2023/10/10

異なるビジュアルノベルから共通点や臨界点、さらにその先の主張の結合を行う瞬間が好きだ。髄の端から走る凄烈な電気信号の感覚。そうしてそのまま、頭蓋の内側を叩くと、意識は大海原に遭難した漁船のように揺蕩い、快楽の嵐が降り注ぐ。予測不可能な電気信号の波に僕は揉まれ、そして、堕ちる。弄ばれる。刹那、僕の心と器(からだ)は切り離される。人体に備わった生命維持機能なのかはわからないが、本当に一瞬、世界が黒く塗りつぶされる。まるで人格そのものを作り替えられているようだ。そうして波に攫われた僕は、暗黒の瘴気に覆われた世界に一片の光を見る。
そうして、必死に藻掻くと、なかなか上手くいかない。そうだ、僕は水泳が大嫌いだったんだ。小学生の頃、余り得意ではなかった教師に頭から水中に顔を浸けられ、まるで水責めを受ける死刑囚のような気持ちだった。そうした走馬灯の様な揺らぎの後、僕はこの移動方法にもコツを掴み始める。段々と登っていき、水面下に浮かぶ一点の光に焦点が合わさる。そしてーーーー
そこにあるのは、ただの見慣れた天井であった。ロフトに寝床を敷いた、僕のいつもの、寝起き。そうして、無意識のうち、昨晩枕元に忍ばせておいたスマホを手に取り時間を見ると、僕の体は水車の規則正しいリズムのように、日常へと埋没する。あの光のなんたるかを忘れて。

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