書評:『武士の家計簿』(磯田 道史)

この本は、江戸末期から明治維新というパラダイムシフトの中で、江戸時代の貧乏士族がどう生きたのかを、家計簿から鮮明に描いていて、面白い。私の先祖は貧乏武士で、嫁は多分違うので、習慣の違いのルーツが分かって、自分の理解に役に立ちました。

武家では親戚付き合いをたくさんします。武士の給料は由緒で決まって実力で決まらない。家柄と少々の年功序列で、仕事が増えても給与はあまり上がりません(高給は基本ご先祖様なおかげ)。江戸詰めになると、経費は増え、赤字になる。江戸詰めになった武家のお金が足りなくなって、借金をする。しかし、下級武士には与信が無いので商人はお金を貸してくれない。なので、親戚から借金をする。親戚同士、与信を把握するために、子どもの節句等、親戚づきあいをたくさんし、互いの状況を把握する必要があった。男子がいないと御家取り潰しなので、養子縁組も盛ん。養子縁組は親戚が多いから、武士を続けていくには親戚付き合いが生命線。(町人は必要ないのでこんな無駄な事をしないし、親戚に金を貸さない)

私は、なんとなく正月に実家に帰る事にしていたのですが、そういうことは江戸時代の名残なんだなと思いました。

この本の家計簿の主は、加賀藩のCFO。貧乏武士がそろばん一つで生計を立て、CFOになり、明治時代の海軍で活躍する。由緒が正しい家ではないので、江戸詰めでお金がなくなり、家計が破綻。一念発起して、加賀藩のCFOが節約するために家計簿を付け出す。家計を立て直す。明治維新が起きて、明治時代にちょっとした高給取りに。明治時代の資産運用ものっていて興味深いし、参考になる。一家で軍人になったら、末っ子が戦死して悲しいなんていう一時代を書ききっていて、教養になるなと思いました。

『武士の家計簿』(磯田 道史)


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