『レイン‐RAIN‐』Episode1 報酬の無い依頼
『レイン ―RAIN―』
Episode1『報酬の無い依頼』
レイン(21)…傭兵を生業とする『ミロク』のリーダー
紀子(13)…月から人間を進化させるため、沖縄に降ってきた少女
シーク(33)…イギリス政府に雇われている科学者
リサ(23)…『ミロク』の狙撃手
ルビー(18)…『ミロク』のハッカー
サニー…『ミロク』の突撃部隊
ストーム(22)…『ミロク』の突撃部隊
シールド(23)…『ミロク』の突撃部隊
アンドロイド兵…完全機械で構成された人型AI兵士
〇イギリス・研究所・地下廊下(夜)
薄暗い研究所の廊下を走るシーク(33)と紀子(13)。
テロップ『イギリス』
紀子の左腕からは血が流れている。しかし、傷があっという間に塞がる。手に付いた時計型のデバイスを見るシーク。画面の文字はホログラム状に浮き出ている。走り続ける二人の前に廊下の突き当りが見える。壁の前に立つ二人。シークがコートの内ポケットから筒状の時空転移装置を取り出し、操作すると壁に貼り付ける。すると、壁に付いた装置が変形し、円形に広がる。
シーク「危ないから、少し下がって」
そういうと少し装置から離れる二人。そして円の中が歪み始める。
『ヴゥェェェン!』
後方から音が聴こえ、振り向く二人。二人の目の前に黒いキューブ型の時空の歪みが現れ、そこからアサルトライフルを構えたアンドロイド兵たちが出てくる。
兵長「無駄な抵抗は止め、報復しろ!」
シーク「チッ!もう見つかったか・・・」
壁の歪みを確認するシーク。しかし、ワープゲートが構築されていない。手を挙げるシークと紀子。その姿を確認すると、無線で司令官に交信する兵長。
兵長「二人をどうしますか?」
司令官「あの娘はちょっとやそっとじゃ死なない。変な動きをしたら構わず撃て」
『ゴゴゴゴゴゴォ!』
ワープゲートが構築され、音を立てながら渦を巻いている。紀子を抱えて振り向き、ゲートに飛び込むシーク。
兵長「撃て!」
一斉に発砲する兵たち。弾丸はシークの背中に被弾する。ゲートを潜った瞬間に腕の端末の画面を押すシーク。すると時空転移装置が爆発し、ゲートが閉じる。その際に起きた爆発で兵たちが吹き飛ばされる。爆風が収まると立ち上がる兵たち。
兵長「逃げられました・・・被検体の腕に埋め込んでいた発信機も取り除かれていたため、場所も特定出来ません」
司令官「今すぐ歪みのデータを解析しろ!早く場所を突き止め、何としてもあの娘を捕らえるんだ!」
〇フォルスビル・13番地・33号(夜)
ビルの壁に円形のワープゲートが出現し、そこからシークと紀子が飛び出す。ゲートは二人が出てきた瞬間に消滅する。倒れこむ二人。体を起こし、シークの方を見る紀子。しかし、シークは既に亡くなっている。目を見開きながら涙を流す紀子。
〇アメリカ・繁華街・廃墟ビル(夜)
古い廃墟ビルの階段をかけ上がるレイン(21)。屋上に着くと、手に持っていたアタッシュケースを開き、スナイパーライフルを取り出す。そしてサイレンサーを取り付ける。繁華街の巨大モニターにはCMが流れている。
CM「6Gにより、更に快適な脳内ネットサーフィンへ」
かなり離れた裏路地に向けてスコープを覗くレイン。そこには一人の男が立っている。
『ワン・ファン(38)罪状 人身密売・殺人・兵器所持』
スコープには、写る者の名前と罪状が表示されている。そこに白いスーツを着た男が現れる。男の頭にレティクルを合わせるレイン。
『トニー・ローダー(39)罪状 麻薬密売・殺人・銃火器密売』
トニーの近くには、四人の黒いスーツを着たボディーガードが囲んでいる。深呼吸すると、トニーの頭を打ちぬくレイン。頭はスイカのように赤い血しぶきを出しながらはじけ飛ぶ。その光景に驚く間もなく、全員の頭を打ち抜く。任務が終わるとスコープに報酬が表示される。
『MISSON COMPLETE 33000$』
腕に付けたデバイスで次の依頼を確認するレイン。依頼はホログラム状に表示されている。
依頼『娘を助けてほしい。報酬18000$ 11時にフォルスビル 13番地 33号で落ち合おう。 シーク・ホープ』
〇同ビルの下・路地(夜)
腕に付けたデバイスを操作するレイン。すると、モーター音が聴こえる。音の方を向くレイン。視線の先には黒い車があり、高速で近づいてくる。車にはタイヤが付いておらず、地面から30センチほど浮いている。レインの目の前で停止する車。ドアが自動で開き、乗り込むとデバイスに表示された座標に向かって出発する。
〇フォルスビル・13番地・33号(夜)
目的地に到着すると車から降りるレイン。辺りを見回すと、血まみれで倒れているシークとシークにしがみ付きながら泣いている紀子がいる。二人に近寄るレイン。すると、既にシークには息が無い事に気が付く。二人をじっと見つめるレイン。
〇レインのフラッシュバック(夜)
幼いレインの前に、ガスマスクを被った二人の兵士がいる。その両隣には、レインの両親の死体がある。涙が頬を伝うレイン。そして、兵の一人がレインに向けてハンドガンを構え、発砲する。
〇同ビル(夜)
『ヴゥェェン!』
シークの骸の隣から、キューブ型の時空の歪みが出てくる。それを見て、急いで紀子の手を引くレイン。
紀子「パパは!」
その言葉に一瞬だけシークを見るレイン。しかし、再び紀子の手を引き、急いで助手席に乗せて車を走らせる。
〇道路(夜)
車は大きな道路に入り、更にスピードを上げるレイン。すると、先程見たキューブ型の歪みが前方に発生する。車を急ブレーキで止めるレイン。歪みは段々大きくなり、アンドロイド兵が次々に出てくる。五体の兵が横並びに整列し、車に向かってアサルトライフルを構える。エンジンを吹かせるレイン。
兵長「撃て!」
車に向かって一斉に発砲する兵たち。アクセルを踏むレイン。車は被弾するが傷一つ付かず、兵たちを轢き飛ばす。しかし、兵たちは何も無かったように起き上がる。車内のフロントガラスは画面のようになっていて、後方の敵をロックオンと表示されている。シフトレバー頭部についている赤いボタンを押すレイン。すると、車後方のリアバンパーが開き、そこからグレネード弾が発射される。弾は全兵に当たり、激しく爆発する。爆風が収まると、そこには傷一つ付いていない兵たちの姿が見える。その光景に目を見開くレイン。兵たちは走って車を追いかけてくる。車のメーターには180km/hと表示されている。車に追いつく兵たち。そして、車に向かって体当たりをする。その衝撃で、先程撃たれても傷一つ付かなかった車が大きく凹み、吹っ飛ばされる。なんとかレインのハンドル捌きで立て直す車。すると紀子の髪の毛が逆立ち始め、蒼く発光する。その間も、躊躇なく体当たりをしてくる兵たち。車内には警告音が鳴り響く。ハンドルの近くにあるデバイスを操作するレイン。するとバンパー部分が開き、丸鋸が出てくる。ハンドルを切り、丸鋸を兵に当てるレイン。しかし、丸鋸は兵によって簡単に叩き折られる。
紀子「ゔぁぁぁぁぉぁあ!」
悲鳴にも似た甲高い声を出す紀子。その瞬間、車が蒼い光に包まれ、辺りの兵は全て吹き飛される。更に、兵たちの体は細かいキューブ型に細かく分解されていく。光が収まり、そのまま意識を失う紀子。紀子を凝視するレイン。車内の警告音を消し、車を走らせる。そして、安堵のため息をつく。
『バンッッ!』
車の前方から音がして、覗くレイン。すると、下半身と側頭部が分解された状態の兵長がしがみついている。ボンネットをよじ登り、右腕を振り上げる兵長。咄嗟に右へハンドルを切る。兵長はバランスを崩しながらも腕を振り下ろし、フロントガラスを突き破ってレインの左腹部を刺す。あまりの痛みに悶絶するレイン。痛みに耐えながら、腰のフォルスターからナイフを抜き、兵長の側頭部に向けて突き刺す。それにより、機能を完全に停止される兵長。刺さった腕を引き抜き、インストルメントパネルにある画面を操作するレイン。
車のナビ「運転を自動運転に切り替えます」
道路に兵長を投げ落とすレイン。手には血がべっとり付いている。震える手でダッシュボードを開け、スプレー缶を取り出す。スプレー缶には止血剤と書かれている。スプレーを傷口に吹きかける。
レイン「!!!」
あまりの痛さに再び悶絶する。虚ろになっていく意識。車はしばらく走り、人通りの無い脇道に停車する。エンジンを切ると車が透明になる。力を振り絞り、シフトレバーの近くにある赤いボタンを押すレイン。すると、ボタンが点滅しだす。その後、意識を失う。
× × ×
〇同・道路(夜)
レインたちの激しい戦闘で瓦礫だらけの道路を走る巨大トラック。
〇同・脇道(夜)
巨大なトラックが脇道で停車する。すると、全身に強化装甲と全面が液晶画面になっているフェイスマスクをしたリサ(23)がトラックから降りてくる。マスクを操作すると、車の透明化が解除される。車に近づき、社内をスキャンする。
リサ「女の子は無事だけど、彼はかなり危険な状態だわ!早く回収して!」
そういうと、トラックの荷台のウィングサイドパネルが開く。ベルトコンベアが出てきて、荷台に車を乗せる。すると、早々にトラックに乗り込み、その場から出発するリサ。
〇ミロク基地・地下メインルーム(夜)
赤いソファーの上で、うなされている紀子。
紀子「パパ!」
大声を上げ、飛び起きる紀子。激しい頭痛から頭を押さえる。
リサ「大丈夫?」
紀子「ここは・・・」
リサ「私たちの基地。もう安全よ」
紀子に近づくリサ。
リサ「貴方の名前は?」
紀子「紀子・・・」
辺りを見回す紀子。
紀子「あの男の人は?」
その言葉に俯くリサ。リサをじっと見つめる紀子。すると、紀子の脳内でベッドに人工呼吸器や色々な器具に繋がれたレインのビジョンが見える。
紀子「行かなきゃ!生きているなら、まだ救える!」
そう言うと立ち上がり、走って部屋を飛び出す紀子。
リサ「ちょっ、ちょっと待って!」
紀子を追いかけるリサ。
〇同基地・入り組んだ廊下(夜)
廊下を走る紀子とリサ。廊下が分かれ道になっていても迷わず進む紀子。その様子に驚きを隠せないリサ。
〇同基地・治療室(夜)
治療室前に着く紀子とリサ。
リサ「何で部屋の場所が分かったの?」
紀子を見つめるリサ。治療室のベッドには人工呼吸器や色々な器具に繋がれたレインが寝ている。その隣にはストーム(22)とルビー(18)が泣きながらレインを見つめている。そんなストームとルビーを慰めるシールド(23)とロボットのサニー。サニーの顔は液晶画面になっていて、涙を流しているアイコンが映し出されている。そこに紀子が入っていく。
ストーム「お前・・・」
レインに近寄る紀子。そして、レインの傷口に手を当てる。
ルビー「テメェ、何の真似だ!」
紀子「傷を治す」
すると、紀子の胸ぐらを掴むルビー。
ルビー「ガキ・・・ふざけてんのか?」
手を発火させるルビー。ルビーに全く動じない紀子。
シールド「おい、ルビー!」
リサ「ルビー!手を放しなさい!」
リサを見て、しぶしぶ胸ぐらから手を放すルビー。そして、紀子の方を向くリサ。
リサ「紀子、続けて」
再びレインの傷口に手を当てる紀子。すると、紀子とレインが緑色に発光し、傷口が塞がり始める。あまりの光景に目を見開く一同。傷が完全に塞がり、目を覚ますレイン。
ストーム「これは奇跡か・・・」
〇イギリス・軍事基地(夜)
巨大なモニターにレインがナイフで突き刺す映像が映し出されている。そして、画面にレインのプロフィールが映し出される。驚いた顔で画面を見つめる研究員たち。
研究員A「い、今すぐあの方に連絡しろ!」
基地に通話音声が流れる。
司令官「何か分かったか?」
研究員A「はい!あ、あいつがまだ生きていました!」
司令官「レイン!こんなところに隠れていたのか・・・」
そこにシグナルが鳴る。
研究員B「エネルギー反応!場所を特定しました!」
司令官「そこに至急、BQ9を派遣しろ!」
研究員B「分かりました」
司令官「フフフ。また、お前の顔を見ることになるとはな・・・」
薄気味悪い笑顔を浮かべる司令官。
END
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