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詩たち
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2018年7月の記事一覧

初めて手を握り合った日のこと

手、出して と隣の君が言った わたしは左手を反射的に出してから (違うか)と気付いて右手を出した 握手をした 右手と右手で握手をした 君のすべすべとした手のひらと わたしの乾燥しがちな手のひらが 初めてまざり合った ぬるい体温を感じた 骨も肉も わたしのものよりずっと大きく広がっていた 触れ合っている握手に物足りなさを感じた こんなにもぴったりと手のひらと手のひらを合わせ 指と指を握り 近くに居るのに 君とわたしは、それぞれ別の容れ物に入っている 実のところわたしは少しずつ

チョコレートミントのコンプレックス・ハーモニー

パッケージのデザインから届く光の信号は序曲だった 早る気持ちで蓋を捲り 五感がたちまち不協和に支配される ブルーグリーンと濃ブラウンの一粒の狂いもない均衡 鼻先を刺激する清涼感 挿し入れたスプーンの金属を伝播する氷点下の値とラクトアイスの感触 毒々しささえ感じられるドットのパターンへの思い これは難解な現代詩集を開いたときのそれだ 一つ一つの要素に分解したなら 記憶から拾い集めることは不可能ではない 見たことがあるもの 知っているもの 「ずるい」とさえ思わされる その