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「笑い」の治癒力。

1970年代のことである。
ノーマン・カズンズは、「強直性脊椎炎(体内の細胞を結びつけるコラーゲンという繊維が分解されてしだいに身体が動かなくなる病気)」という難病にかかり、ついにほとんど全身が動かなくなってしまった。
「余命数か月」と診断された彼は、ある日。
病院を出てホテルの部屋に引っ越した。

ホテルへ向かう途中、彼は面白いビデオをどっさり借りた。
「どっきりカメラ」
「連続ホームコメディードラマ」
「風刺コメディー」
度が過ぎた強烈なコメディーに至るまで。
見つけられる限りの物を借り、ホテルの部屋でビデオを見続けて、その夜彼は笑いに笑った。
いつもなら全身を襲う酷い痛みはなりを潜め、カズンズは久しぶりに、まったく身体の痛みを感じずに数時間眠ることが出来た。
そして、また痛みが襲ってきた時は、別のビデオを見て笑うと、また眠ることが出来たという。

これは個人の感覚的な「感想」というだけではない。
カズンズは、こういった身体の変化を「赤血球沈降速度」で記録したそうだ。速度が速いのは、病気による炎症が起きて痛みが起こっているか、あるいは何かの感染症にかかっているときである。
カズンズがビデオを見るたびに、この速度は5ポイント以上下がっていた。
そして、ビデオを見続けた結果、最初は1時間に血沈100以上だったのが、最終的には80にまで減少したそうだ。

「大笑い」を10分続けると、身体の痛みが薬を飲まなくても治まり、二時間ほどぐっすり眠れる。(ノーマン・カズンズ)

そうして、ビデオを見ながら出来るだけ大きな声をあげて笑う「笑い療法」を自分で考案した実践したカズンズは、六か月後、医師たちをおどろかせることになった。
当時、治る見込みは500分の1と言われていた難病はすっかり治っていた。
消えてしまったのだ!

1979年に、カズンズは「笑いと治癒力」という本を出版し、それ以後「エンドルフィン」の作用について多くの研究がなされることになった。
「エンドルフィン」は、私たちが笑うと脳内で分泌される物質で、身体を落ち着かせる鎮静効果と、免疫力を活性化して身体を守る効果がある。

カズンズが自らの体験で発見したこの「笑いの治癒力」は、誰でも、いつでも、どこででも使うことが出来る。
仕事のストレスを抱えている時。
身体の痛みに苦しんでいる時。
日々、ニュースで感染者の人数が知らされる不安に苛まれる時。
この「笑いの治癒力」を試してみるのもいいかもしれない。








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