雨の夜のドライブ
星も夜景も見えない雨の夜にドライブをした。
街灯も無い田舎道を走る。
シカ、キツネ、キツネ、ネズミ、キツネ。
野生動物はなぜ道路の脇で存在をアピールするのか。
通勤の車内でどうしてもテンションを上げたいときのアルバムは3周以上した。
普段は心を支えてくれる、能天気なおもちゃ箱のような音楽たちはノイズのようだった。
君の声が返ってくるのが嬉しくて、二人で会話を続けられることが嬉しくて、今までどんなに心を支えてもらったかわからない音楽たちは耳の奥の遠くで小さく成っていた。
助手席につぶれたティッシュの箱が乗っていた。
今日は違う。
君がいた。
血が巡り肉体がある。シートベルトの下に肉体がある。
体温があり、呼吸をして、声、声、声がする。
どんなに音響設備の整ったホールよりも私の車内のほうがいいと思った。
ハイビームに標識が攻撃的な反射を向けてくる。
見えなくてもいいと思った。
ワイパーがにじんだ窓を律義に磨いている。
水滴が視界を邪魔してもいいと思った。
誰にも、何にも邪魔をされない空間があった。
シカ、キツネ、キツネ、ネズミ、キツネ。
なぜアピールをする。
君に注いだ注意が一瞬で主役を奪われる。
思い出と懐かしさと新しさで地図を書いているんだよ。
初めて二人で来てみたんだ。
ここで育った子どもの時代に君を知らなかった。
どこかで知らない場所で生きていた。
君を送り届けて安心ではなくさびしさを感じた。
さびしいと思った。
今日見る夢に、シカとキツネとネズミが出てきたらいいと思った。
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