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借金309万の36歳童貞が初めて将棋大会に出場しました

2月某日、私は生まれて初めて将棋大会に出場しました。
私は現在借金が309万あります。手取りは20万です。

でも、夢があった。
たった一度も試した事のない夢が。
知るのが怖かった......
自分の限界を...本当の身の丈を知ってしまったら何を支えに生きていけばいい?
きっと、耐えられない。
それでも、私は将棋が好きだ。たとえプロになれなかったとしても、それは変わらない。

前日の夜、気の遠くなるような試行錯誤を繰り返し完成させたオリジナルの戦法を復習した。朝には詰将棋を解き軽くウォーミングアップ。
準備万全。自信はある。この戦法なら序盤でそこまで悪くなることはない。
中終盤の読み合いでは私は負けない。
怖いのは私の知らない序盤でのハメ手にハマってしまい大差をつけられてしまうこと。
だから編み出したのだ。超攻撃型右四間飛車。とにかく先に仕掛ける。
まずは指し慣れた、想定した形に持っていく。

そんなことを考えながら、会場まで運転すること40分。(遠いよ、ガソリンが、、、)
開始40分以上前に会場に着き、受付を済ませる。受付と言っても小さな大会なので簡単なものだ。
私「おはようございます。社会の底辺です」
私は緊張した声で受付にいた50代くらの男性にそう告げた。
受付の男性「おはようございます。社会の底辺さんね。それでは参加費の方をお願いします」
受付の男性は名前が書いてある一覧にマーカーを引き、1500円を徴収した。
今の私に1500円はかなり痛いが、昼食にお弁当がもらえると考えれば実質参加費は1000円だ。
1000円で一日楽しめるなら、趣味としてはいい趣味だ。

受付男性「社会の底辺さん初めて見る顔だけど、A級でいいんですよね?今まで大会に参加したことは?棋力はどれくらいですか?」
この大会はA級(段位者)とB級(級位者)に分かれており、私はもちろんA級で申し込んだのだ。
私「あ、あの、、、大会は初めてなんですが将棋ウォーズでは六段です
これが一番わかりやすいだろう。将棋をやっている者で将棋ウォーズを知らない人はいないだろう。
このくらいの軽い気持ちでそう答えたのだが、受付男性は大変驚かれた。
受付男性「え、六段!? それはすごいですね。ダークホースだ。地元は○○市?」
私「ええ、そうです。」
私が大分早く会場入りしたこともあり、それから受付のこの男性と結構話した。とても感じのいい物腰が柔らかい男性でコミュ障な私でも話しやすかった。彼は私が将棋ウォーズ六段でありながら大会に今まで一度も出たことがないことに大変驚かれ、勿体ないと何度も言ってくれた。

大会が行われる部屋に入ると、長机に盤と駒、対局時計が整然と置かれており、私は高揚した。
私より先に来ていたのは年配の男性2人だけだった。その2人は知り合いなのか楽しそうに話していた。
席に着き、心を落ち着かせて開始を待つ。ぞろぞろと人が入って来る。参加者は私くらいのおっさんがやはり多いが、小学生くらいの子もかなり多かった。ちなみに高校生以下は参加費1000円なので羨ましい。
これは今回大会に参加して一番驚いたことなのだが、女性がいない。たったの一人もいなかったのだ。
参加者かなーと思ったら、子供の付き添いであり、参加者としては見事にゼロ。そんなことある?
まぁ、小さな大会で参加者が40人くらいなのでそんなものなのかもしれない。(5~6人はいてもいいようなもんだが)
多くの人が顔見知りのようで、あちらこちらで楽しそうに話したり練習将棋が始まっていた。
定刻となり、受付男性が始まりを告げる。どうやらこの受付男性が今日の司会進行のようだ。
大会の流れとしては午前に予選リーグを行い、午後に本線トーナメント。
まず4人一組の予選リーグを行い、半数が脱落する。2勝1敗以上の成績なら本線出場だ。ちなみにB級(級位者)で参加する人は数人しかおらず、総当たりのリーグ戦をしていた。

私のグループは小学校高学年くらいの子供と30代くらいの男性2名。
私の記念すべき大会デビュー戦の相手はこの小学生となった。
小学生「どうぞ」 
小学生は私の前にポンッと王様を差し出して、そう言ったのだ。
将棋のルールというか習わしとして目上の人が王様を持つことになっている。下手は玉将。
私「あ、ありがとう」
それが私とこの小学生のファーストコンタクト。
私は大橋流で駒を並べ始める。小学生もそれに合わせて非常に慣れた手つきで駒を並べる。私も事前に練習していたので人差し指と中指で何とか駒を挟んでそれらしく並べたが、どう見ても小学生の手つきの方が慣れていて駒音も高く響き渡っていた。
私(やっべ、この小学生めちゃくちゃ強そうなんだが、、、でも大会に出ているってことは奨励会員ではないよな)
奨励会員とはプロを目指すプロの卵である。彼らはアマの大会に出ることを禁じられている。
私(まあ、奨励会員でない時点で私が負けることはないな)
と言い聞かせ、自分を落ち着かせる。間違っても負けることは許されていない。私には将棋しかないのだ。
そんなことを考えていたら、小学生はこう言った。
小学生「振ってください」
私「あ、はい」
私は生まれて初めて振り駒というものをした。振り駒とは歩を5枚振って、その裏表の結果で先後を決めるものだ。
振り駒の結果は歩が1枚、と金が4枚。私は後手である。
正直、ショックだった。アマチュア間では先後はそこまで結果に影響しないのだが私の戦法は先手の方がやりやすい。
準備が整ったところで、受付男性が「それでは始めてください」と言って大会が始まった。
さぁ、戦闘開始だ!!!

「よろしくお願いします!」と私は羽生善治並に深々と頭を下げた。小学生も「よろしくお願いします」とぺこり。
ここで事件が起きてしまう。(おやじ、早いよ。始まったばかりで事件なんて起きようがないだろ)
私は集中力を極限まで高め、小学生の一手を待っていたのだ。
そしたら、、、

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