フライヤーマン(8)

「中古車販売店に車がいっぱい並んでる」

相棒のバイクと◯産高級スポーツカー『GT◯R』を交換してもらえ。

「ここ数年で燃費性能が各段に上がった」

そうだ時代は進んでる、お前もそろそろ現場に進んだらどうだ?

「温暖化対策が皮肉にも車を進化させた」

貴様は進化形態であるミジンコをめざせ。

「いつの世も技術革新は止まらない」

止まったままの奴もいるがな。

「車が欲しい」

どの車種が欲しい、風車に水車に大八車、俺のいち押しは乳母車。

「ファミリーカーならエステ⚪︎マの新車が買いだ」

新車は生産終了だが、独身でミニカーも買えないお前がエスティ⚪︎マの新品?

牛でも運ぶつもりか。

「スポーツカーならカウンタ⚪︎ク」

頭金の45円を忘れるなよ。

「ポルシ⚪︎ェもまあまあ」

値段交渉はナメられないように、作業ズボンのニッカポッカでバシッと決めろ。

「フ⚪︎ラーリはグラサン男が乗ってたから印象が悪い」

フェラ◯リ社も大事なお得意様を失くした。

「日本の高級車ならシ◯マ」

ご主人、運転手がご入用でしたらぜひとも俺っちを。

「やっぱり◯ラウン」

警察車両ならやっぱりクラ◯ンだよな。

「メルセデ◯ベンツ」

惜しい、日本じゃなくてドイツの高級車だった。

「ホ◯ダのNS◯X!」

日本一高いホン◯の◯NSXは税込2370万円、頭金を収めて残金23699955円でげす。

「VIPだとオマケがつくだろ」

当たり前でげす、食べさしのカップ焼きそばをプレゼント。

「色々夢がふくらむね」

栄光の借金ドリーマーでさあ。

「俺も車会社を立ち上げよう」

手始めに自転車タイヤを車両に取り付け、ハイブリッド車として売り出しましょう。

「規定違反で運輸局に通報される」

ビビってるんすか?

「ビビってねーし」

うんじゃあヘッドライトに懐中電灯を装備。

「国土交通省から厳重注意を受ける」

お上がそんなに怖いんっすか。

「怖くねーし、ぜんぜん怖くねー、やってやんよ」

テールランプはネズミの尻尾(しっぽ)。

「巻いてる方な」

シートベルトは利尻の昆布。

「警察も動く」

ミニパトっすか?

「そのくだりはもうお腹いっぱいだ」

巡査呼んじゃう?

「猥褻(わいせつ)野郎はもう勘弁」

強制猥褻っすか!?

けしからん!

市民の味方体育会系巡査にご登場願いましょう。

「だからそいつが猥褻の張本人」

なぬ!

猥褻!?

大阪の安全は俺たちが守る!

ヒゲ面警察官にSOS。

「聞いてるかおう」

聞いてるっす!

街の秩序は我らが使命!

愛の天使ムヒョムヒョ巡査部長が来るきっと来る!

「どこかで聞いたフレーズ、テレビから這い出して来る黒髪の女」

睨み返せ。

「睨んじゃダメなやつだ」

ビビリが。

「また言ったな、ビビりじゃねーし」

黒髪の女は洗面器に投げ込まれこの世を去った、恨みを持ってるから貴様の念仏で成仏させてやれ。

「南無阿弥陀仏」

黒髪の女はもっと恨んだ。

「成仏するんじゃねえのかよ」

言い訳したから女は男を呪い殺す事を固く決意した。

「勝手に決意させるな、ここは逃げるが勝ち」

こいつビビってるよ、ハッハッハッ。

「乾いた笑い出してるなよ、ビビって逃げて何が悪い、相手はバケモンだ」

口裂け女が刑務所から脱走して男の前に現れた。

「流行のホラーバトルだな、いい具合に潰し合ってくれ」

前門の虎後門の狼。

「せめて前門のニャンコ後門のチワワにしてくれ」

前門のライオン右門のミノタウロス左門のヴェロキラプトル後門のブルドーザー後詰めに雪だるま。

「まさかの四面楚歌、控えの雪だるまはすぐ溶ける」

前門の権利をめぐって黒髪女とライオンが睨み合う。

「黒髪女と睨み合ったら負け」

ライオンは呪い殺された。

「言ったろ」

後門の立場をかけて口裂け女とブルドーザーが激しく衝突。

「土木作業用の重機を舐めるなよ」

口裂け女はあえなく吹っ飛んだ。

「当然の勝利」

世代交代が進み、前門の黒髪女・右門の宇宙戦艦・左門の怪獣・後門のブルドーザー・右斜めに関羽・左斜めに張飛・後詰めはミノタウロス・ヴェロキラプトル・溶けた雪だるま。

「ほぼ八方塞がり、雪だるまはやっぱり溶けた」

いっせいに飛びかかる。

「・・・終わった」

我が人生に一点の悔いなし。

「あるいっぱい」

その時義経ばりの八艘(はっそう)飛びでアチョを抱え込み、無敵の包囲陣から外に連れ出した何者かがいた。

「まじ?」

何者かはアチョを地面に優しく下ろして無敵軍団に視線を送る。

「だれだれ我輩を助けてくれた救世主は」

助けてくれた救世主の正体は・・・

なんと!

ヒゲ面の体育会系巡査だった!

パパパパッパパァァァアン!!

「ってファンファーレ鳴らしてんじゃねえ!捕獲されたんじゃねえのかよ!?」

愛しの人を救いに来たと言って欲しい。

巡査はラブユーな人にウィンクして、お楽しみは後でと言い残して敵軍に突進した。

「今のうちに逃げよう」

手首に手錠がかけられカーブミラーの鉄柱に繋げられた状態、逃走不能。

「いつの間に!通行人の人たち、囚われの哀れなジジイを助けておくれ!」

通行人は災害レベルの騒動を恐れてみんな避難。

「オーマイゴッド(おお神よ)」

なんじゃ?願いを言ってみよ。

「助けて」

自力でなんとかしろ。

「なんのために出てきた、この役立たずが」

後詰めのミノタウロスとヴェロキラプトルがアチョに近づいた。

「嘘ウソ嘘、献金します」

50円以上でないと受付ません。

「足元見やがって、金か金がすべてか」

金だ金がすべてだ。

「1から話し合いましょう」

ミノタウロスは大きすぎる斧を持っている。

「巡査!助けて」

巡査はただいま戦闘中。

ヴェロキラプトルの歯は鋭い。

「ミノタウロスとヴェロキラプトルが後詰めの覇権を争い対立する」

なに言ってるか知らんが、ミノタウロスはヴェロキラプトルと連携して、アチョを八つ裂きにしようと左右に分かれた。

「言えばなんとかなる自由設定じゃないのかよ!」

ミノタウロスはデカすぎる斧を天に向かって掲げる、ヴェロキラプトルはヨダレを垂らしていた。

「ひやややややぁあ!俺様ピィインチ!」

斧が振り下ろされた。

ヴェロキラプトルはヨダレを垂らす。

アチョは死の形相、鼻水と涙で汚い。

「ムギョギョぎょぉお!!」

ガキィィイン!

「むひょ?」

アチョが身を屈めた瞬間に斧がカーブミラーの鉄柱を斬り折った。ちょうど手錠が抜ける状態に、チャンス到来。

「地の果てまで逃げてやる!」

ミノタウロスが地鳴りのように追いかけてきた。

その尻になぜか噛みつくヴェロキラプトル。

「ミノタウロスは牛の怪物だからな、尻肉をズッと狙ってた」

なに余裕かましてやがる、どうやらお仕置きが必要なようだ。

「そうは行くか!ハングリー魂を甘く見るなよ」

巡査と敵軍のタダ中に突入するアチョ、玉砕か?

「おい黒髪女、お前を洗面器で溺れさせたのはあのミノタウロスだ!」

そんな都合の良い設定が・・・!?

黒髪女は四つん這いになってから、力いっぱい地面を蹴ってミノタウロスに飛びかかる。

おいおい良いのかよそれで。

ミノタウロスは尻に噛みつくヴェロキラプトルの首をつかんで、黒髪女目掛けて投げつけた。黒髪女はラプトルの右頬を蹴って横っ飛び、口を開いた肉食恐竜の上顎と下顎が空(くう)を噛み砕く。

「バトル漫画だ」

ラプトルが勢いのまま地面を急停止、反転して黒髪女に太古の眼光を突き刺した。女はゆらゆらと赤いワンピースをひらめかせ、横向きでラプトル・ミノタウロスの間に立つ。

最初に動いたのはヴェロキラプトル、鉤爪のような両足で舗装された道路をヒビ入れながら突進、舞い上がった黒髪女がラプトルの顔面に飛び乗り、両眼を見開いて呪詛の念動力を発揮。

太古のハンターの瞳が徐々に上向き、白目とともに痙攣しながら倒れ込んだ。

「さすがは黒髪女、ホラー界の女帝」

ギリシャ神話の怪物は別に動揺する事もなく、見事な体躯を前屈みにして戦闘斧を両手で握りしめる。長い闇色の黒髪が女の表情を隠し、ますます妖怪じみてきた。

しばらく息絶えたラプトルを見下ろしていた黒髪女が、顔だけミノタウロスに振り向ける。ミノタウロスは地面をゆっくり踏みつぶし、少しづつペースを上げて前進、次の一瞬でトップスピードに乗って女に襲いかかった。

「お笑い小説じゃなかったのかこれ?どうなることやら・・」


つづく…

「不用意に展開いじくると読者ばなれが加速する」

心配ない、すでに最低閲覧数を爆進中。

「貴様の不真面目さにはほとほと愛想が尽きた」

宇宙戦艦が上空から波動砲を野郎に向けている。

「いよ!未来のノーベル賞作家!」

嫌味だな、エネルギー充填1000%。

「手頃なところで書籍化決定!初版部数は100部でどうだ」

100部まるまる返本決定。

やってくれたな貴様。

「善意だよ善意、悪く取っちゃダメ」

もう許さん、波動砲充填完了。

「撃てるものなら撃ってみろ、しかしもし貴様に良心が・・」

発射!!

「今度こそ終わった何もかも・・」

あれ?

「むぬ、なんかアクシデントでも?」

エネルギーの塊りがアチョの頭上に降りそそぐ。

「あれ?ってなんだったんだ」

お前の下に光るものが。

「本当だこれはひょっとして、究極のお助けアイテム?」

今回だけだぞ。

「神よ仏よ感謝します」

拾い上げると。

それは。

なんと。

なんとなんと!

「うォォォオ!やったぁあ」

踏み潰された銀杏(ぎんなん)だった。

「せめて光り物」

砲口から撃ち放たれた波動エネルギーが徐々に接近してくる。

「遠くから撃ったんだな」

冥王星から放たれた熱の大流がもうすぐアチョを捉えに・・

「アチョはアクビをして待つ事にした」

現在海王星を通過中、到達まで残り3000時間。


本当につづく・・












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