身近な人が余命宣告をされたときに読んでおきたかった本
コロナ禍に母を癌で亡くした者として、これは読まなければと思った。母が最期、どんな気持ちだったのか、当事者にしか分からないところが少しでも分かればと思った。
と同時に、遺伝的には明日は我が身。そう遠くはない将来の自分ごととしても読んでおきたかった。
山本文緒さんの、このような状況の中でも書き続けた姿勢にこちらが勇気づけられながら、自分を客観視した、ときにはクスッとなる表現が織り交ぜられた文章にひかれるように、気づくと一気に読んでいた。
読後の感想としては、癌の種類が違うと、これほどまでに違うことの方が多いのだなということ(もちろん共通点もあるが)。
ある程度想定していたことだが、年齢も違えば、進行の速さ、症状も違ってくる。
私の母は75歳という高齢で白血病を発症したが、治療が効けば2〜3年は持つだろうと言われた。実際には、高齢のため抗がん剤は体力が持たないだろうと選択肢から外され、最初は弱い薬からスタートした。
最初は効いていた薬も途中から効かなくなったり、薬を変えたり、それでも効かなくて強い薬に挑戦したりを繰り返して、一年半ほどで逝ってしまった。
母は最後まで治療を諦めなかった。医師から提示される選択肢に、全て
「やってみたいです」
と前向きに向き合った。
残されるであろう子や孫に、自分が癌に立ち向かった姿を見せたかったのだ。
しかし筆者は
と緩和ケアを選んだ。
逃げてばかりの逃病記と書かれていたが、そうするしかなかった筆者の胸中を思うと胸がつぶれそうになった。余命宣告されてなお地獄を選ぶ必要はどこにもないと思う。
母にも、逃げるという選択肢も選んでいいんだよ、十分がんばったよと教えてあげたかったな。壮絶な闘病記を読み進むにつれ、その思いは強くなった。
まさに言い得て妙で、ベッドの中でうずくまっていた母の姿が思い出された。
受けている作者自身もよく分からなかったという緩和ケア。薬の飲み方や装置の使い方のコツなど、ちょっとしたことでも、苦しみが緩和されるなら積極的に利用したいものだ。自分の不調と向き合ってくれて、試行錯誤してくれる人たちに囲まれているのは、どんなにか心強かったことかと思う。
自分がそういう事態と向き合わざるを得なかったときに、覚えておこうと思う。そういう運命を引き当てちゃったら、最大限に甘えてもいいんだと。最期にそれくらいしてもバチは当たらないと思う。
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