夢の中のゾンビ

辰彦は夢を見た。
おじいちゃんと
おばあちゃんが、毎晩あらわれるんだ。
おじいちゃんは、生前と同じいつも機嫌の悪い顔で僕に言う！
母ちゃんを助けられるのは、お前だけだぞ！

僕の母は
旅館のベランダから落ちて脊髄損傷しもう立ち上がることも出来ない。介護生活をしている。
優しい母だが、心配性で、自分の事より
僕の心配ばかりだ。
親族は、そんな母の面倒は嫌だと離れてしまった。
情すらない親族。
僕は、負担が大き過ぎて、辛いんだ。
おばあちゃんも、笑顔で夢の中に現れる。

僕は分かっているよ。
母ちゃんを、守って寂しくさせない様にするからさ、毎晩、おじいちゃんも、おばあちゃんも
現れないで！

おじいちゃんの遺産も、おじいちゃんの兄弟が、
母ちゃんにねだり取れるだけとったのも知ってる。
おじいちゃんが夢に出てしかるのは、
おじいちゃんの兄弟の方じゃないか！

母ちゃんを、手助けしてやってくれと
夢に出て怒ってくれよ！

何度も、僕はおじいちゃんの出てくる夢の
中で叫んでいるんだ！

母ちゃんからも、仕事場へ連絡が毎日くる。
誰もお見舞い行かないから寂しいはずだ。

夢の中で、僕が叫んだのが、
心の声で伝わったのか、
少し、親族の様子が変わった。

毎晩、おじいちゃんが夢に出てくるとの
噂が流れてきた。
やった！じいちゃんも出来るじゃん。
夢のかなのおじいちゃん！
生きてるゾンビ達の心を動かしてくれたんだ。

全く、情すらないゾンビ達を
やっつけるには、
夢の中で、化けて出るぞと、ゾンビ役を
引き受けてくれたじいちゃんのおかげさ。

今では、母ちゃんの所へも、
親族が、お見舞いにいく様になったみたいだ！

僕は仕事に頑張るぞ！

#ゾンビ