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その瞬間からタカラモノ ~母と娘時間の始まり~


「女の子なんです。」少し照れくさそうな満面の笑みで、

職場のパパになりたての同僚が、

生まれたての赤ちゃんの事を教えてくれる時、

大変だっただろう出産を終えた”ほやほやママさん”へのいたわりと

”女の子のママ”になった幸運、

そして、これから体験するだろう女の子の育て方の難しさに

想いをはせる事があります。


本当に少しだけだけど、

これから子育てが始まるパパママへのエールをと

プレゼントを選ばせていただく時間は至福の刻です。

親戚でもなく、ただの同じ職場の同僚からも、

本当にたくさんの祝福を受けて生まれて来た貴女。

そこにいるだけで、

すやすやと眠る寝顔だけで

どれだけ回りの人を幸せにしてくれている事でしょう。


選び終えたプレゼントにつけるカードを選んでいた時、

不意にこみあげてくるものがありました。

自分と娘の今までの事を、

ふと思い出してしまったからです。


「おめでとうございます!」「とっても可愛い女の子ですよ。」

分娩室で聞いた瞬間にあふれ出した涙。

予定日を10日も過ぎて、

ようやく生まれて来てくれた娘と

初めて顔を合わせた日の事は

どれだけ時間が経っても忘れる事はありません。


そして

大学を卒業した2年前の春

人生の節目で大きな選択をした娘に対して

不安を押し付け、

心配ばかりする私に

「何で、私の気持ち、分かってくれないの!!」

「もう、大人なんだから、ほっといてよ!」

そう言い放ち、

住み慣れた家から社会に飛び出して行きました。


その子が

この3月に勤めていた所を退職し、

近くにいたにも関わらず

一度も家に戻って来なかったのに

行く場所もなく

実家に戻って来ました。


職場だったお店では

たまに顔を見に行くと

いつも笑顔で楽しそうな様子でした。


でも

実家に戻って来てから

しばらく経って、

重い口を開き

お店での辛かった体験を

ぽつぽつと話してくれた時

どれだけ心が痛んだか、

一緒に泣きたくなったか、

きっと娘には

想像もつかないだろうと思います。


成人した娘を、

小さかった頃のように胸に抱きかかえて、

頭をなでてあげるには

年を重ね過ぎてしまっていたから。


女の子は、自分自身も含めて、

母と娘という甘くて切ない関係を

どちらかの人生が終わりを迎えるまで、

ずっと続けていく事になります。


母と娘の時間の途中に、

どんなひどいやり取りがあったとしても

どんな行き違いがあったとしても、

今がどんな状況だとしても

娘として生まれて来てくれた瞬間から、

貴女は大切な大切な

タカラモノになります。

その事だけは心の奥に、

そっとしまっておいてもらえればと願います。


春以降、

望まない妊娠をする10代の子の相談が増えていると

ニュースで聞きます。

娘のように仕事を失くしたり、

収入が減ってしまったりした方もいるかと思います。


そんな状況で、

自分に存在価値を見いだせなくなったり、

自暴自棄になってしまったり

つらい想いをしている子が

いるのではないかと

いらぬ心配をしています。


すでに成長し、

これからママになっていく女の子達に

貴女たちの存在が

どれだけ

周囲の人達に

ぬくもりや優しさをくれたかを

少しだけでも伝えたくなりました。

(面と向かって娘に言えない

 母の独り言でした。)

【終わり】