見出し画像

ぴたぴた砂浜

 胃潰瘍のドロっとしたやつが目から零れ落ちる。
部屋は黄色く変色し始めて、足からはノミさんこんにちは。
明後日の方向を見てみると、セルロイドのアイリーンお人形さんが僕の瞳を見つめているよ。僕もお返しにと思って、彼女の瞳を見つめ返したら、彼女の瞳の中に映っている、僕の瞳が見えて、ちょっと目を凝らして見ると、そのまた中に映る彼女の瞳が見えちゃった。やや恥ずかしくなってしまったので、視線を足を戻すと、今度は芋虫さんゴロゴロお昼寝中でした。今は昼だったのだと気付く。
 昼夜の境目がパソコンのキーボードに吸い込まれてしまったものだから、どこに太陽があるのかわからなくなっちゃったの。でも、お月さんはいつでも僕の部屋の真ん中にいてくれるの。大好きお月さん。深夜に流すタイムリーなレコードからは、おじさんのいびきなんて聞こえてこなくて、ひたすらにかわいいものだけが脳に直接ダビングされるから、とても安心できちゃう。
 そうして見ていると、僕もいつの間にかフリフリのコスチュームに身を包んでいるから、魔法ってこの世にあるんだなぁってビックリしたの。
 お空だって飛ぶこともできちゃう!
お空の探検をしてると、色んなものと出会うんだ。イヤホンジャックのかわりにタバコを咥えた猫でしょ、夜空の星を撃ち抜くかわりに天の川銀河を横断する白馬でしょ、アンドロメダ星雲から家族旅行しにやってきた錦鯉に、それからそれから、あぁもう、ステキなものがありすぎて覚えきれない!
 でも頑張って書くよ。皆の見れない分も、僕は書く。だってそうしないと、寂しさで死んでしまう兎さんがやってきちゃうから......
血塗れに調理された、兎さんがお皿に盛り付けられちゃうから......僕は書かないといけない。
書いて、書いて、書いて、イヤホンジャックを臀に詰め込んで、そうして気付いたら夜が空けているから、それまでペンをイヤホンジャックのかわりに臀に詰め込むの。とっても痛いの。
 でも、白馬さんが声をかけてくれるんだ。
そこの耳のちぎれた兎さんの所まで運んであげましょうかって。
僕はその度に、いいよいいよと遠慮しちゃうんだけど、白馬さん優しいから、お駄賃はいらないよって、乗っけてくれるんだ。
しかも白馬さん凄いんだよ! 僕を乗せて翔けているときに、さらりと星を流してくれるの。
とってもキレイだねって、僕が喜ぶと、白馬さんこっちを振り向いてくれて、とっても笑顔なんだ。だから、白馬さんに乗せてもらっている時間、とっても好きなの。
終わりの時間は少し残念だけど、僕だって白馬さんみたいに流れ星をだして、皆を元気にしてあげようと思うの。白馬さんとっても速くて、もう兎さんのいる所に着いちゃった!
 兎さん探してみると、足が見えたよ!
僕は嬉しくなって、白馬さんのやっていたみたくステップを踏みながら歩くんだ。
でも、兎さん、頭とれちゃってるの。
耳を、自分で食べながら、口から血を出して、頭がとれちゃってるの。
僕はそこで、毎回泣いちゃうの。
兎さんにもお星さん、見せてあげたかったのに。
僕のお星さんだと、兎さん助けられないんだって思って、悲しくなるの。
だから、せめて兎さんを弔ってあげなきゃって思って、花で出来たフサフサな地面を掘ってあげるんだ。ざっく、ざっくって。
そうして、できた穴に兎さんを置いてあげると、兎さん、なんだかちょっとニッコリ笑ってくれるの。僕は兎さん生きているんだ! と思って、かけようとしていた花を放り投げるんだけど、そうすると兎さんが自分で土をかけ始めちゃうんだ。
僕が、どうして? って聞くと、兎さん嬉しそうな顔で、ありがとうって言ってくる。
兎さんは土の中が好きなの? って聞くと、
兎さん、口から丸々人参を吐き出して、僕にあげるよってお裾分けしてくれた。
その人参を、僕は兎さんが土をかぶっている間にひとくちかじるんだけど、そうすると、中からカラフルなお菓子が沢山出てきた!
フサフサの上に落ちたお菓子を拾ってみると、金平糖だったの。
僕の大好物だ! 兎さん、ありがとうって、言おうとするんだけど、兎さん、もうどこにも居なくなっちゃって、僕はそこでひとりで泣き出しちゃうんです。
 そうして気付くと、いつの間にか僕はふかふかの布団の中にいるんだ。
朝日が眩しいな〜って思って、手をかざしてみると、ポロって何かが落ちる。
それを手に取ってみると、ひとつだけ、兎さんの残してくれた金平糖がありました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?