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【思索】仕事とエネルギー

ふと思い立った。まず仕事(work)、つまり物体の移動距離と物体にかかる力について、どちらかに対し同じ方向の成分を取り出して掛けたその値はエネルギーを測ったり、その存在を予測するのに役立つ。早い話、ベクトルで Fx とか、Fx cosθ とでも書けば良い。

その物体が加速していれば、加速度に比例した力が働いている。これがニュートンの運動方程式が主張することの一部であり、先の話と合わせれば、物体の加速によりエネルギーは増すと言える。作用と反作用も考えあわせれば、なるほど、等速の運動でも仕事が生じるみたいだな。

しかしこの話、どうにも分かりづらいのではないか。我々はまず日常の経験を当てはめて考えてみるわけだが、そもそも生きてるだけで体温も発するし、明らかにいつでも何処でもエネルギーの消費を感じるのである。こうした生理学的なエネルギーを一度頭から追いやっても、つまり理想的な剛体の仕事とか運動エネルギーを考えてみても、まあ分かりづらい!

たんに数学の上でなら、運動エネルギーを時間で微分してみれば仕事率というものが顔を出す。こいつは F・v と書こうか。両者を時間で積分してみれば、つまり時間変化を測って連続で和をとってやれば話はわかる。ふむ、確かに仕事とエネルギーが等価であることが示唆されるようだ。

物理の話に進もう。簡単な例では、例えば剛体球と、これに対し全く摩擦のない斜面があるとする。ここでは重力が働いていて、仕事というものを知るには、重力とこの方向に対する移動距離だけ測ってやれば良い。こうした斜面とか、全くエネルギーロスのない振り子などによる運動の束縛があっても、計算のやり方に変わりはない。このような力を一般に保存力などと呼ぶのだ。

しかし我々の脳は、もう少し深い場所に立ち入りたくなる。エネルギーというものを考えるなら、やはりもっと現実に近い状況を考えたくなるのだ。熱エネルギー?それはちょっと複雑だから、いまはやめておこう!まずは、我々人間が例えば、エネルギーロスのない剛体で出来たオートマトンだとでも考えて、重いスーツケースを持ち上げる場面でも考えてみようじゃないか。

荷物の上げ下げ。これは問題にならない。問題は、持ち上がらないが力を加えていたり、持ち上げたまま静止している場合だろう。人間であれば、骨格筋等々の影響で腕が震える。仮に、理想的なオートマトンでもこうした震えが生じるのなら、仕事というものは考えられるだろうか。もちろん!振動子のようなものを考えてみれば、むろん加速度が生じ、仕事と運動エネルギーを生ずる。その位置エネルギーは変位の二乗に比例すると理解すればよい。比例定数や振動数を知ることもまた重要だな。そしてこの震えの源は、オートマトンの構造上の問題であろう。なんらかの力が内側で働いていて、ともかくこういう事が起こる。

しかしこのとき、この人形は本当にエネルギーのロスがないのか?このような震えが起きるとき、そんな都合のいい機構は存在できるのだろうか。まあ、この問題はこれくらいにしておこう。めまいがしそうだから、早く次の問題に移りたい!

生き物が重量のある物体を動かすなら、仕事を生ずる。いや、ロボットでもいい。なんでもいいのだが、ともかく力と移動距離の積があれば仕事は計算できる。だが現実では、色々のエネルギーを考慮する必要がある。ひとくちに仕事といっても、古典力学の適用範囲すべてにおいて考えなくてはならない上に、それ以外にも光や熱伝導、ある領域における粒子間相互作用である内部エネルギーなども、どこかでエネルギーの式に入れるべきかもしれない!

おや?そういえば我々の感じる力とは、なんらか電気的な力だったり、他にもミクロな領域で予測されうる諸々の力をマクロなスケールで観測したものだ。そうなると、マクロとミクロでスケールにおける住み分けをはっきりさせてから、色々のエネルギーを考えればいいのだ!何を知りたいかによって、適切な概念を選び取ればいいというわけだ。

そういうことなら、仕事という抽象的なものも割になじみやすくなりそうである。我々は熱とか光とか、震えとかなんでも考えてしまうのだけれど、見たいスケールで、理想化されたモデルで、いらない概念は一端わきに追いやって、F・x なるベクトルの内積を考えてみればいい。3次元のそれぞれの方向でいくらか力が生じていて、とにかくニュートンの法則が使える範囲では、仕事およびエネルギーを計算してみることができる。それが現実と一致するかどうかは、状況次第であろう。

さて、いくらかすっきりした気がする。念のため補足しておくと、純粋な数学は概念の世界であって、物理学ではこの概念と現象をいかにうまく繋げるかが重要である。甚だしいときには、数学など頭から消し去って、限りなく深く現実を観察することがモノを言う場合もあるだろう。

加えて、スケールに対する理解も肝要だ。ニュートンの法則は、こと天体においては非常によく当てはまることが多いし、人間くらいの大きさでもそんなに外れることはない。しかし微小な世界、特に原子程度の大きさをみる場合、まあ当てはまらない。逆にその世界でのエネルギーなどを計算して目視できるスケールまで足し合わせてみても、なかなか現実に即した結果にはならない。うまい結果を得るような理論を組むには大変な苦労があるのだ。

物体のスピードが光速に近づけば質量が増すなんて話もある!それが相対性理論の示したことだ。厳密なことはともかく(というかうまく説明できない)、こうした補正が必要な場合も多い。

この手のお話では、寺田寅彦の文章などを読むと存外に面白い!青空文庫やKindleでタダ読みし放題だ。まとめてくださってる方々に感謝。

ただ書きたいことを書きなぐって終わってしまったが、今日はこのあたりでやめておこう。

noteで数式を書くのは恐ろしく面倒なので、今後、物理のトピックではこうした日本語がほとんどの文章になると思う。また気が向いたら何かしら書こうかな。

それではまた。

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