Life goes on
疲弊し続ける世の中で
2020年の春、日常が一変して息苦しく、会いたい人に会えず、行きたい場所に行けない毎日の中で、少しずつ少しずつ世の中が疲れていくのをぼーっと眺めていた。きっと私も疲れていたし、今でもなお、余裕のない人々の余裕のない声を見つける度に心底疲れ続けている。
それでも、私は普段接客の仕事で、お客様の美容に携わり、あの禍々しい毎日の中でも「手元を見ると少しだけ気持ちが明るくなる」「仕事中つい指先を見ちゃって、綺麗だな。って癒されて、忙しい時間の隙間にぼーっとするんです」とたくさんの方からありがたい言葉を頂いて、沈みそうになる自分に言い聞かせた言葉は“それでも生きていくんだ。まだ人生はこれからだから。”だった。
今まで自分に言い聞かせてきた言葉は“明日死んでも後悔しないように生きろ“だったけれど、2020年の春以降はずっと“生きていくんだ”だった。
今月20日に発売されるBTSのアルバム「BE」の新しい情報を追いながら目にした“Life goes on”という文字に、なんだかずっと孤独の中で戦い続けてきたような気がしていた自分自身が、救われた気がした。そうだ、たくさんのことが目紛しく変わっていく中でも、人生は続いていく。戦い続けていたのは私だけじゃなかったんだ。
たくさんの悲しみに溺れそうな2020
パンデミックが起こらなくても、毎日悲しい出来事はあちらこちらで起きていたはずなのに、パンデミックを機に、このどこにいても誰とでも繋がれる2020年において、遠いどこか知らない場所で起きた知らない誰かの悲しい出来事をも、さも目の前で見ているかのように、知ることができてしまうのを世界中が体感してしまった。感情は伝染して、怒りはさらなる怒りを呼ぶし、悲しみはさらに深い悲しみを呼ぶ。特に私が生まれ育った日本という国においては、世間が悲しみに包まれている時に幸せでいてはならないような空気が充満しやすくなっている。なんて生きづらいんだろう。それでも人生は続くのに。誰かが悲しい時に、一緒に悲しまなくてはいけない空気がどうしても辛い。みんなもっと幸せでいていいのに。幸せになる要素だけを取り込んで、より幸せに生きていたっていいのに。
2020年よりもほんの少し前、2017年頃に私は悲しみと虚しさと息苦しさのループから抜け出せなくなっていて、死にたいわけでもないのに生きていることがとても辛く、こんなに苦しいまま生きていなければならないくらいなら、生きていることを辞めたい。とただ呆然と泣き暮れる日々を送っていた。
今思い返しても、何をそんなに悲観していたのか、何に苦しめられていたのか全く分からないほどとても些細なことの積み重ねで苦しくなっていたように思う。私は2020年になってからBTSに出逢ったけれど、あの頃の私があの時にBTSに出逢っていたら、きっともっと早くに苦しみから抜け出せたのかも知れない。
あなたの物語を聞かせて
BTSにハマり始めたとき、数々のエピソードを辿る中で、ARMYの皆さんのブログやnoteに巡り合い、彼らの過去の出来事や、彼らの生い立ちを知ることができた。沼の水面に爪先をつけてみる瞬間に、どんな言葉やどんな優しい世界に出逢うかで、どこまで沼に浸かるかが決まるような気がしているのだが、私は数々のARMYの優しい言葉達に出逢ったおかげで、一瞬で頭から沼にダイブした。
彼らがユニセフとパートナーシップを結び、ENDviolenceキャンペーンを行っていることを知り、noteにリンクしてあったBTSのリーダーであるRM(キムナムジュン)の国連スピーチ動画をなんとなく見ていたのだが、気がつくと私はそのスピーチを聞きながら号泣していた。
スピーチの中で繰り返し問われる“あなたの名前は?”“あなたの物語を聞かせてください”このフレーズに出逢っただけで救われる人がいる。過去の私もそのひとりだ。スピーチを聞いた今の私ではなく、今の私自身が過去の私を赦して、失敗や過失を咎めずに、それさえも今の私を形作るものだと受け入れようとし始めたタイミングで、この言葉に出逢った。他の人に肯定されなくても、自分で肯定すればいいんだと思い続けていたが、RMのスピーチによってそんな自分にもハナマルをもらえたような気がしたのだ。
スマホが普及し、誰もがSNSを使う世の中で“ドラマティックでなければ自分語りが許されない風潮”がどこか、特に日本では暗黙の了解としてあるような気がして、私自身がインターネットに初めて触れた時の感動や、離れている人とリアルタイムで繋がれる便利さと、どこまでも独り言を放り投げることができるツールだと思って好んで使っていたものが、いつしか現実世界と混じり合って匿名であっても自分を偽り、周りの目を気にする要因の一つになってしまったなぁとしんどさを感じていた。
もちろん使い方によっては、推しの情報だけを取り込み、大好きな方達の大好きな言葉や音楽、居心地の良い世界観に浸るための幸せなものとして楽しむ事はできるだろう。悲しいニュースを避けて、しんどい言葉達をミュートして、自分の過ごしやすい形を見つけていくこともできるだろう。それでももし、不意に避けてきた悲しみやしんどさに出遭ってしまったら、私はきっと繰り返しこのスピーチを聞くと思う。私にはこの言葉があるから。きっとこれからも続く人生を、この優しい問いかけと共に生きていける。
“あなたの名前は?”
“あなたの物語を聞かせてください”
それでも人生は続いていく
BTSの7人がわちゃわちゃ仲良くしているところを見たいがためにRUN!BTSとボンボヤージュシリーズばかりを観まくっていた私だったが、BEのカムバが始まるタイミングで、どうしても避けては通れない花様年華についてもっと知っておく必要があるな、、、と色々と辿り始めたらもう深海何万メートルなのかしらというほど深い世界にまで潜り始めてしまった。本当に果てなく続く自分との対話の旅をしているような気さえする。世界が一変して、世の中の暗い部分ばかりに気が付いてしまうような毎日でも、推し達が共に歩んでくれるこの人生の先にはうっすらと光が差している。うまくいかない毎日でも、笑えなかった1日でも、不安に押しつぶされてしまいそうな夜が何度となく来ても、それでも、人生は続いていくから。それでも生きていくんだ。私は私自身と、周りで支えてくれる人たちと、推し達を抱きしめながら、今日も明日も生きていくんだ。
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