人類の秘宝、”トースター”について

「トースターは人類の秘宝だったんだ…」と朝ご飯を作るたびに思う。

今春より一人暮らししているのだが、起きるたびに「トースター……秘宝……」と思っている。何なら口に出して言っている。

一人暮らしを始めるにあたって、知人からホットサンドを買収した。
これで食パン生活も安泰だ、トースター機能は不要だなと思っていたのが間違いだった。

ホットサンドが悪いわけではない。むしろこのマシン、いや、彼は彼で素晴らしい朝食・間食を提供してくれる。

しかし、トースター(この記事では便宜上、”元彼”と呼ばせていただく)にはホットサンドが持たない特徴を持っている。

それが、「カリッ」という食感と”焦げ”という最強のスパイスだ。

ホットサンドにチーズを挟んで焼く。うまい。一定の「カリッ」と”焦げ”は確かにそこにある。

しかし、元彼がもたらすような「カリっ」と焦げはそこにはない。彼(ホットサンド)にはその力がないのだ。

”焦げ”を失って初めて”焦げ”の大切さに気付く……。発がん性だろうがなんでもいい。あの香ばしい風味はもう日常生活で会えなくなってしまった。

彼(ホットサンド)が作ってくれたパンを食べながら、元彼が作ってくれたパンを夢想する。

そう思ってしまう自分に罪悪感を感じる。彼に失礼すぎる。それでも心は、身体はそこにあった”焦げ”を求める……。

彼はいつも「できたよ」とホッカホカの笑顔でパンを出してくれる。牛乳を飲みながら、僕、いや、私は受け取り、「ありがとう」と作り笑いをする。

しかし、先日料理店で「トースターでカリカリに焼かれたパン」に出会ったしまったとき、私は心の根底でどこか感じていた”欲動”を突き動かされてしまった。

「ホットサンドじゃなくてトースターが作ってくれたパンを食べたい…」
そう心の中で思ってしまった。

私はこれからも作り笑いをしながら生きていくんだろうか。きっとこの罪悪感は、本当に大事なものを切り捨てた罰なのだろう。

ここで言いたいことは、トースターが秘宝であることは言うまでもない。

そしてもっと伝えたいことがもう一つある。
いきなりトースターとホットサンドを擬人化して夢想しだすような人間は、わりと危ないのでそっとしておいたほうがいいということだ。

おか

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