フライヤーマン(7)

原付バイクを運転するアチョ、現場までの道のりが異常に遠いし長い。

断言しよう、コイツはチラシを配る前にミイラになって干からびる。

「太陽が暑すぎる、空の神様なんとかしろよ」

なんとかしよう、雷・槍・剣、好きなのを降らせてやるで。

「こんな時はクーラーの効いた場所で涼みたい」

ドブ川につかれば良いって聞いたぞ。

「コンビニだと長時間居座れない店員に気を使うジロジロ見られる、だからスーパーやショッピングセンターがおすすめ」

早速強盗か?ミニパトカーを呼ばねば。

「それはまだ早い」

ジラすなよぉぉお。

「生駒山上の方が少しは気温が低い、バイクで登ってみるのも可だ」

どうせなら北海道の函館山を目指せ、徒歩で13日17時間1673キロメートルの行程だ、美しい夜景が見れるぞ。

「喫茶店があるな、アイスコーヒーが飲みたい」

ホットコーヒーが飲みたいのか。

「氷のたっぷり入ったコーヒーが飲みたい!」

お前にはホットコーヒーしか選択肢がない、国会で決まった。

「ついでにフルーツサンド」

中にはフルーツの王様ドリアンが挟んである。

「卵サンドも良いね」

喰おうとしたらヒヨ子が生まれた、カワイイね。

「バタートーストの香ばしさがたまらない」

それはトーストじゃないハンペンだ。

「コーヒーゼリーの上にホイップクリーム」

シリコンの上から整髪料のムース。

「フルーツ餡蜜」

やっぱりフルーツの王様ドリアン投入。

「・・・・・・」

点点点点点点

「ドリアンは匂いがキツい、餡蜜が台無しだ」

フルーティーな香りがする。

「だったらお前が食え」

嫌だね。

「自分が嫌な物を人にすすめるな」

貴様にはなんでもすすめて良いって言ってた。

「誰が?」

誰か。

「誰かってなんだ、せめて固有名詞をだせ」

個人情報保護の観点からあなたの訴えを棄却する。

「俺の個人情報はダダ漏れだ」

ネットにさらしといた、感謝しろ。

「感謝の代わりにゲンコツをくれてやる」

お巡りさぁぁあん!

ここに暴徒が、助けて。

「このパターンは・・」

ウィぃぃいん!

サイレン鳴らしてミニパト参上、中から体育会系巡査降臨!

「おのれまた来やがった、今度こそ俺の必殺ダイナマイトを爆裂させてやる」

お前のダイナマイトを見せてやれ。

アチョはバイクを下りて構えた。

巡査はヒゲ面で笑みを浮かべながらスローペースで歩み寄る。指先で潤いクリームを唇に装着。準備OKだ。

「それ以上近づくな、魔よけの結界に接触するぞ、ビリリとくるやつ」

相手は天使で魔よけの結界は効果を示さなかった、残念。

巡査は結界を鼻息で吹き飛ばしてさらに接近。

バックステップを踏んでアチョは逃走態勢。

スキップで巡査は追走。

「都市伝説の口裂け女が現れた」

スケットか?

違うお前は前後をふさがれた。

「俺は右折して脱出、巡査と口裂け女がぶつかり合う」

口裂け女は巡査の職務質問でおとなしくなり、別のパトカーで連行される。

巡査は舌をなめて愛(いと)しの人を視界に捕らえた。

「シルバーカーの快足老婆が乱入!」

快足老婆は猛スピードで過ぎ去った。

両手を天に広げてあふれる愛を表現する巡査、もうどうにも止まらない。

「鞭を地面に打ちつける少年登場!!」

尻をブたれた巡査が大興奮!少年にお礼を言ってエネルギー爆発、アチョを仕留めにかかる。

「フェラーリのグラサン男が突っ込んできた!」

張り手1発で吹っ飛ばす!

強いぞ巡査!

「張り手1発って無敵かコラ!」

愛の前にはすべてが無力、この思いを受け止めるのはあんたしかいない。

「いやだぉぉおぉぉお!」

鬼の形相で走るアチョ。

スプリンターモードの巡査、歓喜の笑いが響き渡る。

逃げるアチョ。

追いかける巡査。

アチョ死相が浮かぶ。

巡査想いがほとばしる。

アチョ息苦しい。

巡査どうにかなりそう。

アチョペースダウン。

巡査もうすぐゴール。

アチョ・・・

あえなく停止。

背後を見るとそこには・・・

ぬめりを帯びたクチビルが2つ・・・

・・・・

・・・・・・

・・・・・・・・

ぶちゅゥゥゥゥウウウウ!!!

アチョ・・

吸われる。


太陽に熱っせられた道路上で目が覚めたアチョ、おっさんの額には汗、クチビルには潤いクリームがこべり着く。

「何があった」

何もなかった、良い天気だろ。

「俺はなんでこんな所に寝ているんだ」

仮眠をとっていたんだ、眠気は運転に支障をきたすからな。

「何かに追いかけられていたような・・」

クロサイ、なんとか逃げ切った。

「クロサイ?・・もっと恐ろしい何かだ」

お前は心が病んでいる、カウンセラーに見てもらえ。

「俺は正常」

だったらキリンに追いかけられた事にする。

「キリンは首が長い」

足も長い。

「いや、そうじゃなくて」

お前はパンダに追いかけられていた、見た人がいる。

「今度はパンダかよ、見た人って中国人か」

そうだイタリアで生まれた。

「中国人って言ったよな」

何度も言うなフランス人だろ。

「暴れていいか?」

警察官の旦那!

ヘルプでやんす!

「やめてくり!!」

なにくれる?

「さっき捨てたキャンディーボックス」

プリーズ!プリーズヘルプミー!!ポリスメン!!

「あいわかった!すごい物をやる」

トランプタワ◯か?

「丸を付ける部分がおかしいぞ、それだとバレバレ」

巡査!

ここに変態が!

「待て待て待て!ちょっと待て」

なんだよぉお、もう巡査呼んじゃおうよ、な!

「な!じゃない、話しを急ぐな、交渉には慎重さが必要だぞ」

商社マンだな。

「そうだ上場企業のな」

レアアースを1000キロ300円で横流ししろ。

「不平等取引ってやつだ、そんな条件は飲めん」

巡査部長!

出番でやんす。

「えっ?部長に格上げ、いつから」

さっき、都市伝説級の口裂け女を逮捕したから。

ついでにフェラーリのグラサン男も退治した。

「あの妖怪口裂け女とイカついグラサン男をか、なかなかやるな体育会系」

最後は死の接吻(せっぷん)で生きる希望を取り戻す。

「死の接吻?なんのことだ」

巡査の奥義、相手の生気を吸いとる恐ろしい技。

「恐ろし気な技名だな、食らった奴らは不幸だ」

大丈夫、もともと不幸だったから。

「不幸な奴をどん底に落とす死の接吻、考えただけで身震いが止まらない」

フフフ。

「なに笑ってやがる、気分悪いな」

心配するな、そいつは覚えていない。

「死の接吻をうけてか?間抜けな奴、そんな野郎は同じ過ちを繰り返す」

だな。


つづく…

「ところで俺はなんで道路で寝てたんだ」

質問内容が元に戻ったな。

大地の息吹を感じてた。

「道路舗装された地面だぞ、土なら理解できるが」

下水の音を聞いてる内に寝た。

「死にそうな暑さで下水の音聞きながら寝る俺じゃない」

ほんじゃあ上水道の水漏れ調査。

「だったら調査しろ、寝るな」

地底人の会話を聞いてた。

「盗み聞きは良くない」

地球の裏側で歩く音。

「どんだけ耳がいいんだ」

ハチノスツヅリガ並み。

「ハチノス・・なんだそれ」

蛾(が)。

人間の15倍の聴覚。

「わかった、この話しはこれぐらいでいいな」

ちなみに蝙蝠(こうもり)は人間の6倍。

「どっちにしても地球の裏までは聞こえない」

設定で決まってる。

「どこのどなたが勝手に設定した?」

ハムスター。

「だね」













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