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【イベントレポート】島根県出雲市で「企業で外国人社員をどのように活かすか」をテーマにパネルディスカションを実施

日本初上陸“オントロジカル・コーチング”のアプローチに基づいた組織風土改善や、次世代のリーダーシップ開発、人材育成を手掛ける35 CoCreation合同会社(本社:東京都渋谷区)の代表の桜庭理奈は、2024年9月2日(月)に島根県出雲市にて「企業で外国人社員をどのように活かすか」をテーマにしたパネルディスカッションのイベントのモデレーターとして登壇しました。


■イベント開催の背景

近年、日本企業において外国人社員の活用が増え続けています。厚労省の調査によると、2022年には外国人労働者の数が過去最多の約182万人に達しました(*1)。出雲市もその例外ではなく、外国人社員の採用事例が多くなっています。

また別の調査によると、大企業の90.9%が「外国人雇用の受け入れ体制の整備の重要性」を認識している一方で、「社内に外国人雇用に精通する専門家がいない」といった不安の声もあります(*2)。

そこで本イベントでは、出雲市内で外国人社員を採用し、共に働く企業の社長2名をパネリストとして迎え、「企業で外国人社員をどのように活かすか」についてディスカッションを行うことになりました。

桜庭は、複数の外資系企業で人事や執行役員としての経験を持ち、現在は35 CoCreationの代表として、国際色豊かなコーチ陣と共に企業向けのコーチング事業を展開しています。今回のイベントでは、多様なバックグラウンドを持つ人材が生き生きと活躍できるインクルーシブな職場環境を育んできた桜庭の経験や実績を評価いただき、今回モデレーターとして参加させていただくことになりました。

(*1)厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ」について:https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_30367.html  

(*2)株式会社One Terrace:
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000019.000036579.html

<イベント概要>
テーマ:「企業で外国人社員をどのように活かすか」
ゲストスピーカー-牧野 寛(株式会社People Cloud 代表取締役)
-原 真士(山陰設備工業株式会社 代表取締役)
-桜庭 理奈(35 CoCreation合同会社 代表)
・日時:2024/9/2(月) 17:00~19:30
・場所:Izumonomad

■登壇者プロフィール

牧野 寛 氏/株式会社People Cloud 代表取締役・株式会社SAMI Japan代表取締役・PULSAR マネージング・パートナー
楽天でのEコマース事業を経て、2016年にロシアへ移住。2017年に同地にてSAMI LLCを設立し、東欧ITスタートアップの日本進出を支援。2019年に日本法人のSAMI Japanを設立。2023年に出雲市らとの共同出資でPeople Cloudを設立。東欧の高度IT人材向けの日本移住事業とコワーキングスペースの運営を手がける。グローバルVCであるPULSARのマネージング・パートナーも務め、起業家と投資家の二つの視点を持つ。

原 真士 氏/山陰設備工業株式会社 代表取締役・中国ダクト工業協会 青年部部会長
島根県内の高校卒業後、兵庫県神戸市の兵庫工科短期大学で空調・換気設備の専門知識を学ぶ。卒業後、大手設備総合会社(サブコン)に入社。東京都を中心に都市部での設備の施工管理者として11年間従事。2012年に退社すると同時に家業である山陰設備工業株式会社にUターン。2015年より同社代表取締役社長。会社のハード面、ソフト面の投資を積極的に行い、2017年よりベトナムの技能実習生を採用。2022年に技能実習生の1期生が特別技能者の資格を有し雇用したのをきっかけに、特定技能者の採用を行う。将来的に社内の中核を担う人材を育てるため、2023年より設計および施工管理を担う高度人材を採用し、育成中。2024年度中にベトナムに現地法人を設立する予定。

桜庭 理奈 /35 CoCreation(サンゴ コ・クリエーション)合同会社 代表・一般社団法人日本オントロジカル・コーチング協会 代表理事・株式会社メドレー 社外取締役
外資系金融企業での営業・企画推進を経て、人事へキャリアチェンジ。複数の外資系企業において、多国籍な職場環境で戦略的な人事を担当。2017 年より外資系医療機器メーカーであるGEヘルスケア・ジャパン株式会社の人事本部長、2019年から同社執行役員を務める。現在は、経営・組織・リーダーシップ開発コーチング、講演活動を通して、多様なステージにある企業や経営者を支援している。訳・監修:「あなたが知らない言葉のチカラ 望む人生の手に入れ方」

■会場は満員で40名の方に参加いただきました。

本イベントは、出雲市に移住した東欧のITエンジニアやグローバルに活躍する起業家などが集まるコワーキングスペース「Izumonomad (イズモノマド)」にて行われました。

当日は「外国人社員をより良い形で社内に取り入れたい」と考えている管理職や社員の方など約40名の方にご参加いただき、会場は満員となりました。

約2時間半のイベントでは「外国人社員を企業でどう活かしていくか」についてのパネルディスカッション、参加者を交えた質疑応答や懇親会が行われました。

■「外国人社員を企業でどう活かしていくか」をメインテーマにパネルディスカションがスタート

イベントでは「外国人社員を企業でどう活かしていくか」をメインのテーマにおいて、パネルディスカッションが始まりました。

ディスカッションテーマ1:外国人メンバーを迎えて一緒に働こうと思ったきっかけは何だったか?

People Cloud 代表の牧野さん(以下:牧野さん)は、2010年〜2011年のロシア留学中に自ら立ち上げた東日本大震災復興支ボランティア活動を通じて、さまざまな背景を持つ人々と共に活動を進めてきました。この体験をきっかけに、自分の中で感じていた「優秀さ」と海外で出会った「優秀さ」の違いに大きな好奇心を抱くようになったといいます。

山陰設備工業株式会社 代表の原さん(以下:原さん)は、建築業界でも人材不足という課題に直面していた際、出雲市の他の会社が主催していた「技能実習生の雇用」に関する講演に足を運んだことがきっかけだと語ります。そこで他の会社の成功事例を聞き、大きな刺激を受けたことをきっかけに「自らも挑戦してみよう」と決意し、2017年から外国人社員を雇い始めました。

ディスカッションテーマ2:一緒に働いてみて、社内外に及ぼす前向きで意外だった影響や結果は何だったか?

原さんは、初めて外国人社員を雇用した際、最初は社員同士の「当たり前」をすり合わせることに苦労したといいます。しかし外国人社員の方々の仕事への熱意やハングリー精神に、他の社員も刺激を受け、結果として会社全体の雰囲気や社員の意識がポジティブに変化したと語りました。

—ここから桜庭がディスカッションテーマ1で牧野さんが話していた「人材の優秀さ」について今の考えを牧野さんに改めて尋ね、「多様な環境の人々がいる会社においての”優秀さ”とは何か」という議論に発展しました。

牧野さんは、日本以外にルーツを持つ人々が多数を占める組織を運営している経験を踏まえ、様々なポジションにおける「優秀さ」の定義を一つにまとめるのは難しいといいます。そこで既存の役職に無理に人を当てはめるのではなく、現場で評価されている人物に適切な役割を与えようと意識していると話しました。

原さんも「優秀」の定義を定めることの難しさについて共感されていました。特に、原さんのフィールドである建築業界では、上司が部下に対して細かく指導せず、見て学んで覚えることが求められる「職人気質」の風潮が根強く残っているといいます。しかし外国人社員は積極的なコミュニケーションを重要視する傾向があり、これを「優秀」とみなす文化も存在するのではないかと原さんは考えています。

お二人の話に対して桜庭は、外国人社員はもちろん、ジェネレーションの違いなども踏まえ、会社においての「評価」は固定したものでも、一つでも決めるものでもないという風にまとめ、次のセッションにうつりました。

ディスカッションテーマ3:これから外国人メンバーを迎え入れる上で、経営者や現場が持っておくと良いマインドセットや体制はあるか?

これまで牧野さん・原さんに外国人社員を雇うことに対するポジティブな話を伺ってきましたが、「とはいえ、難しいところもあるのでは...?」という切り口で最終テーマに入りました。

牧野さんは、社員同士のコンフリクトが起こることを前提に、コミュニケーションを取ることが重要だと考えているそうです。また、コンフリクトが発生した際には、すぐに明確な答えを出すのではなく、時間をかけてプロセスを見守る姿勢が大切だとおっしゃっていました。

原さんは、言語や文化の違いがある中で、受け入れる側の社員に社内の変化を嫌う傾向に気づきました。その中でも「それぞれの苦手なことや得意なことを理解し、歩み寄って話す姿勢」を持つことが重要だと話しました。

■参加者からのQ&A

お二人のさまざまな立場を踏まえ、参加者の方からも次々に質問の声があがりました。

Q:「外国人社員を雇って、失敗した点と乗り越え方をぜひお伺いしたいです。」

A(牧野さん):「我々のチームは特殊な環境にあって、社内には日本人の方が少なく、ロシアやウクライナなど海外メンバーと一緒にプロジェクトを進めています。その中で、プロジェクトマネジメントのスタイルの違いで頻繁にぶつかりますね。実際、それが文化的な違いから来ているのか、個人の考え方による違いなのか、またはその両方なのか、正直まだよくわかっていません。

こういうことが起こった場合は、基本的に現場での議論のプロセスを大事にするようにしています。僕の中では、その議論の着地点だけは一緒に考えるようにしていて、そこに至るまでに違いがあるのは当たり前だと思っています。

A(原さん):うちはですね、海外から来てくれた社員さんを孤立させちゃったなという経験がありまして。最初は「孤立させないように」と考えたのと事業規模を考慮して、海外から2人を雇用して、2人で共同生活にしてもらったんですよ。そうするとプライベートの時間も一緒だったんので、2人が仲悪くなっちゃって...。今は、共同生活も1人での生活も選べるように、選択制にしました。

Q「自分は一社員として外国人社員の雇用に興味があるのですが、自分の会社の経営者が外国人社員に消極的で...。外国人社員の雇用を前向きに進めるために、どのようにアプローチしていけば良いでしょうか?」

A(原さん):僕は、外国人社員の採用について、業界の人たちやさまざまな場で情熱を持って話しているんですが、質問してくださった方と似ていて、なかなか理解してもらえないことも多いんですよね。でも、まずは自分自身がもっと深く理解しないと、うまく説明できないと気づきました。経営者であれば、本当に良いものならきっと興味を持ってもらえるはずなので、どうしたら良いと思ってもらえるかを考えてアプローチすることが大事だと思います。

あとは「仲間をつくる」っていうのも大事なんじゃないかなって思いますね。実際、特定技能の委員会をつくっているんですけど、同じような意識の人たちが多いので、悩みや考えも共有できていいなと思います。

A(牧野さん):自分がわからない領域のことを自社で新しく試してみる時の判断軸を想像してみたのですが、「これならやってみてもいいかも」と思えるのは、経営者としてリスクをしっかりコントロールできる状態にある時ですね。全社的に導入するのは代替手段が少なくて難しいと思うのですが、一部分で試せるような形であれば挑戦しやすいと感じます。

Q「円安など日本の経済状況を考慮して、外国人社員に長く働いてもらうために工夫していることは何ですか?」

これに対して、桜庭は外国人社員の雇用を含むさまざまな変化を受け入れるための組織の土台をつくることの重要性についてお話させていただきました。

A(桜庭):
私たちは心理的な部分、特に人が拒否反応を示すような側面も含めて、組織作りを支援していますが、日本語やビジネスマナーなどスキルに基づいた研修だけでは、実際には十分ではない部分もあると考えています。

本日登壇してくださったお二人のお話にもありましたが、変化に対応できる土台というのは筋肉のようなもので、日頃からトレーニングしていないと、急に新しい変化が訪れても、すぐには対応できないことがあります。

そこで、二分法的なアプローチでは海外の人材の受け入れが難しくなるため、ダイバーシティは大切ですが、帰属意識や一体感をどう育むかについて考えるための、組織風土を整えたり、役職研修を行ったりすることが大事だと考えております。

■35 CoCreation合同会社について

35 CoCreation(サンゴ コ・クリエーション)合同会社は、日本初上陸“オントロジカル・コーチング”のアプローチに基づいた組織風土改善や次世代のリーダーシップ開発、人材育成、などを手がけるコーチング事業を運営しています。

オントロジカル・コーチングは、自分自身の価値観・信条・倫理観、思考傾向など自身の在り方を理解することで行動習慣を本質的に変える、ヒト起点の改革を支援します。この改革を通じて、組織における価値創造、人材育成、組織改革を実現します。

・公式サイト:https://35cocreation.com/
・弊社へのコーチングサービスに関するお問い合わせ: contact@35cocreation.com