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バブルの頃の恋

 古い曲を聴いたら、ずっと忘れていた昔の事を思い出した。オバサンにもあった淡い恋の思い出。

 昔々長期休暇にリゾート地の宿泊施設に泊まりでアルバイトに行き、同じ学年の男の子と知り合った。私の暮らしていた街の近くに下宿していると聞いて、意気投合した。なんとなく付き合うという流れになって、電話で時々話をする関係になった。
 理系の学校に通っていた彼は、割と忙しく、私は私で部活に夢中だった事もあり、付き合うと言っても、映画を見に行ったぐらいでほとんど会うことはなかった。
 彼からは彼が地元にいた頃の恋の話も聞いていた。幼なじみだった彼女とは終わったけれど、今でも時々彼の部屋に訪ねてくるということも。

 ある時彼が怪我をして、地元の病院に入院していると電話があった。
私は電車を乗り継いで、花を買ってお見舞いに行った。彼はとても驚いていた。私が行く事を知らせていなかったし、まさか来るとも思っていなかったのだろう。だから突然来たことに驚いたのだと思っていた。しばらく後に聞いたのだけど、その日私が病室に行く直前まで、彼女がお見舞いに来ていたのだそうだ。


 その年の冬に、私は彼の彼女だった人の職場に電話をした。
なんでそんな事をしようと思ったのか、今思い出してもさっぱりわからないけれど、私は彼女と会う約束をした。
社会人になっていた彼女はとても大人っぽく、きれいだった。私は自分が惨めに思えたけれど、彼女に案内してもらって、私の知らない街の景色に浮かれてもいた。ちょうどバーゲンセールの時期で、彼女がショッピングビルのお店で服をいろいろ選んでいるのを、気後れしながら見ていた。選ぶ服も、私とは違ってとても女性らしかった。
 お昼を食べるお店も、迷うことなく、行きつけのお店を案内され、私とは違う世界に生きている姿に、私は戸惑っていた。
だけど同じ人を好きになっていた。
私は彼女には敵わないと思った。その時、年上の社会人の男性とお付き合いしていると聞いたけれど。
 
 その日私は電車で帰るつもりでいたけれど、彼女は車で送ると言った。車の中で他愛のない話をしながら、このまま二人で彼の家に行こうと言った。
もちろん彼は私が彼女と会っていることは知らない。携帯電話もない時代、連絡もせず彼の部屋へ行った。
彼が出てきた時の彼女の表情を見て、私はここにはいてはいけないと思い、一人で帰ると言い、彼の部屋を後にした。
家に帰ってから彼から電話があり、彼女が彼の部屋で泣いていたと言った。私はそれを聞いても何とも思わなかったけれど、彼の前では弱さを見せられる彼女は大人の女性だなと感じた。

 嫉妬も僻みも感じなかったけれど、そういう面のない私はつくづくこどもだと思った。

それからしばらく彼とは会わず、電話もしなかった。なんとなくあの日が私と彼とのお別れの日になっていた。
 その後彼から電話があったのは、私が2回目の就職をした時だった。