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現在進行形の、あの頃 7.4 FMWE旗揚げ戦感想③ 完結編

約50分という、これまでに経験した興行の休憩時間の中でも随一の焦らしを与えられメインイベントが始まった。

対戦カードは、大仁田厚、リッキー・フジ、藤田ミノル VS アブドーラ・小林、宮本裕向、怨霊 となっているが、失礼を承知で敢えて言わせていただくと、特に今回に関してはこのカードは大仁田以外誰でも良かった、というのが正直な意見だ。理由は後述・・・。

早速大仁田がリッキー、藤田と共に入場すると、大仁田は手に持っていた2リットルペットボトルの水を観客に向かって容赦なくぶち撒ける。感染防止対策が求められる今の時期、無茶苦茶な行為だ。

しかし待っていたとばかりに客はこの無茶苦茶な行動に喜ぶ。

対戦相手も入場し、リングに6人が揃い、ゴング。遂に始まった。

客はファーストコンタクト、そしてどのタイミングで選手が凶器を使うか固唾をのんで見守る、選手がロープに触れれば、爆発が起こるため、ロープに振られてもギリギリの所で耐える。

試合開始約5分、突如その時はやってきた。

ロープに振られた大仁田がファースト被爆。5月以来の衝撃と少し気を抜いていた状況で大いに驚く。

しかし驚きはしたのだが、前回一緒に行った仲間と顔を見合わせ、「でも前回より若干衝撃少なくない?」という冷静な感想とともに、もしかして前回ほどじゃないのかな?という若干の不安がよぎった。

しかしこれは杞憂だった。

電流爆破バットの登場だ。電流爆破バットに電流が流れるとアラートボタンが押され、会場に最高の緊張が走る。そして大仁田に対し、対戦相手の二人が大仁田をサンドイッチする形で、なんと2本もの電流爆破バットを振りかざした。

ご覧のようにドン!!というバカでかい音と共に2個分の強い衝撃が飛んできた。数分前まで余裕をかましていた自分はここで死んだ。

それと同時にこの時点で分かってしまった。

今日はヤバいぞ・・・。

その衝撃に客席のざわつきが止まらない中、選手6人が入り乱れ、場外乱闘の様相を呈するのだが、自分の席からはリング周りの状況が良く見えず、何が起こっているかが分からない。

ふと会場の外を見ると近隣住民が窓から会場を不安そうに見ている。当然だ。

会場に目を戻すと目の前からゾンビよろしく、何をされたかしれないが頭から大量に血を流した小林が大仁田と共に客席になだれ込んできた。

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ごらんの有様で客席は崩壊した。それとともに興奮状態の客の自治も若干崩壊し、後方の客はスタンディング状態で観戦をしだした。

リングに戻った大仁田と小林は禁断の地に足を踏み入れる。リング際のエプロンだ。エプロンの下には地雷原が広がっている。このエプロンから落ちる=大爆発である。

どちらが落ちるのか一挙手一投足に固唾をのむ観客、そして大仁田が技をしかけると小林だけがずるりと落ちてしまう。

と同時に・・・。

ドゥォグゥァーーーーンン! 

尋常じゃない爆発が起きた。

リング中央をのラインで中腰で見ていた自分に衝撃派がストレートに突き刺さる。とっさの防御態勢と共に、歓声禁止の中「うぉわぁ」と思わず声が上がる。電流爆破に声出し禁止は絶対に無理だ。

ここで自分でも想定外の出来事が起きる。あまりの爆薬の量に粉塵が舞い、会場内に大量の煙が充満してしまったのだ。

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会場は西側、南側の二方向は壁が無く、外部に開放されているにも関わず、エアーフローのせいなのか、会場内に煙が戻ってきてしい、ご覧のようにリングが見えないほどに煙だらけなのである。

この状況にはもう爆笑するしかなかった。

煙が晴れるまで一旦試合は中断されるのだろうか

試合はこの状態の中続いたのだ。

リングでは何が行われているか分からない、時折選手の声が聞こえるが、誰が誰に何の技をかけているのか全く分からない。

そんな中、煙の中から突如として爆発音が響く。

もう意味が分からない、これまでは爆破前のいくぞ、いくぞという動作こそあったので防御態勢がとれていたが、全く見えないところからの爆発。

誰が、何で、どのように爆発したかもわからない。5W1Hを無視したようなプロレスが繰り広げられるのだが、自分を含めた観客はこの状況に対して怒るどころか大興奮してしまう。

さらにもう一度煙の中から爆発が・・・。

無茶苦茶である。

でも長州力の言葉を借りるなら、「飛ぶ」レベルの高揚感に満たされてしまっている。それは僕だけでなく、仲間も、そして周りの観客も同じように見えた。

そして最後の爆発の後、レフェリーが3カウントを入れる音が聞こえ、煙に包まれたまま試合は終了した。

煙が晴れると勝者がリングに立っていた、となれば漫画っぽくてかっこいいが、結局誰が誰になんの技で勝ったか分からないまま、自然と煙が晴れるのを待っていた。

ようやく煙が晴れ、どうやら勝ったらしい大仁田がマイクを握る。大仁田劇場の始まりだ。

しかしここで最後のハプニングが起こる。

屋外と道路に面した会場西側から

「主催者の方いますかー」

という声が聞こえる。

!!?

パトカーが見える・・・警察だ。

どうやらあまりの煙と爆発音で流石の近隣住民も通報したらしく、消防員と警察が出動してしまった。

普通ならこの状態で一同静まり、マイクを持った大仁田もすぐに控室に帰るだろう。しかし大仁田も客も違った。

何事もなかったかのようにそのまま締めのマイクをし始めるではないか。

観客もこの事態に引くどころかこの異常性に共犯感をもったことで、逆に感情が高ぶってしまっていた。

なぜか太仁田先輩が大仁田に呼ばれ、大仁田劇場に参加していた。退場時に高ぶった客は大仁田を囲み、大仁田に口に含んだ水を0距離で吹きかけらる。すでに狂った空間に、なぜかダメ押しで、シャドウWXという選手が現れ、大仁田に対戦要求をすると、大仁田に対して口に含んだアルコールと火を使って火炎噴射を浴びせる。

大仁田とは大変な人間だ、電流を食らったかと思えば、人に水を吹きかけ、自身は火を浴びせられる。

大仁田はエレメントではないか。

こうしてFMWE旗揚げ戦は終幕した。


最近テレビ番組を見ているとお決まりのように出て来る言葉がある。

「あの頃は凄かったよね、今じゃできないよ」

昭和から平成そして令和、コロナ渦。時代が経るにつれ法規制、コンプライアンス、感染防止策とエンタメに対して様々な障壁が出来てくると、演者や客は規制の少なかった時代に対して、あの頃は・・・とノスタルジーに浸りだす。

しかし、この日は「あの頃」が現在に確かに存在していた。

プロレスという非日常の上にさらに何層もの非日常を重ねていたこのイベントは、見れるうちに見ておかないといけないイベントだと断言できる。


PS 最後の余談

メインの試合に参加していた怨霊選手。

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いつも試合では↓このようにエクトプラズムという白い粉状のものを繰り出すのだが

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今回の試合では、煙で全く何も見えていない時にこの技を出していたという話を聞いて、この日一番いい話だなと思った。

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