「ガルマは死んだ」構文でわかる、誰にでも理解できる文章の書き方


私が文章を書く時にとても役立っているのが、大学受験に際して学んだ「小論文の書き方」です。

小論文と言えば、受験のオマケのようなイメージがあるかもしれません。

言ってしまえば小学生の時に書かされた読書感想文や作文の延長


しかし冷静になって考えてみると、「感想」とは一体なんだったのか。


そもそも感想を書く為には何かしらの視点に立脚する必要があるにも関わらず、個人の感想を述べてはならない処罰のような労役感。

空気を読んで書かれていない要求をそれとなく、あざとくならない程度に推測し、大人が求める想像の域を超えてこない子供らしさを表現するという高プレッシャー重労働の割に達成感もほぼ無しという最悪の無賃接待労働をさせられた経験から得るものが少ないイメージがあるかもしれません。

しかし、それらは感情が希薄な単純労働者を量産するための時代に即さない教育の弊害によるものなので、まずはそういった苦渋滴る最悪のイメージを何もかも忘れてしまうことが肝心です。

一旦全てを忘れてください。

脳内から義務教育課程における「作文」のイメージを全て消し去るところから話が始まります。

今すぐにイメージを消すといってもなかなか難しいところがあると思いますので、
消し去るイメージの補助として、以下教育機関の代表に謝罪をして頂きます。

※フィクションです※


なんか文部科学省などのなんかすごい偉い人

「全ては意味のない茶番でした。

深く物事を考えず、文句も言わずに与えられたスズメの涙ほどの給料を有難がり

何の疑問も持たずに支持された額を当たり前のように納税する国民を量産する為に、個人の幸福には結びつかないつまらない教育を長年にわたりして参りました。

反省しております。何の意味もなかった。

あろうことか、子供に無言の圧力をかけ、半ば強引に自らの選択であるように迫り、税制を無批判・手放しで賞賛する実にくだらない作文を書かせ税務署の壁などに張り出させるなどの、心ある大人としてあってはならない愚行に走って参りました。

全ては誤りでした。申し訳ございません」


※フィクションでした※



これでつまらない教育の弊害を消し去る準備ができましたでしょうか。
それでは、以下に小論文の書き方、またそこから発展させてあらゆる文章を書く為に役立つ基本的な構造についてを分かりやすく解説いたします。


【基本的な構造とは】


そもそも、文章を書くときに何から手をつけていいのか、どこから話を始めればいいのかという発端で困っているケースが多いのではないかと思います。
ここで役に立つのが小論文を構成する為の4つの枠組みです。

それは

⑴問題定義
⑵具体例
⑶考察
⑷結論

です。
これさえ押さえておけば、基本的にあらゆる文章が書けるはずです。

なぜなら文章とは常に書き手と読み手のコミュニケーションであって、これは本来言葉にはならないはずの人間という極めて複雑な総体の意図をシンプルに噛み砕き出力するためのフォーマットであるからです。

そもそも、ものを書く時に、例えばそれが大学のレポートであっても、結婚式のスピーチであっても、退職理由の手紙でも、主題を伝えていく為に重要なのは「全体の構造」です。もちろん構造に頼らずに文章を成立させることも可能ですが、とっても便利かつ汎用的なので知っておいて絶対に損はないと私は思っています。

文章を書く時に、まず出だしで詰まってしまってすぐに取りかかれないことが多い人にとっては特に便利なんじゃないかと思います。

なぜなら文章を書く前にまず「構造」を考えていくと、出だしの効果的な一文は最初に考え込まなくても全体の役割を考えていく過程で結果的に導き出せるものになるからです。

そこで、書き出しの一文を考える前に以下の四点を意識してみることにします。


⑴問題定義 視点・テーマの設定

⑵具体例 発見のあった出来事、エピソード

⑶考察 出来事を踏まえた思考の展開(飛躍・うねり)

⑷結論 設定した問題に対してどのような独自の立脚点を提示するのか


…これだとなんだか小難しくて頭に入っていかないので、もっと柔らかい感じに言い換えてみます


⑴ハイパーセルフ難癖タイム 「これやばくないですか?」発表会

⑵エピソードトークコーナー (※嘘松って言われない為には体験的な描写を織り込むと効果的である。うまく伝わればたとえ話でも全く問題ない。全部そうだが何をしてもOK)

⑶持論〜一人テレビタックル〜 ←話遮ってくる大槻教授などがいないので論じ放題

⑷伏線回収タイム 基本的には⑴を回収する場だが、話が盛り上がるのであればさらに大風呂敷を広げるだけ広げまくるなどの手口も有り


【問題定義とか言われても困るよ!!!】


いきなり「問題定義」とか言われても何のことやら分からずに混乱するかもしれません。「問題定義」とは文章全体における動機の発表コーナーのことです。

なぜ冒頭でいきなりそんなことをするのかというと、目的がなんなのかよく分からない内に話が始まってそのまま進んでいくと読み手がどうしたらいいか分からなくなり壮大な置いてきぼりを食らうからです。

やや野暮な感じがするかもしれませんが、慣れないうちは最初にズバッと目的を言い切ってしまうのが大変オススメです。というか、話者は主題を把握しているので野暮に感じる場合もあるかもしれませんが、読み手からすると寧ろ大変「粋」です。

例えば、家に光回線の訪問販売員が来たとして、よくあるパターンが

「NTTのものです。今回お知らせがあってきました」

などといって全体像をウヤムヤにして、なんとか話を聞かせようとする大変悪質な手口です。はっきり言ってしまうと、目的が明示されない文章はこれに近い。

上記の訪問販売員は手口がほぼ詐欺だと思いますが、「NTT」などの社会的信用のある名義を悪用しなんとかギリ詐欺を成立させています。例えば一個人の作文としても

「私の父は第99代内閣総理大臣の菅 義偉です。先日父がトイレに芋を詰まらせたといって朝から大騒ぎをしているので、なぜ芋がトイレに?!と思い駆けつけると、なんと厠で父が口から泡を吹いてほぼ死んでいるではありませんか。驚きました。だんだん、怖くなって母を呼びにいくと、母は満面の笑みで大量の芋をふかし続けているのです。この家は狂っている。ふと、仏壇に目を向けると、供物が全てビスコになっているではありませんか。その瞬間、全ての疑問は氷解し、一本の真実がライトアップされた牛久大仏のように孤立無援の私の胸中に突如現れたのでございます」

(※フィクションです)


くらいのネームバリュー的なヒキがあれば内容がこれくらい意味不明、脈絡皆無でも全然読めてしまいますが…毎回菅総理が冒頭に出てくる嘘松レポートを提出する訳にもいかないでしょうし、一般市民の我々は内容で勝負しましょう。


実は、効果的に問題定義を展開していく例として非常に分かりやすい構文があるので紹介します

それは

「ガルマは死んだ」構文


です。


【ガルマは死んだ構文とは?】


「機動戦士ガンダム」という有名なアニメがあります。

作中で主人公アムロ・レイが所属する連邦軍の敵対組織であるジオン軍を掌握するザビ家の青年が志半ばで戦死した際に、戦意高揚のために用いられたのが「ガルマ追悼演説」です。

これが問題定義の例としてもの有り得ないわかりやすさの構文なので以下に要約し部分的に引用します。


…私の弟、諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ!何故だ!?
諸君らはこの戦争を、対岸の火と見過ごしているのではないか!? 
ガルマは諸君らの甘い考えを自覚させる為に死んだ!この悲しみも、怒りも、忘れてはならない! 
それをガルマは、死を以て我々に示してくれた!
(中略)
我々は、この怒りを結集し!連邦軍に叩き付けて、初めて真の勝利を得る事が出来る!
…この勝利こそ、戦死者全てへの最大の慰めとなる!
国民よ!悲しみを怒りに変えて! 立てよ、国民よ!!
我らジオン公国々民こそ、選ばれた民である事を忘れないで欲しいのだ!
優良種たる我らこそ、人類を救い得るのである!!
ジーク・ジオン!!


【これが問題定義だ!】


引用した演説の目的は「我々は一丸となり戦意を高揚させ戦う必要がある」という意図をスムーズに最大限効果的に伝えることです。
だからといって、

えー、私達は今すごく頑張らなければいけない局面です。
みなさん大変だと思いますが、ここが頑張りどころですし、我々が正しいので頑張りましょう。

という伝え方では主旨が今ひとつ入ってこないというか、他人事。
へーあなたはそうなんですね。それで?となってしまいます。

これは、下手なスピーチでよくある「意図を伝えようとして意図をそのまま連呼している為に内容が伝わらない文章」です。

この場合伝えようとしている内容が「戦争へのモチベーション」という理由が明確でなければ通常やりたくない殺人行為ですから尚更伝え方には工夫が求められます。

【「ガルマは死んだ」構文】

そこで極めて効果的に用いられている文節が

「ガルマは死んだ。なぜだ!?」

なのです。

何か問題が発生した。それは、なぜか

ということをまず明らかにすることによって、伝えようとしている内容の発端となる「問い」が共有できる動機や結論に至るまでの筋道を聞き手が追体験できる為に、他人事という感覚がなくなり格段に話者の意図が伝わりやすくなります。私はこれを「ガルマが死んだ構文」と呼んでいます。簡単な小論文を書くときに出だしに困ったら、これをそのまま引用してしまえば非常に楽です。

例えば

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