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書評:『伝わる短い英語―アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア 政府公認 新しい世界基準Plain English』(浅井 満知子)

なんとなく気になってこの一冊を読んだ。

日本で間違って英会話教室に行って、プライベートレッスンじゃないものを選んだ時の違和感といえば、この本に書いてあることだらけである。日本語と英語は話し方が違うのに、日本語の文法で英語を喋る輩が多すぎる。そういうのを矯正するためにこの本は非常によろしいと思う。

appleのスティーブ・ジョブスのWWDCは非常にわかりやすい。字幕も翻訳もなしにわかるので、自分が賢くなったように勘違いするが、それは違う。すごいのは、私ではなくスティーブ・ジョブスなのである。わかりやすい単語と文法で英語を話しているのがスティーブ・ジョブスなのである。そして、それは、明らかに訓練された人なのである。

ジョブスに限らず、米国の偉人は英語がうまい。トランプの英語もわかりやすいし、オバマの英語もわかりやすい。というのは、小学生レベルの単語と文法で言いたいことを言えるからだ。これをplain englishという分野で成り立っていることを知り、その具体をこの本で学んだ。


日本の受験英語教育環境で育った私は、大学で初めて帰国子女に会い、英語を添削してもらったことがあるが、その感想は、

「なんか、この辺が日本人の英語って感じなんですよねー」

である。

というのは、主語がなくて、受身系になっていて、さらに関係代名詞がいっぱいなのである。そういう文章って、あんまりコミュニケーションじゃ使わない。日本語にありがちな婉曲な言い回しや、遠回しのコミュニケーションというのは、もはや丁寧でもなく、わかりにくくて時間効率の悪い迷惑な意思疎通の手段である。もっと、要旨をシンプルにまとめる必要がある。

簡単にいうと、SVOという基本形で話をまとめろ、単語はフランス語系の外来語の英語ではなく、アングロサクソン系の短い英語に言い換えろ、ということ。さらに、文章は短く、冗長な無駄な言葉は取り除けという。

これを日本語で徹底的にさせるのが、戦略コンサルティングファームであると思う。ので、私はそういう教育を受けてきた。日本語でもSVOを気をつけるし、文章も短くする。ワンスライドワンメッセージだ。一文に二つ以上の言いたいことを設けることもない。文章も短くする。使う単語は、相手に合わせる。


これを英語でやってみると、なるほど、plain englishの方が断然に読みやすい。外国語である英語で見てみると、その違いが明らかである。

最近の英語のビジネスメールは短い。最近は、冗長なメールの文章は日本語でも迷惑だ。だから、このplain Englishの訓練を通じて、日本語をシンプルにすることは様々なことに役立つと私は思う。

最近、競争力を失っている職業といえば官僚と日銀であるように思える。彼らの文章を見ると、いかにもPlain Englishから程遠い。だから日銀文学などと呼ばれ、馬鹿にされている。政治家の日本語もそういった面から見ると下手だ。ちゃんとした日本語を話したのは、田中角栄ぐらいではないだろうか。

英語圏の国々は、公的な文書を全てPlain Englishに書き直すように規制をかけている。落ちぶれた日本の官僚システムや公的機関を立て直すためには、まずは、Plain Englishを見習って、日本語を立て直すところから始めたらどうだろうか。英語では、契約も法律もplain englishに書き換えているそうだし。

主語、述語、目的語のはっきりしない文章はクソである。詩人や小説家の書く鮮やかな日本語はともかく、日常の文章、日常の事務的な日本語は、分かりやすく書くように変えた方が良いと思う。

冗長ないい周りから初めて、それが高尚な英語だと思っているやつはクソである。それが、IRであれば、それは、恥でしかない。

Simple is best. 

である

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