暑くて眠れない夜は



うらん作

地球温暖化で、気温が高くなっている。
世界的課題だ!
あと1.5度高くなるだけで、危機的な状況に陥るらしい。
いや、それよりも、今の僕にとっては、「寝苦しい夜をどう過ごすか?」が最大の課題だ!
クーラー病だから、扇風機を壁に当て、風が跳ね返るようにしてみた。でも、ダメだ。暑い。
枕をアイスノンにしても、身体中から汗だくになる。いろいろ試したが、日ごとに暑苦しくなる。
誰かぼくに安眠できる方法を教えくれ!
涼しく寝られるようにになる季節はいつ来るのだろう?
部屋にこもってもいられなくなり、公園まで散歩した。夜風が心地よい。
もう暑苦しい部屋には帰りたくない。
僕はダンボールと、薄がけを公園の端のベンチの下に敷き、そこでひと晩過ごした。誰も邪魔しに来ることもなく、野犬に襲われることもなく、ぶじにひと晩過ごした。そういえば、最近、野犬って見かけないなあ。
グッスリ睡眠できた!
あまりにも気持ちよかったので、僕は天気のいい晩は公園で寝るようになった。
ある晩、1人の男が声をかけて来た。中村さんと言うらしい。
「家がないのか?」
僕は
「家の中が暑くて、公園にいます」
と答えた。
中村さんは、
「素っ頓狂な奴め!」
と大笑い。
僕は中村さんとよく話をするようになり、仲良くなった。
中村さんも眠れない夜によくこの公園に来るらしい。
一瞬、浮浪者なのかな? とも思ったが、話をすると、口調がとても丁寧だ。説明もわかりやすいし、物腰も柔らかい。
苦労話を聞いた。
僕の話も聞いてもらった。
ある日、中村さんに、
「オレの家に来いよ」
と誘われ、驚いた。
「えっ、家があるんですか?」
中村さんは、失礼なやつめみたいに「わっはっは」と笑った。
後日、中村さんの家を訪ねてまた、ビックリ!
大豪邸だ!
素っ頓狂はどっちだよ!
僕はすっかり騙されていたと思った。
が、中村さんは、
「お前だけだよ、蔑んだ様子もなくちゃんと話ができたのは。へつらうでもなく楽しく話ができたんだ」
という。
人は見た目だけでは、わからないもんだね。
中村さんはただ、肩書き無しのおしゃべりがしたかっただけなのさ。

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