安全・安心デンジャラス


人類にはかなり乱暴に分類すると2種類の種族があると思っている。

一つは繁殖種で、もう一方は毒キノコためし種だ。

繁殖種は分かりやすいからいいとして、毒きのこためし種が何をするのかというと誰も食べたことがない食べられるかどうか分からない毒キノコにチャレンジして死ぬ。或いは誰もやったことがない人体実験を自分で試したり、深海や宇宙に行ったりして概ね死ぬ。それでも一定の割合で毒きのこためし種はどこからか発生してくる。どれほど恐ろしくても、興味や好奇心が湧き上がると不思議と恐怖は霞んで気にならなくなってしまうということは誰にでもしばしばある。どんなコミュニティにも猛烈に面白くて猛烈にやばい人っていうのは一人くらいいたりするけど、大抵人気者だ。だって、面白いから。法で禁止されたドラッグに手を出す人も後を絶たない。だって、気になるから。この様に、人類は本日も危険回避よりもあるいは好奇心を優先して活動領域を無尽蔵に広げ発展しているし、地上のありとあらゆる食べられそうなものはありとあらゆる方法で食べ試みられている。

私は、常々自分が毒きのこためし種なのではないかと疑っている。何故なら、ごく稀に「なんでもいけそうなゾーン」という状態に突入することがあるからだ。そうなると、なんでもいけそうな感じでにわかに何かが活性化する。例えば、形の綺麗な下ろしたての石鹸を見て、いけそうだな…という感じになった経験がある人は多いんでないかと思う。そういうノリがハードにくる。黄熱電球とか、コンクリートとかが美味しそうに感じる。お腹がペコペコということはなくて、むしろ空腹は気にならない感じ。マテリアルの鮮度が先鋭化して高級な寿司屋のづけ塗りたてのまぐろの表面みたいにグリッターなシズルのようなそうでもないような感じの蠱惑的なムードを放ってくる。だからといってコンクリートが食べられないことは知っているので「よし、食べよう」とはならず、じゃあ何をするのかというと手近なところにある本を開いて、ページをパラパラとめくってみたりする。なんでかというとちょっといけそうないい感じの単語が次々と現れてデパ地下のようで楽しいからだ。

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