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ビジネス書評

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2018年3月の記事一覧

書評:『ユリウス・カエサル ルビコン以前──ローマ人の物語[電子版]IV』(塩野 七生)



ユリウス・カエサルとは、天才であり、優れたリーダーである。天才だけに模倣の対象にしてはならない。しかし、彼の行動は論理的でもあり、人々の心理もついているので、彼の人生を学ぶことで、多くの教訓を得られる。

カエサルの職業人生は40歳にして始まる。それより前は、借金漬けの女たらしである。借金を重ね、人妻に高価な贈り物をして、人妻に手を出しているだけである。人妻に手を出すではなく、人妻に手を出しま

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書評:『勝者の混迷──ローマ人の物語[電子版]III』(塩野 七生)



目次がシンプルな第3巻。政治というものを理解する上では、非常に興味深いと思いました。

前巻にて、ハンニバルという外敵が大暴れして、スキピオ・アフリカヌスによって駆除され、いつの間にか強くなったローマは、地中海の覇権を握りましたとさ。そのあとは、混迷の時代です。

色々社会の制度を変えた結果、今までどうでもよかったローマ市民権がすごくお得なものになり、ローマ市民なのか、同盟国なのかが重要になり

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書評:『ハンニバル戦記──ローマ人の物語II』(塩野 七生)



ハンニバル。この人物の物語は非常に面白い。

私のように教科書で世界史を1秒もやった記憶がない(おそらく、少しはあるのだろうがやったことさえ忘れている)人間が、この詳細な物語とともに世界史を学んでいたのであれば、コーエーの歴史シミュレーションゲームで深入りした『三国志』と同じように強い興味を持っただろうと思う。

ハンニバルの物語が、第二巻である。

カタルゴ、今のチュニジアを中心にした北部ア

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書評:『ローマは一日にして成らず──ローマ人の物語[電子版]I』(塩野 七生)



ギリシア人の物語が読みたかったんですが、IIIはまだ出ていないので、ローマの方を読むことにしました。ギリシア人の話より、こちらの話は随分と濃い気がしまして、こっちの本が元気な時に書かれたんだろうなと思いました。

ローマの誕生から、イタリアの統一ぐらいまでがこの本の範囲。勉強になります。私は、今まで政治というのを理解せずに生きてきましたが、このローマ人の物語などを読むと、政治というのは大衆の人

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補稿:第二次世界大戦とレーダー

『ロケット・ササキ』(大西康之)を読んでいて、本編とは関係なく一つ良い知識を得たことがあったので、補っておく。

第二次世界大戦時、「ミッドウェー海戦で日本がアメリカに負けたのは、八木アンテナを作っておきながら、その技術の意味がわからず使わなかった日本の先見性がなかったからだ」という話がまことしやかに語られることが多く、私も信じてしまっていたが、事実は違いそうだ。

佐々木正さんはスーパーエンジニ

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書評:『ロケット・ササキ』(大西康之)



孫正義さんの恩人であり、スティーブ・ジョブスの恩人であるという嘘くさいタイトルが本当なのが、シャープの伝説的なエンジニアだった佐々木正さんである。その人生が描かれた本。先日亡くなられたそうだ。RIP

純粋なシャープの方なのかと思っていたが全然違う。佐々木さんは一言で言えば、頭の良いスーパーエリートである。戦中・戦後の環境が、そのエリートをさらに育てる環境も整っていた。

佐々木さんは日本の商

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