母と娘の箱根旅行


母と箱根旅行に来るのは、もう4回目になる。
始まりは3年前、経緯は忘れたが温泉に行こうという話になり、行ってみた旅館が大当たりで、そこから半年〜1年置きに行くようになった。
今回はコロナ云々で1年半ぶりで少し間が空いてしまったが、母と電話で話すたびに「早く箱根に行きたいね」なんて言い合ったりしていた。
1年半前に行った時は、ガイドブックのモデルプラン通りに周った。ロープウェイに乗って大涌谷へ行き黒卵を食べ、海賊船に乗って芦ノ湖を渡ったりと箱根の観光スポットを大満喫し、母も私も楽しんで終えた記憶がある。

それがどうしたものか、今回の旅行は終始ギスギスしていた。

最初から良くなかった。
母と新宿で待ち合わせしていたが、南口改札前にいるというLINEが来てすぐ改札前に行くも、母おらず。電話すると「JRから小田急乗り換えのところにいるんだけど、ここから入っていいのかな?」いや、一回改札出て一緒にロマンスカーの指定席の特急券買うって言ったよね?ていうか改札前にいるって言ってましたよね?いいから改札から出て!南口の改札前にいるんだからと伝えても「でも小田急だよね?違ったっけ?ここにロマンスカーって書いてあって」
「余計なことしないで改札から出てきて!?」
すでにイライラゲージが溜まる私、穏やかにいきたい気持ちはある。

なんとか合流し、小田急改札内へ。
朝ごはんは改札内のセブンイレブンでおにぎりでも買って軽く食べ、着いたら前々から気になっていた行列ができてる蕎麦屋さんへ行く予定だった。
しかし、前回も利用した改札内のセブンイレブンが昨日付けで閉店していた。そして箱根に着いて蕎麦屋さん行くも臨時休業の張り紙。

よくない、よくないぞ。

その後もちょっとした母の言動や、ころころ変わる母の意見にイライラしてしまい明らかに不機嫌になる私。そんな私に対して不機嫌になる母。
母も私も怒ることに慣れていないので、言い争いにはならない。お互い憎まれ口を一言呟いて、無言の時間が続く。それをひたすらに繰り返すのだ。

美味しいものを食べたり、温泉に入ったり、癒される空間にいる時はいいのだけれど、それ以外の時間はどうにもこうにもならず。

あんなに楽しみにしていた1泊2日の箱根旅行は、そんなこんなでギスギスしている時間が長かった。


なんでこんなに母に対しイライラしてしまうのだろうと考えると、思い当たるフシは大いにある。それは母の性格や私の性格、最近の私のメンタル具合や、元々の関係性など言い出したらキリがない。
原因がわかっているからといって今、全てを寛容して母の全ての言動を許し、包容力も広い心を持って母に接するほど出来た娘ではないのだ。

なんだかんだあり箱根旅行を終え、東京へ戻り、母が観たいと言っていた映画を観た。


「銀河鉄道の父」
この期に及んで家族愛の物語と謳っている映画を見るっていうのは何とも滑稽なことか。嫌味にすら思える。

宮沢賢治がどのように家族に愛され物語を作るに至ったのか。細かいことは言わないが、実家が太い長男が跡取りから逃れあれやこれやに手を出して、最終的に家族の応援や後押しのおかげで詩や小説を書く。っていう、ハァ、実家にお金があって、好きなことやらせてもらえて、その上応援してもらえて良いですなあ。という捻くれ者の感想は当てにしてはならない。
ただ、菅田将暉の圧倒的な演技力に素晴らしい映画だと錯覚するやもしれんくらい菅田将暉が素晴らしかった。

周りの人で泣いている人もいたし感動モノといえば感動モノなのだろう。母は感動したのかどう思ったか知らないが、観終わったあと「妹役の子(森七菜)が佳子様に似ている」という感想と「予告で見たやつ(波紋)が面白そう」という本編そっちのけのことを言っていたのでたいして響かなかったのかもしれない。


その後、上野駅で改札に入る母を見送った。
改札に入って母は2回振り返り、2回片手をあげて新幹線の改札方面へ向かっていった。


あと何回箱根に行けるだろうか。

おそらくまた1年以内には一緒に箱根へ行くのだろう。その時は心穏やかにいきたい。
母娘が仲良くできる効能が、温泉にあると信じて。

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