書評:『サピエンス全史(上)』(ユヴァル・ノア・ハラリ,柴田裕之)その6

中だるみ部分、行けるところまで行きます。

第7章。書記体系の発明。文字ができて、色々なものがDNA以外に残せるようになってよかった。自然言語が注目されているが、税制とか数字とか無意味な言語が面白く、そっちも大事だ、と言う話。

第8章。想像上のヒエラルキーと差別。「生物学的に考えて白人の方が黒人よりも優れている」という擬似相関を用いたまことしやかなヒエラルキーの正当化が近代まかり通っていたらしい。「それって神話だよね」と言う話。

これも、人間の想像力の産物だ。例えば、南アフリカのアパルトヘイトは、しばらく続いていた。今でもチェコの西の方に行くと、ネオナチがいて、アジア人がホテルで差別される事も散見する。

今、正しいとされる社会規範も、今後正しいとは限らない。

昔はブラック企業とか言われなかった。男女差別の話は、するまでもない。

第3部に入り、人類の統一。

第9章。統一に向かう世界。昔は大陸で文化が別れていて互いに連絡がなかったけれども、今ではどの文化も互いに影響しあい、お互いに影響受けているよねと言う話。チャリオットが中東でも中国でもあるなど、古代から、地域は互いに影響し、統一した人類に向かっているよね。ガラパゴスなサピエンスはもういないよね、と言う話。

タスマニア人を絶滅させるし、スペイン人が南米の現地人を殺しまくるし、米国ではインディアンを迫害するし、ほんとサピエンスひどいよね。

第10章。最強の征服者、貨幣。物々交換やっていると交換レートに限界がでてくるので貨幣が便利。貨幣には、貝殻、収容所のタバコなど、色々出てくる。実用には使えない金属である金とか、しまいには、なんの価値もない紙幣が出てきて、すごいよね。みんなが信じているから貨幣は貨幣なんだけど、米国嫌いな人が、喜んでドルは受け取るから、貨幣がもつ、征服能力ってすごいよね、貨幣は人類統一する力だよね、と言う話。確かに。

第11章。グローバル化を進める帝国のビジョン。帝国の定義は、(1)複数部族を束ねる、(2)拡張するために国境の概念を持たない、の二つ。わかりやすい。

トヨタは帝国じゃないけど、バークシャーハザウェイは帝国だ。トヨタには、自動車という国境があるが、バークシャーは完全なホールディングスだから会社を束ねる会社。国境なく拡大できる。小さくても帝国で、なんとかホールディングスは帝国だけど、大きくても単一事業だと帝国ではなく大国になる。

話が逸れた。本筋に戻すと、帝国は文化となり、そして滅びる。帝国滅びた後も、帝国がもたらした文化は残る。ローマが滅ぼしたスペインのヌマンティアという都市の例が出ている。ヌマンティアは、ローマ帝国に滅ぼされ、また独立してスペインになる。でも、スペインの言語はラテン語が訛ったものだ。何一つオリジナルのヌマンティアの文化は残っていない。ローマ帝国の文化は今でも残っているのだから、独立しようが何だろうが、人類は統一の方向に向かっているよね、というお話。

で、上巻が終わります。


感想。

上巻で残った印象は「ホモ・サピエンスは、史上最悪の外来種」ってこと。あと、「社会的な秩序たる正義は、時代で変わる。あんまり絶対的に信じていると、時代が変わるよな」の二つ。

下巻も読んだので、続きます。


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