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2月作品集vol.2ーエゴイスト、綿矢りさ、ちひろさん、PLAN75 など

ネタバレ含みます!

しょうがの味は熱い 綿矢りさ

26歳のカップルが結婚前に同棲して息苦しくなって彼女が結婚を切り出すが彼女が実家に帰ることで寂しくなって最終的にはプロポーズをする話。私は同棲したことないし結婚を考えたこともないけどこの感覚わかるなーとなった。彼女が彼氏を好きすぎて緊張しながら生活をする、彼氏は自分のペースを崩されてイライラしてしまう。彼女は実家に帰るとお父さんやお母さんがいることで居心地の良さを感じるものの、彼氏が迎えに来てプロポーズをされると、親がどんなに反対しようがころっと彼氏を優先させる。結局、必要なのは家族?ということ?

あともう少しがんばれば、幸せになれるかもしれない。でも愛や結婚は、あともう少 と努力するものでしょうか。さきほどの父の言葉が思い出されます。私だって、う まくいくなら父の言うように、自然に、とてもスムーズに、絃との道を歩みたかった。 でもうまくいかないから努力してきた。 しかし、その努力は本当に必要だったのでしょ うか。そしてこれからの努力も。最初に舷に抱いた"好き"という気持ちがゆっくりと すり減っていくだけなのではないでしょうか。でも私はがんばらなければ気が済まない のでしょう。だって、好きなのだから。こんな、どこかで諦めながらもがんばらざるを 得ないという状況が存在することを、私はいままで知りませんでした。自分の意志では なく、執着や激情に自分の身体が引きずられてゆくこんな感覚を、私は本気で恋をする まで味わったことがありませんでした。

この彼女は傍から見ると男にのめり込んじゃってる系で私とは違うかも?と思うんだけど、意外と冷静に見ているときもあって、「どこかで諦めながらもがんばらざるを 得ないという状況」のところとか大共感なんだよなあ。

奈世とはずっと一緒にいたいって、気づいた。それが奈世と離れているあいだに出した 答えだ。でも、だからと言って結婚というのは違う気もする。でもそれしか方法がな いのなら、そうしようって感じかな。いや、そうしたい」歯切れが悪いのが気になって、いまいち夢見心地になれないけれど、言いかえてみれ ば紋が現実的に考えているということで、一時の感情に流されたのではないというわけ で、男の人にはそれくらい冷静でいてもらったほうが頼りがいがあるかもしれません。 とにかく、彼の出した今回の結論に私は満足でした。 「絞もよく決心がついたね。なにがきっかけだったの」

男性が結婚する理由ってこれなんだろうな。一緒にいたい、それは結婚でなくてもいいけど、求められるからすること。

片付いた部屋は心を晴らさなかった。昼のテレビ番組の出演者のにぎやかな輝き声だ けが部屋に響く。ばかばかしい、とリモコンを取って消そうとするが、なぜか消せなく そのまま見続ける。テレビを消せば、また向かいあいたくない何かと

彼氏が彼女がいなくなったあとの状況。生活感がなくなった喪失感。

私たちは同じものを食べ、同じ寝床にもぐりこみながら、将来住みたい場所さえ違う んだから、今私たちがこの部屋にそろっていることは、ほとんど偶然みたい。

サバカン

少年の友情とひとの温かさがテーマかな。話はシンプルで、クラスでちょっと浮いてるたけちゃんがひさだくんを誘っているかをみに冒険にでる、それがきっかけで仲良くなったけど、たけちゃんが家庭の都合で転校することになり、すれ違うんだけど最後に仲良くなっておわる。ちなみにサバカンはたけちゃんがサバカンのお寿司をつくってくれたから。転校の直前にたけちゃんのお母さん経由で、ひさだくんはたけちゃんを友だちだと思ってないかもしれないということを聞いてひさだくんはショックを受けて、拗ねて疎遠になる(ここうまく説明できない)というところが話の肝なんだが、ひさだくんはなぜショックを受けたのか?友だちだと思ってたのに否定された気持ちになった?最後にひさだくんがお父さんと駅でハグするシーンはなぜか泣いた。なぜか。とにかく長崎の景色が美しく尾野真千子と竹原ピストルの夫婦のやりとりも爽快でよき。 

猿楽町で会いましょう

嘘しか言えなくなると純粋無垢になるのか。人から言われた言葉しかいえず自分を大きく見せるための嘘ばかり。そんな女に惹かれてしまう金子大地。好きになるもののどこか信じられずスマホを見てしまうわけで。でも金子大地の夢をかなえる過程に田中ユカが鎮座しているからどこか否定しきれないんだろうな。女がメンヘラなのか男がメンヘラ製造機なのか。柳俊太郎もさすがの最悪男はまり役。話の構成が現在→過去→未来となってて、現在で起きた出来事の発端が過去パートでわかるという構成が面白かった。 

PLAN75

たぶん私は老いや死をテーマにした映画が好きというか考えさせられるから入り込みやすいのかも。75歳になると安楽死を選べるようになり、その制度を担当している磯村勇斗とおじ、その選択をとる倍賞千恵子とオペレーター河合優実、亡くなった人の物を整理するフィリピン人と多角的な視点で話は構成はされている。河合優実は感情移入してしまう、磯村勇斗は自分の手で弔いたいとなり、倍賞千恵子は逃げ出す。自分だったらこの選択をとるのか、もし身近な人がこうしたら私はどうするのだろうかと。倍賞千恵子さんは身寄りもいなくて仕事もなくて住む場所も失いそうになってて、私がこの状況だったら死を選択すると思うし、私は正直PLAN75みたいのはありだなと思ってしまう。自分の75歳を想像したら怖くなった。どんなに辛くても生きることが正しいというのもわかるが、自分の最適なタイミングで死ねるのも幸せなのではと思う。ただ、テレフォンオペレーター然り、死に誘導するのには違和感。何が違うんだろう。
細々したところだと
・オープニングはけっこうびびった。高齢者を殺害する事件が増えるってどういうこと?
・磯村勇斗にトマト?を投げた人はなんの意図?

エゴイスト

・宮沢氷魚ゲイ役似合う
・あそこまで一方方向に愛せる鈴木亮平
・エルピスでは水を飲ます側だった鈴木亮平が水を飲む
・やっぱり相手の大切な人まで愛せるのが愛
・とても謝ってた。ごめんなさいという言葉は良かれと思って使うけど本当は勝手に責任を負ってて相手の心を詰まらせる 

ちひろさん

「孤独を手放さないでいられるわ」「そしたら沈んどけ、人は浮かんでくるようにできてるから」「わかったのよね。人の心は独り占めできないって。私もされたくないし」他にも好きなセリフあった気がするけど思い出したのはこの3つ。佐久間由衣ちゃんに家族も他人もないよって言ったシーンとか、佐久間由衣ちゃんの焼きそばのシーンもよかった。そこだけ泣いた。
それぞれ家族に何かしらのしがらみとかがあって、「同じ星」の人同士でつながっていく、受け入れてるかんじ。この点は茶飲友達と伝えたいことが近いのかもしれない、そしてちひろさんのほうが「良い」つながり方。ちひろさんの言動は素敵!って思う反面、「?」が浮かぶこともあったし、佐久間由衣ちゃんのように誰かに嫌な思いをさせてることもあって、私は後者ばかりを気にして行動してることが多いので、逆に素敵になることもあるのかもしれないと思ったら、もっと自由でもいいのかもしれない。自分が良いと思うことをし続けても、誰かにとっては良くないことかもしれなくて、そんなときはちひろさんでさえ落ち込む。確かこのあと徹底的に沈むシーンがあって、そうやって浮き沈みをしていくしかない。そんななかでも、多恵さんみたいに「今のあなたがとっても好きよ」といってくれる人がいる尊さ。最後にちひろさんがどこかに行ってしまう気持ちがなんとなくわかる。べっちが言ってた好きな人とか楽しいとか思うと、期待しちゃうに近い、失う怖さなのかな。若葉竜也がめずらしく?ちょっと実直な役、リリーフランキーの色気も良かった。 

BLUE GIANT

漫画を読まず映画から。これを漫画で表現してるのすごいな。リアリティの高い音楽に画力を兼ね備えるとこんなことになるんだ!やば!!!と引き込まれる。
さわべの謙虚さのところ響いた。あーいう染み付いている性格が音楽に表れてしまうしそれを直す努力って相当。前半はたまだの努力と葛藤に共感。大学早稲田!ってなった。
あきこさんの涙になぜか一番もらい泣きをした。
ちょこちょこ挟むドキュメンタリーのカットを最後につなげたのを見れるかなと思ったけどそういうわけではなかった、せっかくからつないだ映像を見たかったな。
メイン3人の声優さん3人とも好きだったからあーいいなーと終始その奥にも思いながら鑑賞したのも新鮮。
アニメーションがちょっと気になったりしたけど、どんなに技術が発展しても難しいことなんだなあと思った。 

彼女が好きなものは

若いがゆえに、本人も周りの人も純粋で、その分とても辛かったり、反応がわかりやすかったり、「家族を持ちたい」という夢を持っていたりして、その点でLGBT系の映画の中では好きな方かも。お母さんとの病室のシーン、切実で良かった。家族を持ちたい、だけど、持てないことの純粋な葛藤。おのくん、りょうへい、三浦さんの受け止め方も素敵。特にりょうへいはいいキャラだったなー。わかりやすい反対側は渡辺大知かな、渡辺大知がすきなのであまり憎めないけどw Twitterでやりとりしてた男の子の存在がかなり鍵を握っていたけど、うまく言語化できておらず。純も三浦さんも、大きなカテゴリーが好きなのではなくて「その人のことが好き」と伝えてた駅のシーンも好きだった。 

浜の朝日の嘘つきどもと

家族が不和な高畑充希と大久保佳代子、大久保佳代子の大切な映画館を救うために動く高畑充希。茶飲友達や川っぺりムコリッタとちひろさんと同じ家族との向き合い方がテーマだけど、全体的に軽め。「家族は幻想」「幻想にすがりたい人もいる」「でも幻想が裏切られたときの絶望はすごいと思うんだよね」「最後は血なのかな」私も家族、というかどの関係も幻想だと思う。大久保佳代子みたいに最期まで家族と離れてる生き方もありだと思う。大久保佳代子とパオくんの気持ちと言葉のすれ違いも印象的だったな。どの関係も勘違いとすれ違いだらけなんだろうな。 とにかくすれ違いばっかりの物語とか面白そう。

ちょっとでも、あなたの心にひっかかったら。