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鷗外のまなざし

早朝散策。無縁坂です。写真の右側は、旧岩崎邸。坂を下ると、上野、不忍池に出ます。今の時期は蓮の若葉がみずみずしい。

森鷗外の『雁』を読み返しました。

無縁坂界隈が舞台となっています(少しネタバレがあります)。この坂の途中で、お玉さんは岡田青年を誘うつもりだったのですが、この日彼はたまたま友人と一緒に歩いていて、彼女は声を掛けそびれてしまう。このすぐ後、岡田青年の投げた石が、不忍池にいた雁に当たってしまい、雁は命を落としてしまいます。そして、翌日彼はドイツへ渡航する。

雁に、お玉さんの姿をふとなぞらえてみたのでした。鷗外のお玉さんに対しての筆致は、ちょっと冷酷です。

日々の何気ない行き違いの重なりで、人の日常は思いがけないほうへとずれていくのですね。良いほうにずれる時もあるし、そうでない時もある。私自身、今、こんなふうに暮らしているわけです。きっと「偶然」の集積の果てなのでしょう。それこそが作者の意図だったのか。さまざまな解釈のできる小説ですね。

京成上野駅まで歩き、モーニングコーヒーをいただきました。

もう何冊か、鷗外作品を読み返してみよう。

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