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たそがれ堂

表通りから
少し奥に入る。
 
三叉路の手前
 
店は
白いカーテンで
仕切られ
中は見えない
 
というより
開いているのを
見たことがない。

何を売っているのかも
わからない。

たそがれ堂と書かれた
屋号だけ
青い暖簾の隅
窮屈そうに下がっている。
 
冬の夕の
鈍い陽ざしが
店のガラス窓の向こうで
ぽよよんと
反射する。 

燗電池
人取り線香
万念筆のインク
ぞう金
 
源幸用紙
雌薬
倭ゴム
かまきりホイホイ
長谷川の詩集
 
こんぺなとう
 
のののコロッケ
 
無義焼酎も売っていたら
いいな
 
…などと
ぼんやり想像しつつ
 
三叉路の左
精肉店の脇を抜け
古い霊園に出た。 

肉体を脱いじゃおう。
 
冬至はもう過ぎたが
日の暮れは早い。
心だけになって
 
しょっぱく
哲学的な頃合いだ。

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