過激ウッディ・「圧」のやり過ぎ分からない

先日、『ムーPLUS』の企画で短歌の選評をさせてもらいました。

オカルト恋愛をテーマにした短歌という一風変わった企画ですが、高度な作品が多く見応えがありました。

https://muplus.jp/n/nb1aaa7b95887


と言っても私は短歌のことはちゃんと勉強したこともなく、ちゃんと作って発表したこともありはしません。一方的に選評するのも偉そうだなと思ったので私も短歌を作って発表してみることにしました。しかしまだ短歌だけでお楽しみいただけるほどの実力があるかは定かでないので最後の一首は文章も書きました。


【短歌コーナー】


拾ったがさほどいいとは思わない紅葉狩りにも適性がある


野菜しか食べない人もカルピスは飲むしギトギトのチャーハンを出す


絶対に殺すと決意したもののソーラン節は義務的にやる


泥棒が盗んだアロマディフューザーそれでも人は癒されるのか


葬式でシーと何度も言われてもそれがディズニーとは思わない


村八分の老婆の家の変な水マルチと知ってたけど黙ってた


けん玉のプロを目指して渡米した カミオカンデに見切りをつけて


DJがどうもこちらに来るようだ やっと無心になれていたのに


AIの政府に派遣されたロボ心があるし生麩も食べる


我々の常識ではひどく痩せている猿が激しい威嚇をしてる


錯覚で矢沢が毎日家に来るタオルとCD通販で買う


悲惨だがマシな部類のいやがらせ汚れたミッキー毎日貰う


飽きたのが一目でわかる腐敗したような生きているようなプードル



【短歌と文章】


献本を頼まれ母に送ったがコメント分からなすぎてthank you


画像2


高校に入学したての時に、親睦を深める合宿のような行事があり学校法人が所有する飛騨高山の別荘に泊まった。確か、二泊三日だったと思う。

合宿で何をするのかというと、高山を見学して研究レポートの発表、ディベード会、テニスの大会などである。あらかじめプログラムが設定されているので中々慌しい。その上、入学したてなので周りは見知らない人間ばかり、慣れない環境、過密な予定、苦手な団体行動、高山を面学すればドデカ一眼レフカメラを持ったおじさんが後ろからついてくる(毎年付いてくる恒例の盗撮犯罪者と聞いた)など、ストレス因子があまりに多すぎて風呂上がりに気絶した。

単純に体力がない。

空気が読めない。

そもそも、何をやっているのか全く意味がわからない。

こんなことではいけないんだよと思ったが、風呂に入ってる女子の会話が意味が分からないし終わらないから風呂を上がるタイミングが掴めなくて43度の熱湯に浸かりすぎて気絶した。直後、じわじわブラックアウトする視界の端で、古文の教員が山賊のように私の両足を持って引きずるのを目撃してからはなんだかどうでもよくなってしまった。諦めた。もうこの後は全てご自由にどうぞとなった。

その後も行動指針が読み取れずにはぐれた。移動のタイミングがわからず丸太を切り倒したものしかない広場(としか言いようが本当にないなんでもない岐阜によくある広場)に取り残されたりしたが、こちとらは両足を持って廊下を引きづられているので本当になんでもないという感じであった。

最終日前日(といってもたった二泊だが、高校生なりたての身には長い旅のように感じた)の夜、丸木を並べて建築したウッディな談話用のロビーに学生が全部集められ、異様に事細かいプログラムにも本件についてはなんら内容の記載がなく又しても途方に暮れているとにわかに照明がムーディーな感じとなり、またキャンドルに火が灯されて全ての輪郭がファジーとなり空間のウッディがますますより一層誇張された。

もはや、その、なんですか?ウイスキーの「スモーキー」とか表現されるうちの味ではない方。その空間的、イマジネーション素粒子的なスモーキーが空間に並々と豪勢に注ぎ込まれ、こういったジャジーですとか、シャビィですとか、分かりませんがひとえに落ち着いたバーカウンターであるような雰囲気は、これまでの日程に張り巡らされた遊びの精神を許容しない徹底管理・人権剥奪思想とは完全に対立する理念である為に、私としては

「うーん、なんともムーディーでございます」

などといって惚けていらっしゃるような面持ちでは到底あり得ず、童話ピノキオにおいて信じられないような夢の広がりの入り口を見せかけて子供らを一斉にハンティングした恐ろしい施設に連れ込まれたような、毒を飲ませられるのではないかという疑念にとらわれ一人脱出経路を模索していると教師が各々に手のひらほどの紙片を配布し始めた。

そうして、部屋の片隅からは子供のすすり泣きが聞こえ始めた。

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