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犬と猫と嫁と夢

嫁は、犬と猫に目が無い。
「目が無い」って言っても食べるわけではない。
愛でる専門である。
この場合に「目が無い」っていう表現を使うのは、正しいのだろうか?
正しくないかも知れない。間違っているかも知れない。
でも、言語なんてものは、歴史と共に変わって行くものだ。
もし僕がインフルエンサーなら、僕の表現が正しいってことになるさ。

とりあえず、「インフルエンサー」のくだりは、読み飛ばしてもらって大丈夫です。使ってみたかっただけです。
嫁は、とにかく犬猫などの動物が大好きだ。
どれだけ機嫌悪くても、犬猫が近付いて来たらメロメロになってしまう。
仕事中に、「今日はお散歩中の犬がじゃれついて来て、すこぶる可愛かった」という報告がLINEで送られて来たので、「具体的にどう可愛かったのか」を訪ねたら、

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絵に描いて教えてくれた。
我が嫁ながら、上手いな、絵が!
ちなみにこれは、僕が記憶だけを頼りに描いた猗窩座。

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我ながらひどいな!
47年間、何をして来たんだ!

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犬猫には「目の中に入れても痛くない」ぐらい優しい嫁だが、僕には厳しい。
犬猫に対して、「目の中に入れても痛くない」という表現は正しいのだろうか?
大した問題じゃない。
大勢に影響は無い。
もし僕がインフルエンサーなら、みんなが僕の表現を真似るようになるさ。
とりあえず、覚えたばかりの「インフルエンサー」という単語を使ってみたかっただけです。もう使いません。すみません。

嫁は確かに僕に対して厳しいが、言ってることは的を射ているので、頷かざるを得ない。
僕の初心者への空道の指導風景を見た嫁が、

「あなたは初心者に教えるのが下手!」と言い捨てた。
「こんなにいっぺんにいろいろ言うから、この子混乱してるやん。一つづつ順を追って教えて行かんと。『膝を抱え込んでから蹴ります』では、なんで『一回膝を抱え込まなあかんのか』がわからへん。なんで『一回膝を抱え込まなあかんのか』を、説明してあげんと。あなたは結構、見て真似するのが上手いけど、そんな人ばかりやないから。見ただけでは出来ひん人もいるんやから。そもそも武道っていうのは、そういう人のために……」
この辺で僕がメソメソ泣きだして、嫁のダメ出しが終わる。

僕は、ひとりでちびちびいいちこを呑む。
嫁のダメ出しを思い出しつつ、自分の指導風景の映像を見ながら、呑む。
嫁は、もう寝てしまっている。

「ものすごくものすごいよ!」

うわ、びっくりした!
なんてはっきりした寝言。
豊かな発声と確かな滑舌を伴った寝言。
さすが元・演劇部。

「何がそんなにものすごいの?」
「だから、ものすごくものすごいの! スピー……←寝息」
何かはわからないけど、とにかくものすごくものすごいらしい。
布団をかけ直して、再びいいちこを呑む。
朝起きたら、何がものすごくものすごかったのか、聞いてみよう。
ものすごくものすごい、幸せな夢を見ているんだろう、きっと。




僕が好きなことをできているのは、全て嫁のおかげです。いただいたサポートは、嫁のお菓子代に使わせていただきます。