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小さな地域の大きな商社マン

【クリエイティブリーダーシップ特論レポート】
武蔵野美術大学
造形構想研究科造形構想専攻
クリエイティブリーダシップコース

7月20日(月)18:10-19:40
クリエイティブリーダシップ特論 第10回 白水高広さん

持続的な価値を提供し続ける

 地方と都市の格差はスマートフォンやインターネットの進化によって埋まりつつあるのかもしれないですが、やはり物理的な「モノ」というのは作られる場所(都市、地方)から集まってくる場所(都市)まで地域によって特色は様々です。そのような土地や流通など物理的なギャップのみならず、文化・伝統・ヒトなどの障害を「地域文化商社」によって可能な限り埋めたいという白水さんの思いを、今回の講演を通じて感じ取ることができました。ただモノの提供して技術を継承するだけにとどまらず、その背後にある歴史やストーリーなども一緒に提供する。これこそ白水さんの会社の価値だと思います。

 また私が注目すべき点と捉えたのが経済的な意義について話されていた点です。事業が成功している要素として、しっかりと地域経済にどう貢献できるかを考えていらっしゃるところにあると思います。伝統と経済は一見両立できないような相反する関係ですが、経済を回せない=自立が困難=文化の継承はできないという考えが根底にあります。日本では職人さんが、あるいは伝統に対して”お金儲け”をすることに対してネガティブなイメージがありますが、今回のようなお話しからも伝統を守るためにこそお金が必要という発想が必要なのかもしれません。「地域に利益を還元する仕組みを作り循環を回すことが重要」という言葉がとても印象に残りました。

過疎化と少子高齢化

 地域の過疎化と少子高齢化で、伝統が途絶えるという事態が実際に今の地方では起こっています。そしてうなぎの寝床がベースを置く福岡県八女市も調べてみたところ、日本創成会議・人口減少問題検討分科会による「消滅可能性都市」に定義されていました。(※東京都豊島区が消滅可能性があるとされ、少し前に話題になった推計データです)

 つまり何もしないと「人がいなくなり、文化・産業も廃れる」可能性が高いと考えられている場所です。

 白水さんが未来へ伝統をつなぐ事業を行うのと同時に、HP上の以下の内容がとても心に残りました。全ての伝統を全部次の世代につなぐのは難しいですが、現実的にできることを的確に捉え、しっかりそこまで考えている視野の広さこそ地域からも支持されているのだと思います。

ー略ー 地域文化を纏った商品やサービスが現代生活において成立したら、地域文化は残って行くし、そうでなければ淘汰されていくでしょう。
その判断はうなぎの寝床が決めることではなく、みなさんとしていくべきだと考えています。
そして、もし自然淘汰されていくと決まった文化も、しっかり映像や道具、写真や音声としてアーカイブしていく努力はしようと思います。


■白水高広
うなぎの寝床 代表取締役
1985年佐賀県生まれ、大分大学工学部福祉環境工学科建築コース卒業。福岡県南部・筑後地域の商品開発やブランディングを行う「九州ちくご元気計画」の主任推進員として経験を積む。任期を終え2012年7月にアンテナショップうなぎの寝床を立ち上げる。地域に足りない要素や機能を考え実装する地域文化商社を目指し活動しており、お店の運営、メーカー的側面、企画、制作、他地域との交流・交易など幅広く活動する。






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