映画鑑賞

たくさん猫がいた頃にこっそり紛れ込んで我が家の猫になったオトナの野良猫ハイジが母を引っ掻いた。
いわゆる錆び猫で、ちょっと体が大きく、どうしたん と思うほど声も大きく、もしかしたら小さい時は家猫だったのかしら?と思うくらい堂々とわたしの家感を出して住んでいた。
でもやはり野良っぽく、トカゲを狩って持ち帰ってソファーの下に恐ろしい数をコレクションしていたり、カーテンをボロボロにしながら幼児期のわたしのように上り下りを繰り返していたりしていて、
悪気なく母を引っ掻いた。

そして母 発熱。
熱が下がらない。

猫ひっかき病と診断された。

母 入院。
入院後も発熱が続き、1ヶ月ほど入院していた。
アメリカに行かないと治らないとか言われて『え??』となったけど、そのまま普通に熱が下がらないまま入院してた。
空きベッドの都合で婦人科の看者さんたちとの6人部屋だった。

当時わたしは高校生で母が家事を放棄した数年後なので、家庭内で困ることは何もなかった。
それまで通り、わたしか父のどちらかがゴハンを作り、母は家事を放棄したけどなぜか洗濯だけは放棄しなかったのでわたしが洗濯をする。
すでに母が山から拾ってきて7年同居した居候はいたけれども、
彼がいない時間は当然父とふたりきりなわけで。

ある日の夕食後、スカパーで【オースティン・パワーズ】が始まったので、父と一緒に観始めた。
そんなの初めてかもしれない。
まだ幼児の頃、石立鉄男が父役として出ていたドラマか何かで、小さい娘がお風呂で父の頬にキスをするというシーンを見て触発されてしまってそれを真似たら我が父は固まり、呼吸ができないほどの沈黙しか残らなかったので、
父に気を遣わせてしまうんじゃないかという遠慮から一緒にテレビを観るということがなかったように思う。

で、そのオースティン・パワーズ。最初は良かった。楽しく観てた。
そのうち、やたらと『ぼくのモジョ』という表現が出てくるようになった。
ネット情報によると、MOJOはフェロモンのようであり、ひとことで言うとパワーの源らしいんですが、
お下品なギャグ満載ですし、ズボンの下でモジョが暴れ回ったりしているので自分の男性器をムスコと呼んでる感じなんだと思ってしまい、
お互いに笑っていいものかわからず、途中で逃げるのもアレで、
なんとも言えない時間を過ごした。

物心ついてから父と二人きりで一緒にテレビを観たのはそれが最初で最後。

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