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FX クイックチューンシステムを理解する

近年のPCPエアライフルは、様々な弾を撃てるように、出力の外部調整が可能なモデルが増えてきました。
出力の調整とは、主にレギュレーター、ハンマースプリングテンションの2つで、稀にバルブリターンスプリングの調整が可能なモデルもあります。
また古めの一部機種では、エアポートそのものを絞り空気量を調整するパワーダイヤルを備えたモデルもありましたが、これは今回は省きます。

さて、こうした出力調整において要となるのはレギュレーター圧に対するハンマースプリングテンションのバランスです。

ハンマースプリングテンションは強めたり弱めたりすることで、蓄圧チャンバー(プレナム)のバルブを叩く強さが変わり、エアの吐出量=弾速を変えることができます。

ただしエアの吐出は、弾がバレルを離れるまでは弾速に影響を及ぼしますが、それ以上は無駄な吐出(ブラスト)になります。逆にエアの吐出が少なすぎる場合は、ハンマーとバレル内の弾の動きが安定せず、弾速が不安定になります。

以上により、ひとつのレギュレーター圧に対して最適なハンマースプリングのテンションは決まっており、最高弾速より3%ほど低い範囲に収める必要があります。

ハンマースプリングテンションの調整

一般的なハンマーの構造

ハンマースプリングの構造は図のようなものが一般的で、ハンマーと逆側の台座がネジになっており、この締め込みでスプリングテンションを変更しています。締め込めばテンションが強くなり、緩めればテンションは弱くなります。

ネジを締め込んでいくと弾速は上がっていきますが、いずれスプリングが縮みきりコッキングできなくなったり、ネジがそれ以上回せなくなる、といった状態になり、
ネジを緩めていくと弾速は下がっていきますが、コッキング状態でもスプリングにテンションがかかららなくなる、といった状態になります。

このハンマー周りの設計は、メーカーによって様々な工夫があります。
AMAのように大きなビポットアームで叩くもの、カリバーガンアーガスはスプリングを縦置きにする構造ですが、いずれにせよスプリングテンションの調整方法は同じです。

FX クイックチューンシステムとは

さて近年のFXのフラッグシップエアライフルには、ハンマースプリングを瞬時に調整可能なクイックチューンシステムという機能が搭載されています。

インパクトシリーズで初めて搭載され、ブラッシュアップを重ねて、現在はインパクトM3(M4)、ダイナミックブロック各種(パンテーラ、ダイナミック、キング)などに採用されています。インパクト系とダイナミック系では目盛りの刻みなどに違いがあるのですが基本的な構造は一緒です。

実はこのクイックチューンシステムは、ハンマースプリングテンションを変更する、という1つの目的のために銃側面になんとダイヤルを2つ搭載しています。これが多くのユーザーを悩ませ、そして理解を諦めさせる難攻不落の砦になっていることは、海外のフォーラムなどを見ていても間違いない事実でしょう(笑)

マイクロ(フロント)アジャスターとマクロ(リア)アジャスターの2種類のダイヤルは、開発者の意図が分かればなんてことはないのですが、私も最初は理解に苦しみました。

そして恐らく、このインパクト、ダイナミックブロックシリーズを入手した国内ユーザーの95%くらいは、きっと持て余しているはずです(笑)

そして両アジャスターはロック機能がないため、意図せず動かしてしまうことも少なくないでしょう。
この記事がそうした場合のヒントになればと思います。


というわけで早速、これがどういう構造なのかを説明します。

FX クイックチューンシステムの構造

まずこの2つのアジャスターについて、トウキョウジュウホウの表記に従い、フロント側をマイクロアジャスター、リア側をリアアジャスターとして統一してお話しします。


※これらの調整は国内においては推奨されているものではありません。知識なくいじるのはたいへんきけんです。ごちゅういください。
※コッキング状態でダイヤルを動かすと、部品の摩耗、破損に繋がります。説明書を読み、注意事項を必ず守って作業してください。

数値の見方

これが理解できればあなたもクイックチューンマスター!!

さてこのクイックチューンシステムにおいて、スプリングテンションを確認するのは、本体側に刻まれた1~4の目盛りと、マイクロアジャスター(バレルローラー)後ろに描かれた△印です。

マイクロアジャスター後ろの△印が指す値がスプリングテンションの設定値です。この値が同じであればリアアジャスターの数値が異なっても設定は同じです。

そしてこのマイクロアジャスターは、リアアジャスターによって支えられており、リアアジャスターを動かすと、マイクロアジャスターの数値も変動します。マイクロアジャスターのみを動かした場合は、リアアジャスターは動きません。
さあ、まずここまでの構造は理解できたでしょうか?(笑)

リアアジャスターとは

実はこのリアアジャスターのダイヤル1クリックと、マイクロアジャスターのバレルローラー1クリックの変動幅は異なります。ダイナミックブロックで言うと、

リアアジャスター 1クリック ≒ マイクロアジャスター 2.5クリック

という対比です。
つまりリアアジャスターを使うとマイクロアジャスターより素早く大きくテンションを変えることができるというわけです。

ただし、リアアジャスターの調整幅はマイクロアジャスターの1.5目盛り分(60クリック程度)しか動かせません。

実際に私が触った感覚で言うと、リアアジャスターを頻繁に使用するシーンがあるかというと微妙なところです。

※追記1:海外フォーラムなどでリアアジャスターを1もしくは23など、どちらかに極振りしているデータがありますが、個人的見解ではリアアジャスターが上下どちらかにしか動かせないというのは本来の機能を活かしきれないと思います。
あえてそうする意味を見つけるなら、リアアジャスターを1にした上でセッティングを開始し、最高弾速を確認するために23にする、といった使い方くらいでしょうか。
そうすれば目盛り2程度で機械的セッティングが出るとしても、リアアジャスターを23まで上げれば3.5となり、マイクロアジャスターを動かすより簡単に最高弾速を確認できるはずです。

追記2:おそらくリアアジャスター機能本来の意図である『ある弾で機械的セッティングを取った状態から、瞬時にリアアジャスターで別の弾用の最適値に調整する』という使い方をした場合でも、このダイアルの調整は前後3~4クリックも動かさないでしょう。
なぜかというのは次の記事に書いています。

クイックチューンシステムの使い方

さて、結論から言ってリアアジャスターは基本的には調整幅のセンターに固定で良いと思います。ダイナミックブロックで言えば1~23のうちの13です。

そして今後もう、リアアジャスターの事は忘れましょう(笑)

というわけでいっそリアアジャスターのことを忘れてしまうことで、一般的なハンマースプリング調整と同じように考えることができます。機械的に安定する最適弾速になるようマイクロアジャスターのバレルローラーをカリカリするだけです。

ちなみにマイクロアジャスターのバレルローラーは、正確な数値を読み取るのがなかなか難しく、またロック機能などもないため、良いポイントを見つけたら必ずメモをしておきましょう。指でカリカリしていると勢いよく回ってしまい数がわからなくなることがあります(笑)
スプリングテンションの%によりますが、大体1クリック2fpsとかそのぐらい動くイメージです。

またダイナミックブロックでは目盛り1→2の間に46クリックほどあり、さらにそれらが上の目盛りで1/2刻み、下の目盛りでさらに1/2となっているので、一応1/8刻み=5~6クリック分で目視確認ができます。
ですが実際に触ってみると目盛りとクリック数には微妙にズレや読み間違いが起きるので『目盛り1.5(+7クリック)』といった感じで大きめの単位をベースに記録すると良いでしょう。

最後に

このマイクロアジャスターの最適値はレギュレーター圧によって大きく異なります。ダイナミック700のデータで言うと、低いレギュレーター圧の場合は1.5程度になりましたし、少し高くすると2.5程度が最適になったりします。ですのでどのあたりが良い、というのは一概には言えません。

いずれにせよ試射した中では、マイクロアジャスターの最大値(4付近)になると、マズルブラストも大きく燃費も落ちてしまいました。
機械的セッティングで大事なのは最高弾速より3~5%低い値に弾速を調整することです。

あまりにおかしな設定にしてしまうと、安全上に問題が出ないとも良い切れません。
十分に銃の構造やセッティング理論を理解した上で、慎重に作業を行なってください。

ちなみにf-rangeで販売しているダイナミックには私が試射で確認したセッティンデータを独自に数種お付けしています(ダイレクトマーケティング、笑)

ではでは。

↑↑たまにセッティングのヒントを呟いてます(笑)


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