介護休業制度、介護休暇制度は廃止せよ

介護に関連した様々な制度がありますが、中でも軸になるのは公的な介護保険制度です。介護を語るうえで外すことのできない、キングオブカイゴといった存在です。

この制度自体は2000年4月から開始されたまだ歴史が浅い社会保険制度のため、多くの批判を浴びていますが、一方で優れた仕組みも兼ね備えており、正しく理解することで頼りになる制度なのです。

次に企業の中でよく耳にする制度として、介護休業制度と介護休暇制度があります。

介護休業制度は要介護状態の対象家族一人につき、通算93日まで休業ができます。また介護休暇制度は年間5日まで休暇を取得できます。

ところがこれらの制度の利用実態はあまりよくありません。
利用されていない要因として、まあ誰でもわかる話なのですが、介護が93日で終わるはずがないからです。

また企業において40代50代は、キャリアを積み上げる重要な時期でもあり、成果主義、能力主義が浸透傾向にある近年、おちおち休んでもいられません。

むしろ介護をしていることが会社に知られることで出世や重要プロジェクトの選抜に対して不利に働くとも考えられ、介護の事実を会社には告知しない人もいるのではないでしょうか。

こうした背景もあり、企業の介護支援はだいぶ遅れをとっています。
原因の一つに企業では介護を出産、育児支援と同様またはその延長線上と捉えている節があるからです。

育児はだれでもほぼ同一の期間として予測が可能なため、企業にとって合理的な支援制度を作ることが容易です。
一方で介護はいつ始まって、いつ終わるのか全く見通しが立ちません。

最近では企業も介護支援に力を入れ始めており、介護休業、休暇に対する追加付与や要件緩和、あるいはフレックスタイム制、テレワークなどを取り入れていますが、正直介護をしている側からすると、しっくりとこないのです。

この違和感は、仕事と介護の両立支援といった発想が前提になっているからです。

なぜ負担のかかる両立を勧めるのでしょうか。
本来、企業側の支援は外部業者と提携した介護施設の紹介、斡旋等の方向でサポートすることが望ましいと考えます。

介護休暇や休業とは在宅で介護をしているからこそ必要な制度であり、その行きつく先では介護離職といった事態にもなりかねません。

介護離職は労働者にとっても企業にとっても大きな損失となり最も避けなければなりません。

これは企業だけの問題ではなく、仕事と介護の両立といった概念が常態化していることが、日本の介護問題の本質でもあります。

現在、日本ではまず在宅での介護をベースとして介護プランが構築されます。しかしこれまで指摘してきた通り、在宅での介護には様々な問題が山積しています。

経済的な問題、肉体的な問題、精神的な問題、時間拘束の問題など。
もし施設が利用できたとしたら経済的な問題以外はすべて解決されます。
もちろん施設となると要介護者本人の意向もあったり、お金の問題も絡み簡単ではありません。

しかし、ここは個々の考え方に委ねますが、40代50代という貴重な時間を介護に費やすことは人生設計において大きな痛手となります。

最悪お金は何とでもなる、と大きく構えて介護施設を積極的に選択肢の一つとして検討していくことは、介護に直面した40代50代の方にとっては重要な発想です。

そこで40代50代の方に聞いてみたいのですが、具体的に親の居住地域の介護施設の状況をどこまで把握しているでしょうか。

例えば施設の入居状態、価格、施設のタイプなど。

よく介護は情報戦と言われますが、その一つが施設探しにあります。
今現在、在宅での介護をしていても、今後介護の負担が精神的にも肉体的にも重くなり八方塞がりとなった場合の最後のセーフティネットが介護施設なのです。

まさに施設を制する者は介護を制するといっても過言ではありません。

現在介護施設は種類も多く、わかりにくくなっていることは確かです。

公的な施設、民間の施設、最近では介護サービスが受けられるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)といった住宅と施設の折衷的な概念の集合住宅もあって、住宅か施設かといった二者択一では決めかねる状況です。

また有料老人ホームもかつては富裕層向けといったイメージでしたが、最近では助成金や企業努力もあり、利用しやすい価格設定になりつつあります。

いずれにしても大きな出費であり、マネープランへの大きな影響を及ぼすことは間違いありません。

当初はケアプランを元に在宅での介護を家族の協力のもと支えていくことになります。しかし介護状態とは刻々と変化をして重症化しやすいのです。
はじめは持ちこたえていても、やがて支えきれなくなり立ち往生してしまうことがあります。

”施設は費用が高いんじゃないの?” ”空きがなくてなかなか入居できないんじゃないの?”

確かにそうかもしれません。
ただ施設の利用を常に選択肢として意識をしてチェックしておくことにより、その時が来てもパニックにならずに適切な判断ができるのです。

親の介護で施設を利用するか否か、また入居できるか否か、これらの決定事項は決して大げさではなく自分の人生設計に深く関わってきます。

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