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営み

今頃の東京の街風景というのは、どこか内省的な印象を受けます。歩いているとそのまま風景の中に吸い込まれてしまうような。とくに、夕暮れから宵にかけて、街が、その触手をゆっくり伸ばしてくるのではないか。

幻影という言葉に置き換えられるでしょう。以前、某評論家氏が面白いことを書かれていました。

「日常生活の中にふっと日が陰るように、ちょっと変なことが起こる。ちょっと不思議なことが起こる。ちょっと異次元的なことが起こる。その淡さが好きなんですね。現実と非現実の中間的ぐらいのところが好きなんですよ」

冬の、とくに澄んだ空気の街を歩いている時、評論家氏の言葉を思い出しふっと周囲を見まわしてしまいます。幻、それとも願望? …たとえば、神保町だったり、向島だったり、神楽坂だったり、築地だったり。

人と人の間に営みがあるように、街(町)と人の間にも営みが存在するのかもしれません。肉感的な部分をも含めて…。寂漠とした夕景の中に佇んでいると、営みは、こちらをじっと伺いつつ、人を陰らせていく機会を探しているようでもあります。

淡く、けれども確かな味わいでね。

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