのものが曖昧で、紙が破れて繋がっている、そんなケースもよく目にします。大口径であればよりワンホール出てる感(笑)が増してきます。

例えば5.5mmのエアライフルで完全な同痕を出した場合、穴の直径は当然5.5mmです。グルーピングはCtoC(センタートゥセンター)で測りますので直径5.5mmの穴だけが空いていれば0mmとなります。完全な委託をして再現性が完璧であれば理論上はそうなるはずですが、実際はなかなかそうはなりません。

微細な人間の入力の影響、もしくは銃の性能の影響、さらに射撃場の風の影響もあるかもしれません。これらによりグルーピングは広がります。間違った入力をできるだけ抑え、銃のコンディションを最高に保ち、外的影響を計算して、完全なワンホールを目指す、これがベンチレスト射撃です。

誰でもすぐに始められる

ベンチレスト射撃は、射撃技術が無い初心者でも一定の精度を出すことが可能です。また腕を銃や道具で補うことも十分可能です。
レストやバイポッドなど、いくつかの道具は必要ですが、まずは射撃場の備品のサンドレストから初めても良いでしょう。
ベンチレスト射撃はそれだけの楽しみではなく、エアライフルを楽しむに当たって、他のメリットもあります。
狩猟の練習になる
委託射撃は狩猟の練習にならない、と考える方もいらっしゃるでしょう。しかしながら私はそうではないと感じています。
私の狩猟スタイルだと、発砲の8割は委託射撃です。三脚やモノポッド、樹木や何かしらの構造物を使いヘッド狙いで狩猟を行なっているためです。
委託射撃は、体だけで銃を支える場合と比べて精度が出る分その扱いが変わってきます。
特に肩の付け方、チークの付け方、そしてトリガーリングで着弾点は変化します。なんとなくこの辺り、で撃つのではなく、正確に狙いを定め、
当たった、ではなく当てた!と言える精密射撃ができるのが醍醐味です。
道具への理解が深まる
定期的にベンチレスト射撃を行うことで銃の不調などにも気付きやすくなります。また精度を出すための調整や小細工(笑)は銃の理解を深めるのにも役立ちます。
車好き、が運転のみを楽しむわけでないように、エアライフルも道具そのものを整備、調整して楽しむことができます。
それに何より、自分の道具を熟知しているってカッコいいではありませんか。

必要な道具

ベンチレスト射撃に必須の道具はそう多くはありません。
ひとまず何かしらの委託するものがあれば始められます。私が射撃を始めた頃は、リュックに布を詰めて撃ったりしていました。
しかしこのレストがベンチレスト射撃の道具の要であり、海外の本気のマシンレストなどは青天井です。もはやそれ机そのものじゃない?みたいなものもあります。
ベンチレスト射撃にはこうしたガジェット遊びの側面もあり、新しい道具や小細工を投入するのは楽しみの一つでもあります。

レストの種類

サンドレスト:射撃場の備品レストで最も見かけるのがCaldwellのサンドバッグコンボでしょう。ガムテープがぐるぐる巻かれて死に体で頑張ってる姿をよく見かけます。利点はセットアップが簡単で、どんな銃でもなんとなく安定させやすいことと、反動を吸収し、それなりのグルーピングを出しやすいことです。

バイポッド:バイポッドは銃の前方2点で指示しますのでまずは左右のズレを抑えることができます。上下の調整や固定は、サンドレストのリア側を使ったり、腕を挟んで調整したりといったこともでき、その組み合わせではサンドレストの反動吸収の利点も僅かにあると感じています。

機械式レスト:マシンレストは前だけのものと前後一体のものがあります。海外のベンチ競技では前後一体も許可されていますが、後述のABC杯では前後一体レストは禁止です。
フロントレストにクッションがついたものはサンドレストに近い効果があります。高さの調整ホイールがついたモデルであればより正確に狙えます。
前後一体レストは、銃との相性が非常にシビアで、特にブルパップは合わないケースが多いです。
ちなみに↓のリンクのフロントのみの機械式レストはめちゃくちゃ良いです。

トライポッド:最近海外のフィールドベンチで流行っているのが三脚を使った射撃です。三脚といっても卓上サイズのもので、足を扁平に広げて使用します。これは主にアルカレールとの組み合わせで使用されます。
私も現在これを使用しています。特徴は射撃時の銃の後退がほとんど起きないことですが、自由雲台を介し止めているため、左右のブレなどは意外とあります。反動制御もややシビアですので玄人向きです。私が玄人かというと微妙ですが(笑)

ラボジャッキ:実験用の小型のパンタグラフ昇降機でリアレストとして使用します。バイポッドやトライポッドと組み合わせ正確な狙点を作るのに使用しますが、反動の吸収性はないので、これらの組み合わせの場合、肩の入力にコントロールが依存されます。

的紙

いかに恥ずかしくても自分のグルーピングを正しく認識することが何かの第一歩です…下の10shotの左のフライヤーよ…

ベンチレスト射撃を楽しむ際に、的紙は非常に重要です。
正直、ただ1ホールを主張したいなら薄い的紙を使えばそれっぽくなります(笑)
しかしベンチレスト射撃は自分と向き合う遊びです。グルーピングを目的とする際は特に10mm程の範囲で精度を測るので、はっきりと弾痕が確認できる必要があります。

しかしながらそうした目的の的紙はあまり市販されていません。
私が始めた当初は、ボール紙の工作用紙に丸いシールを貼り使用していました。(たぶん工作用紙で始めたの、私が最初だと思います笑)

しかし仕事などで射撃回数が増えるにつれ煩わしくなり、どうせならと自分で作ったのがこのGeeks Targetです。
基本は工作用紙と同じです。A3超のサイズで、横30cm縦40cmの範囲に1cm単位の罫線が引いてあり、狙点はブルズアイではなく十字線で、より正確にセンターを狙えるようにしています。

紙の厚さは一番悩んだところで弾抜けだけを重視して厚くするとコスト(販売価格だけでなく流通コストも)が上がり、持ち運びも不便になります。
丸めて製図ケースなどに入れられて、取り出しても癖の付かない紙を選んだ結果、厚手の非コート紙に落ち着きました。副産物として、非コート紙であるためどんなペンでも筆ノリが良く、的紙をデータとして保存する際も便利になりました。

また、グルーピングよりPOIを重視して撃つ場合の的紙としてBulbuls Eye Targetも用意しています。これはA4サイズで作成しており、ローコストに射撃を楽しめます。

ベンチレスト射撃のスコープ選び

ベンチレスト射撃に使用するスコープはひとまず付いていてグルーピングが出るレベルなら始められますが、本質的な面白さは高倍率にあります。狩猟用途だと一般的には24倍程度の最高倍率が多いですがベンチレスト射撃はハマるとどんどん高倍率が欲しくなります。私は今34倍を使用しています。

FFPかSFPか?

どちらでも十分に楽しめますが、30倍以上の高倍率を使用するなら、SFPのスコープが良いでしょう。SFPはレティクルサイズが一定であるため、高倍率でも潰れず正確な狙点を維持できます。
一方、FFPは倍率に比例してレティクルサイズが変わるため、レティクルデザインによっては、最高倍率で使用すると狙点がレティクルに隠れてしまうことがあるためです。

レティクルのタイプは?
ひとまず十字に目盛りが刻んであるタイプであれば使えるでしょう。
目盛りはドットタイプより、バータイプの方が正確に狙えます。
最近流行りのクリスマスツリータイプは風の影響下やPOIの調整に役立ちますが、必須というほどではないでしょう。

バブルレベルを活用しよう
エアライフルは弾道落下が大きいため、銃を傾けると着弾は左右にシフトします。理論的にはゼロインを取った距離ではズレないはずですが、実際傾けて試してみるとズレます。これは距離の微妙なズレや、バレル直線を軸に傾いていないからでしょう。
そのため精密射撃をするならば水平の確認は必須で、スコープに取り付けるタイプのバブルレベルを使用するのが簡単でお勧めです。

ベンチレストの撃ち方

ベンチレスト射撃で重要なのは射撃の再現性です。肩の入力、頬の入力、トリガーの引き方、自分の心拍などが影響し、これらの最適値は銃によっても異なります。またそもそも銃の性能がある程度整っていないとこれらの行為も無駄となってしまいます。決して私の腕が良いわけではありませんが、1例として私の撃ち方をご紹介します。
※私は全然ベンチレストを語るほどの何も持ってはないんですが、いろんなエアライフルで年間5000発以上は撃ってはいますので、どうか生暖かくご覧ください(笑)むしろ達人の皆様からの、こうすると良い、などというアドバイスをお待ちしてます…

1)まず銃の状態が問題ないことを確認し、委託機器にセットします。机のガタ付き、パーツの取り付け、銃の水平などをチェックしましょう。
2)次に銃に触れない程度で軽く射撃姿勢を作ります。ラボジャッキなど調整できるものはここで一度スコープを覗きおおよそ合わせておきます。
3)射撃に入ります。①バットに肩を当て、②グリップを握り、③頬をつけて照準を合わせます。これらがしっくり来たら、いま一度頬を上げ、再び真っ直ぐ頬を下ろします。この時点で頬と肩のバランスはある程度固定されます。
4)最後にグリップを握り直して腕の力で引っ張っていないか確認し、トリガーに指をかけ調整、射撃を行います。

ベンチレスト射撃はこうした所作を、毎度再現して撃つ、というだけのシンプルな遊びなのですが、それ故に奥深さがあります。

例えば、なんとなくサクサク連続で撃ったら3発がCtoC5mm以内なんてことがザラにあります。しかしながらそれを意識した瞬間、次の弾は離れたところに着弾します。
逆に、1発ずつゆっくり丁寧に撃っているのに全然纏まらない、そんなこともありますし、一回ずつ肩を離して姿勢を直したほうが纏まる、なんてこともあります。

姿勢の他にもPCPエアライフルでは、レギュレーター(プレナム圧)の回復時間やバレルの温度の変化もPOIに影響を及ぼします。

結局どう撃てばいいの、というのは銃や弾、セッティング、そして人によります。ただ銃によってグルーピングが出やすい姿勢はあるようで、1例として私が撃ったエアライフルのグルーピングはこんな感じでした。

AGN VULCAN3-700:チークはできる限り触れない、肩はしっかり付けわずかに押し気味に構える。トリガーは深く握り、シアーが落ちる手前まで絞り、最後は弾くように引く。
AMA KRAiT-X:チークは触れても問題ないが真っ直ぐ上から当てる、肩はしっかりつけるが力を掛けるほどではない、トリガーはゆっくりと絞り上げるイメージ。
AMA KATRAN:チークの影響は少ない、肩は軽くあて、トリガーは指で挟むように引き切る。
FX DYNAMIC700:チークがボトルなので、真っ直ぐほおが乗るように注意、顔を傾ける方が良い、肩はやや押し気味、トリガーはセカンドを一気に引き切る。※この銃はまだ模索中です

とまあこんな感じでそれぞれ癖や特徴が異なります、いろんな銃を撃っていると、これらの癖を思い出すのに数発を要しますw
ほんとこれだけで全然グルーピングが変わるので不思議で、またこれは口径によっても変わってくると思います。
なおグルーピングの確認はスマホアプリのバリスティックXが便利です。
過去記事で使い方を書いてますのでご参照ください。

ベンチレストの奥深さ〜セッティングの楽しみ

One hole,Pray for one!(一つの穴のために祈ろう)

より良いグルーピングを生成するためには、銃のセッティングは大切です。
装薬ライフルであれば、弾をローディングし弾頭や火薬量のレシピを変えることで、どんな銃でも調整が可能かつシンプルですがエアライフルは少し違います。

エアライフルの場合、弾を飛ばすのは圧縮空気で、その吐出は銃本体で行うためです。そのため、銃によっては出力の調整が難しいものもあります。
もし手持ちのエアライフルがハンマースプリングの調整だけでも可能なら、一度試してみると良いでしょう。

私がセッティングの楽しみにハマったのはエアスラッグですが、ペレットにも十分奥深い世界が待っています。

海外の大会

米国にはUnited States Air Rifle Benchrestという由緒正しいエアライフルベンチレストの協会があり公式競技化されています。

詳しいレギュレーションなどはぜひサイトを見て頂きたいのですが、かなり厳格に定められています。

また銃砲店主催の競技大会としてAirguns of Arizonaが主催するExtreme BenchRest(EBR)、Utah Airgunsの主催するRMACがあり、こちらはフィールドターゲットやロングレンジ射撃を爆風の中(笑)楽しめるようになっています。これらはYoutubeの動画でもよく見かけますが、大手スポンサーがいくつも入り、まさにエアライフルの祭典、といった感じです。道具の使い方なども参考になるので、ぜひ一度Youtubeで動画を検索してみてください。

ABC杯に参加してみよう!!

そもそも割り当てられた射座が…この続きを知りたい方は今年のエアベンチで聞いてください(笑)

実は昨年秋に国内初のエアライフルベンチレスト競技大会、エアベンチレスト杯(ABC杯)がニッコー栃木射撃場にて開催されました。この大会は装薬ライフルを対象とした日本ベンチレスト射撃協会という由緒正しい射撃団体を運営する有志が、手軽なエアライフルを使って、多くのシューターにベンチレスト射撃の楽しさを知ってもらいたい、という思いから立ち上げたものです。

競技には、50m、100mの他に100mmSBという3クラスがあり、それぞれ好きなものに参加できます。
※SBはエアライフルに近い出力の装薬ライフルですが、50mではグルーピングが出すぎるため100mのみとなります。

競技内容は、装薬ライフルのベンチレスト射撃に準じたルールで、専用の的を使い、5shot×4セットでの平均グルーピングで競います。
※ちなみに海外のエアベンチレスト競技は、ブルズアイを使用してPOIで得点を競うのが主流です。

開催地はニッコー栃木射撃場で、風読みの腕が試されるのはもちろん、エアライフルであれば、口径、弾や弾速調整などの小細工もできるのも可能性を感じます。
SBは5.5mm口径で、弾頭は40gr程度と決まっているので、セッティングによっては十分エアライフルでも超えられる可能性があります。

告知や案内はTwitterのみとなっておりますので、AirBenchrestのアカウントをフォローし、よくご確認いただけたらと思いますが、基本内容やルールなどを下記に転載させていただきます。


イベントっぽい開・閉会式は行いません。 それぞれが好きなタイミングで射撃場に来て、主催者から的紙を受け取り、射撃後に提出することで出場したものとするオープン大会形式で実施します。
<参加費>1種目あたり500円(的紙代)。射撃場使用料(3時間3300円)は各自でお支払いください。(2023年)

・標的(4枚)にそれぞれ5発ずつ撃ち込み、グルーピングの大小を競います(点数制ではありません!)
・委託道具はバイポッド、レスト、サンドバッグなど自由。前後一体式のレストは禁止 ・射撃途中での空気の充塡は自由。ただしダイビングボンベをつないだままでの射撃は禁止
・試射的への発射数は自由。本射から試射に戻ることもできる ・グルーピングの計測は弾痕ゲージとデジタルノギスによる手動計測 ・ベンチレスト射撃の伝統に従い、賞品・賞金等いっさいありません。名誉だけ。


このようにとてもゆるやかな大会で、去年の第一回大会はとても楽しく過ごさせて頂きました。他人のセットアップや小細工(笑)を見るのもとても楽しいんですよね。

今年の開催は9月22日になりそう、とのことですが、これは正式なアナウンスを待ちましょう。もちろん私は50m/100mともに参加予定ですので、ぜひ皆さんも遊びにいらしてください。

ちなみに昨年第一回大会の結果はこちらです。
参加人数も多くないので、腕前をどうこういういうレベルではないのですが、50m/100mともトップの成績となりました。
ただし繰り返しですがベンチレストは自分との勝負です。今年はもっと余計で姑息な小細工をして(笑)さらに小さなグルーピングを狙っていきます。

ちなみにベンチレストならではの成績を出す小技などもこのAir-Benchrestのアカウントで発信していますので、ぜひフォローしてチェックしてみてくださいね。

(なんかABC杯の宣伝記事みたいになりました、笑)

ではでは。



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