見出し画像

【備忘録】高校生での第24回全日本フットサル選手権出場~第6回全日本U-18フットサル大会を終えて

人は物事を忘れてしまう生き物で、「長期的負けず嫌い」を実行できる人間こそが成長し続けることができるのかなと思います。そのために備忘録として、30歳の自分が感じ、考えていることを残します。

備忘録ですが、フットサル指導者だけでなく、フットサルをあまり知らないサッカー指導者の方にも読んでいただきたいと思っています。

まず、こうやって備忘録を書く時間があるのは、今回の第6回全日本U-18フットサル選手権で作陽高校が予選敗退という悔しい思いをしたからです。本日8月4日に決勝が行われ、今大会はペスカドーラ町田U-18が優勝されました。上位3チームをFリーグの下部組織が勝ち取るというフットサルに関わっている選手や指導者には嬉しいニュースでした。おめでとうございました!

そして、3月に出場した第24回全日本フットサル選手権で感じたことも含め、ユース年代のフットサル全国大会に、6回全てに出場した一人の指導者として、振り返ります。

①ユース年代のフットサルに微力ながら関わっていて感じていること。

「ズレを生み出す」

僕は自分なりに分析して、サッカーとフットサルを攻守において「オープニング〜ビルドアップ〜ブレイク(フィニッシュ)」という3段階に分けて考えています。攻撃の最初の配球や動き出しを「オープニング」、押し込んだ後の攻撃の構築をビルドアップ、ブレイク〜フィニッシュ(ゾーン3)。守備は、その逆です。※ちなみにオープニングは、ゴールキックやクリアランスなどのセットプレーとは限りません。お互いにセットされた状態での、最初のプレーと考えています。

そして、高校生チーム同士で戦った時は、オープニング〜フィニッシュという形で進み、ビルドアップ(やり直し、またはオープニングを活かした連続した攻撃のプレー構築)が大学や社会人、そしてもちろんFリーグに比べると、かなり少ないなと感じていました。簡単にいうと、最初の「ズレ」でそのままフィニッシュの局面にいけることが多いなと。これこそがサッカーチームでもフットサルの大会で勝てていた要因の1つなのかなと僕なりに思っていました。ゾーン2(サッカーでいうミドルサード)にボールのラインが上がった時や、押し込んだ後のセット攻撃でも1つの「ズレ」(個人のドリブルなども含めて)がフィニッシュにつながっているのではないかと。

この「ズレ」は、個の力(フットボールIQ)が高いと1人でも生み出せます(昨年の帝京長岡高校が脅威となっていた理由の1つ)。また、「ズレた後」の守備のルールがチームとして決まっていたとしても、4日間で6試合するというレギュレーションが、大会日程が進むにつれ、「アスリート的な能力」の差として、表面化したことが、これまでサッカーチームに「分」があった部分なのかなと思います。「分かっていても、間に合わない」的な。(過去に対戦した湘南の植松選手や、今大会決勝で戦った町田と大阪の2チームの中心選手は、圧倒的なアスリート的な能力を兼ね備えていましたが)

そもそも、「ズレた後」の守備が決まっていないチームが多いこともこれまで、この大会でサッカーチームが勝ちあがれた要因でもあると思います。今回は現地で予選リーグしか見ていませんが、守備時の振る舞いを見ていると「このチームが勝ち上がるだろうな」と予想が立ちます。攻守において、試合をカオスにせず、自分たちでコントロールできるからです。(もちろん、全て当たらないところが、高校生の難しさであり、僕がフットサルを勉強しなければならない理由であり、スポーツの面白いところでもあります。笑)

1stラインの前の守備は普通でも、それを超えられた後の帰る場所やマークの受け渡しがちぐはぐで、対応が毎回異なるチームがフットサルチームでもありました。気持ちで戻ってゴール前だけなんとか守っている感じです。作陽も今回はチームの立ち上げが遅くなったこともあり、そこがなかなか落とし込めず、負けられない緊張感の中でも落ち着いて対応できるほど、整理できていませんでした。これは完全に、指導者である僕の責任です。

攻撃も同様に、フットサルチームは相手の守備の「ズレ」が発生した後に、それを見逃すことなく、優位性を維持したままフィニッシュにつなげていました。どちらが早く「ズレ」に気付けるかというのも非常に大事です。

僕はこの「ズレ」を生み出し、活かせるかどうかがフットボールIQが高いか低いかを表す指標の1つだと考えています(ハイブリッドフットボーラー!)。サッカー経験者で、フットサル経験が少なくとも、フットボールIQが高い選手はフットサルのコートやルールで、ズレを作り出すことができ、味方が作ったズレを活かすことができます。集団競技における優位性とその作り方、原理原則を知っているからです。逆にフットサル経験が多かったとしても、相手と駆け引きするのではなく、形やパターンでプレーする選手は自分が置かれている状況と味方、相手の状況を認知できず、フットボールIQが低いといえます。(駆け引きするとは、選択肢を準備することだと考えています)

今大会でも、Fリーグ下部のチームの攻守における「ズレた後」の個人の判断、チームとしての対応の早さと正確さが際立っていました。「こうしてきたら、こうなるよね。それ知ってるよ」と分かっているような。その差は日常的に行われる「トレーニング〜ゲーム〜トレーニング〜・・・・」というリーグ戦ベースのサイクルによってフットサルの経験値を積んでいることがあってこそ、生み出されているのかなと思います。(パワープレーやセットプレーといった特殊な局面への対応も同様です。彼らがサッカーをしたらどんな感じになるのか、非常に興味があります。

そうなると、日常的にフットサルを取り組んできていない(取り組める環境がない、または幼少期からサッカーしかしていない選手が多い)サッカーチームが太刀打ちできなくなることは目に見えています。個人、チームで仕掛けて「ズレ」を作り出しても40m×20mのフロアでは、フットサルチームが対応でき、逆に守備ではズレを有効的に使われるからです。また、サッカーチームの攻撃での仕掛けの手や守備方法が少ないので、チームとしての対応力や連続性があまりありません。一発はあるかもしれませんが。。

「サッカーチームはどうすればいいのか」

では、サッカーチームはどうやって戦うのか。長い目でみると、フットサルが論理的思考を育みやすい競技であるように、論理的にサッカーを捉え、指導する指導者が増え、選手のフットボールIQが高まることだと思います。スペインやブラジルでは、サッカーでもフットサルでも活躍できる選手が出てくるような土壌があります。

現実的に現状から考えてみると、チームスタイルや指導者によって、様々な方法があると思いますが、「いわゆるフットサルの戦い方に縛られず、自分たちの優位を活かす」ことかなと思います。

例えば、昨年の第5回大会、準々決勝「作陽高校vs名古屋オーシャンズU-18」において、自分たちは前半、キーパーからのロングキックを1つのセットの主攻としました。攻撃のオープニングがゴレイロのロングキックというわけです。相手のベンチの選手からは「蹴ってくるだけ」とかJFATVで見ている方からツイッターで「作陽もなんだかんだ蹴るだけか」と言われました。でも、「ゴレイロが自信を持ってロングキックを手で弾けていないこと」「落下地点を読むことと、ヘディングが苦手な選手が多いこと」「チームとしてのロングキックへの対応がバラバラになっていたこと」をそれまでの試合をスカウティングした結果得ることができたので、1つの「相手の弱点をつきながら、自分たちの優位性を活かす」戦い方として選択しました。結果的にその流れで1点と、もう1点入りそうな状況を作り出しました。(もちろん、全て蹴っていたわけではないです。昨年のチームは、サッカーでもヘディングの強い選手がいて、ゴレイロのキックにも自信がありました)

ここで言いたいのは、ロングキックという戦い方がいいということではなく、サッカーチームが「フットサルの正解だけで勝負しようとしないこと」です。フットサルの原理原則の中で、非常識であったとしても自チームが信念をもった戦い方にトライできるかだと思います。(個人としてもチームとしても)

「テンポライズして味方の上がりを待ちながら、中央レーンに運ぶことで数的優位を作り出す」というカウンター時の攻撃方法の1つをフットサルB級で学びましたが、これもタレントがいるならば普段100m×68mで戦っているスピード感を活かして、カウンター時に2人ぐらいなら抜きにかかってもいいわけです。なぜなら3on2で、センターレーンにボール保持者がいる状況なんて、フットサルチームはみな当たり前に練習してきているし、知っているからです。守られて、相手ベンチが盛り上がるタイミングを作り出すだけです。笑

過去のこの大会では、聖和学園サッカー部、野洲高校、久御山高校のドリブル、矢板中央高校の大塚選手をターゲットにしたロングスローとロングキックなど、そのチームのカラーを全面に出すことがありました。

もちろん、これまでもこの戦い方には賛否両論がありましたし、僕自身としてはフットサルの深みを学び、それをサッカーに活かすことが日本のフットボール界をより良くしていくとは思っていますが、サッカーチームとフットサルチームが混在する日本の育成年代のフットサル界の独自性と可能性を感じる部分でもあるなと思います。振り返ると、フットサル界にサッカー界のタレントが入ってくる懸け橋となっている大会でもあるからです。

「フットサルとサッカーを学ぶ指導者として思うこと」

フットサルに関わる経緯になりますが、僕は大阪で高校までサッカーをしてきて、大怪我をした結果、大学サッカー部では4年間学生コーチをしていました。その後、縁があって作陽高校サッカー部の指導をさせていただく機会を得ました。なので、フットサル経験者ではありません。

5年前の第1回大会の時には、タイムアウトがマイボールのタイミングで取れるというルールも知らず、4秒ルールもいつからカウントが始まるかわからない中で、選手を引率し、負けている時やうまく行かない時でも、どう戦うべきかという提示を一切できず、指導者としてもどかしく、準々決勝では名古屋オーシャンズU-18に圧倒されました。

その時、何も伝えられなかった悔しさから、Fリーグの試合や、先日湘南ベルマーレフットサルのコーチに就任された村松さんの動画をネットで見まくって、フットサルの再現性と原理原則を自己流で学びました。そして、選手とも日々話し合いながら、色んな指導者に教えてもらいながら、みんなで作り上げたチームで第2回大会で日本一になることができ、フットサル界のつながりが広がり、深くなりました。今となっては、サッカー部の指導やプレーモデルにもフットサルの考え方や原理原則を取り入れています。フットサルという競技を通して知り合えた方々のおかげで自分が指導者として大きく成長できたことに感謝しています。

そこでフットサルを知らないサッカーの指導者と話していて、1つ思うことがあります。「フットサルは難しく、サッカーと部分的(技術面、戦術というかグループ攻撃的な?)にしかリンクしていない」と考えているサッカーの指導者が多いということです。「フットサルしたらドリブルが上手くなる」など。これまでもフットサル全国大会にサッカーチームが何チームか出場しましたが、「なぜ、自チームがフットサルチームに負けたのか」「なぜ、ゲームがああいう展開になったのか」ということの整理ができたチームは多くはないと思います。

答え合わせをする場が少ないからです。

僕はこの答え合せという作業が非常に重要だと感じます。この答え合わせこそ、サッカーでも大事ですが、フットサルの面白いところであり、選手も指導者も伸びるtipsとなるでしょう。僕もフットサルを学び出したこの5年間で、「作陽がこういうことをしてきたから、僕たちはこういう戦い方を選んだ。だから、君はこうしたよね?そうしたから、さらに僕たちはこうしたよ」ということを練習試合や大会後にいろんな指導者と話すことがあり、フットサルの深さや、面白みを感じています。インストラクターやTSGの方々にも第3者目線で答え合わせをしてもらうとフットサルというゲームの戦い方の知識と同時に「これはサッカーでも使えるな」というものも、たくさんありました。

サッカーでは後出しジャンケンは個人の判断に委ねられる比重が高いと僕なりに捉えていますが、フットサルはチームで何度も後出しジャンケンができます。プレーの再現性がチームとして非常に高いからです。再現性が高い中で、成功体験を得ることはフットボーラーとして非常に重要だと思います。(認知〜決断〜実行のプロセスの成長には、特に大事です)

今後発展していく中で、仮に日本フットサル協会ができたとしても、サッカー界とフットサル界は育成年代において、密接につながっていくことが大事だと思っています。


②第24回全日本フットサル選手権「作陽高校vsバルドラール浦安」で感じたこと。

話は変わります。今年の3月に、高校生vsFリーガーという夢のような舞台に立たせてもらい、選手に感謝しかありません。卒業式の次の日も公式戦があるという特殊な状況で、本気でスカウティングをして、本気で勝ちに行くための準備をしましたが、結果は0−8で1点も取れませんでした。

まず、僕らが連れてきた100名近くの高校生(サッカー部員)を中心とする大声援で、試合中の指示が一切通らなかったことが大きな原因で、前半は大変なことになりました。笑 ベンチで座っている1m先にいる生徒にも、ボードで指示するときに、大声でも声が聞こえにくいというぐらい会場中に響き渡っていました。そうなると、ピッチに出ている5人はグループとして意思を統一して戦うこともできず、狙いが全く合わずにちぐはぐで自滅した前半となりました。(もちろん、力の差は圧倒的にあった上での話です。)

その試合を簡単に振り返ってみます。最も大きなアマチュアレベルとの違いを感じたのは、オープニングで1stラインをうまく超えたり、自分たちのピヴォにおさまった時、相手の撤退がとても早かったことです。ズレができても、一瞬で無くなるので、ボールを下げて、やり直して攻撃の構築をしないといけませんでした。しかも、下げた場合でも次の瞬間にはチームとしてのプレスが始まっていました。逆に相手の攻撃は、自分たちが常にどう対応するか選択を迫られるような状況に置かれ、選んだ方と逆を突かれました。攻守において、チームとしてのプレーの連続性、インテンシティが非常に高いと言えました。「ボールがあるラインを超えると息ができなくなる」ような感覚でした。

もちろん、全日本フットサル選手権の岡山県予選、中国予選、練習試合で戦った社会人や大学生のチームでも、1stラインを超えられた後の撤退が早いチームもありました。でも、ズレによる自分たちの優位はそのまま活かすことができる場合もあり、そのまま前に出てプレスに強烈なプレスが来るということはあまりありませんでした。

このインテンシティというものは身体的な側面だけでは、上がるものではないと思います。プレーモデルをベースにした頭の中の連続性、予測があって、さらに個々とチームのメンタリティ、そして、身体的負荷への耐性などなど、、、あらゆるものやトレーニングの積み重ねの上に成り立つものです。

この「本当の意味でのインテンシティ」というものを細分化して、フォーカスすることが育成年代やアマチュアチームのレベルを上げることにつながっていくのかなと感じています。


③「最後に」

長々と書きました。色々な観点と意見があると思いますが、これらはあくまで僕の備忘録です。笑

サッカーでもフットサルでも、抽象的に現象を捉えて「ズレ」に気づけて、それを活かすことで優位に試合を進めることが面白いと感じれる選手が1人でも多く出てくるように指導していきたいと思います。(現象の抽象化!ハイブリッドフットボーラー!)

微力ながら様々な競技、立場で、様々な想いを持っている指導者や選手が互いの歩い思いを合わせ、日本のフットボール界、スポーツ界がさらに発展することを願っています。(オリンピックと体育の授業でフットサルが本格的に採用される日が来ますように。)

また少しでもフットボール界に貢献していけるよう、今後も岡山の地で「自分にしかできないこと」をテーマに頑張っていこうという決意を強く持ち、指導者として生徒とともに成長し続けます!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?