フライヤーマン(4)

「ところで俺は現場にいつになったら到着するんだ」

地球の寿命が尽きる日までにはなんとかなる。

「このままだと永遠に着かないような着くような」

着かなかったらどうなるか、考えもんだな。

「信号がまた赤だ、きっと俺の進路を妨害している」

うむ、秘密組織の陰を感じるぞ、お前は狙われているようだ。

「青になった、慎重に進もう」

動くな、衛星兵器が貴様にレーダー照射、俺が推測するに豚肉を生で食うほどヤバイ。

「むむむ、シルバーカーを押すあの老婆が怪しい」

どの老婆だ、超高齢化社会だから一杯いる。

「あそこの幼稚園児も要警戒だ」

園児の格好をしたお前と同じぐらいのおっさんだから、距離を置いて要チェックだ。

「チラシ禁止の集合ポストに投函する中年女性には注意が必要です」

同業者には優しくしろ。

「同業者の男があっちにも、こそこそピンクチラシを配っている」

子供達が見たらどうする、全部没収だね。

「怪しいシルバーカーの老女が1人」

さっきと同じご婦人だ、コピー商品じゃねえんだぞ、見間違えるな。

「ほとんど前に進んでない」

旧日本軍の地雷原に侵入してしまった、足で探りながら前進するには時間がかかる。

「信号が変わるよ」

信号機を破壊しろ、パンチとキックが有効。

「うおぉお!ダッシュした」

お前もダッシュだ、負けるなよ。

「実は妖怪とか」

あり得る、100メートル9秒台は異常。

「怖くなってきた、家に帰ろうかな」

老婆が見てる。

「なんかこっち見てる」

最初はゆっくり、徐々にスピードに乗り、最後は四つん這いでジャッカルのように。

「ぎょええええ!来るな来るな!」

カモーン!オールドウーマン!


アチョは妖怪から逃げ切った。

「すごい老婆だった、絶対人間じゃない」

差別は人類の敵、たとえ魂を吸われても敬老精神を失うな。

「ほとほと妖怪には縁があるようだ」

次は鉄砲で撃っても死なない殺人鬼とご縁がありますように。

「昔は口裂き女と遭遇したこともある」

そいつからは逃げられないと聞く、捕まってどうなった詳しく教えろ。

「あの女は見事なタラコ唇だった」

上唇がタラコで下唇が明太子。

「私し綺麗って聞いてくる」

美に対する感性は人それぞれって断固反抗するべき。

「綺麗ですって言ったらカミソリで口を裂かれる」

得意のカンフーとテコンドーで返り討ち。

「逃げようとしてもめちゃくちゃ足が速い」

100メートル9秒台の快速老婆から逃げ切ったお前ならぶっちぎれる。安心してカミソリに素手で対抗するべし。

「バイクで撤退するのが懸命」

機械に頼るな、依存心が高くなって困るぞ、素手だ素手。

「相手は化け物だぞ、素手はない」

また差別だよ、無限の愛で彼女を抱きしめろ。

「だから人間じゃないって」

種族を超えろ性別を超えろ、お前の使命は天から与えられしもの。

「殺される!」

誤解だ、カミソリはムダ毛処理のために携帯している、乙女のエチケット。

「死ぬ!」

鋼鉄の拳で跳ね返せ!

「うげ」

だから言っただろ、カミソリは危険だって。南無阿弥陀仏。


「なんだか悪い夢を見ていた」

夢じゃない現実だ、お前はすでに色々された。

「リサイクルショップだ」

ジェットコースター並みのストーリーチェンジ。

「店頭にガラクタが置いてある」

ガラクタに見えるが立派な商品だ。

「タンスに洗濯機に地球儀、使いさしの絵の具まで陳列されてら」

あれはゴッホが使用した絵の具だぞ、300円で購入しろ。

「等身大のシェパードの置物、チラシ配るときにビビるんだよあれは」

防犯対策でドーベルマンのもある。

「西洋甲冑なんかも置いてる家があった」

夜中に歩く。

「何回見てもびっくりする」

夜中に歩くからな。

「玄関先にあのデカさはないだろ普通」

持ち主は普通じゃない、鉄クズコレクターだ。

「俺の背丈よりデカい」

なら3ミリ。

「近所の人も迷惑してる」

夜中に徘徊する鎧は泥棒よけになるけどな。

「せめて家の中に置け」

却下だ、家が狭くなる。

「きっと旦那の趣味で家族に煙たがられているはず」

幼女の趣味だったら責任取れるのか?勝手な妄想はやめろ。

「1度デコピン食らわせてやった」

器物破損で現行犯逮捕、懲役1300年。

「さすがは鋼鉄、爪が割れるほど痛かった」

痛くないフーフーしてれば治る。

「子供達も恐れるプレートアーマー」

小汚いお前の方が恐れられてる、誘拐犯ぽいっから。

「俺は誘拐犯じゃない」

お前は誘拐犯だ、顔を見ればわかる。

「人の本性は外見では計れない」

貴様は誘拐犯だ。

「おおお神よ迫害と誤解の中で私は生きている!」

誘拐犯め、パトカー呼んでやる。

「いい加減にしろよこの愚か者!」

通報しといた、3分で高級車のク◯ウンが急行。

「税金でク◯ウン乗ってんじゃねえ!」

だったらミニパト。

「軽なら許す、ところで婦人警官かな」

ゴリゴリの体育会系巡査。

「やっぱり許さん!警察官は全員ママチャリで公務に励め!」

おっミニパト到着、中から婦人警官らしき声。

「ご指名ありかね、ナンバーワンがいい」

去勢した元男性巡査だった、しかもヒゲ面(づら)の。

「去勢したならヒゲは剃れ、ニューハーフをナメるなよ」

たっぷりサービスしてもらえ。

「ヒゲ面は嫌」


つづく…

「マッポの旦那、尻は触らないで」

お前の尻を触ってるのか?

よほど飢えているんだな。

たっぷりサービスしてやれ。

「ノーォォォオ!!」


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