歩く街と美しい世界-新世代を担うボカロP「歩く人」

はじめまして、サトウトシオです。
以前書いたピノキオピーのここ好きnoteから1年以上、なんかやろうぜって流れになったので僕も流れに乗って書きます。つまり #vocaPnote ってやつです。
それでは第1回、今回は「歩く人」さんについて語ります。

君は大人になっていく

まずはご紹介、粒のような電子音と雨音のように広がる多彩なサウンドが特徴のミクトロニカを得意とするボカロP「歩く人/Padestrian」さん。
その処女作からどうぞ。

君は大人になっていく
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https://nico.ms/sm29740598
YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=iSejJU4t0N0


手書き+αで作られた背景と同じくボカロPのキノシタさんによるミクさんのイラストで構成されたMV、歌詞にもある「強制スクロール」になぞらえた感じがすごく好きです。

君は大人になっていく 強制スクロールで

どう在ろうとしても人は年齢を重ねていくものです、そうなるとその人を取り巻く環境も強制スクロールのように移り変わっていくもので、心も身体も少年の頃に見た「大人」の姿へと変わってしまいます、君も僕も。

目の前の無限に出てくる
命題 葛藤
壊れてる無数のアイテムを
拾って 拾って

これ、直前の歌詞に出てきた「精巧なモノは 触れただけで形崩れて」という歌詞が活きてくる瞬間なんです。最高。

ねぇいつからそんなモノで首を絞めてるの
ねぇいつからこんなストーリーになってしまったの
ねぇいつからみんな一人になったの
ゲームの外も

『大人』になった経験のある人なら少なからず見に覚えのあるであろう息苦しさや理想と現実の乖離ですね、MVではここで立ち止まったミクさんを塗り潰すように歌詞が重なっていきます、そしてラスサビと同時に強制スクロールで歩いていたミクさんが引き返して出発点に戻っていくという構成です、この流れがすごく美しくて大好きな映像作品です。

はじめの剣は疾うに捨てた

次はこちら
リバイバル人生
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https://nico.ms/sm31888356
YouTube
https://youtu.be/zHod_wdQK-c
歩き続けるピクトグラムと実写を組み合わせたMV。
歩く人さんお得意のサウンド、思春期特有の無敵感とそれを振り返る無力な大人を上手くゲームに喩えた歌詞が深々と刺さる曲。

最低な作戦立てて突き進んできたの
フライング カンニング バグを利用してさ
最後の終焉なんて"なんだこんなものか"
半透明な体を見た

さっき言った「思春期特有の無敵感」そのものですよね、フライングやカンニングやバグを使って突き進んだ果てに自分が見えなくなるような感覚でしょうか。

衝撃を受けたその展開は
既にこの世にありふれたストーリで

そして振り返る無力な大人、自分の人生のリバイバルが「ありふれたストーリ」で、画一な景色が続くの「だろう」と予想する形で続けることでこれから先もそのストーリが続いていくんだろうなぁとぼんやり考えてしまいます、すごくわかる感覚。

どうせ笑っちゃうようなハッピーエンドが待ってる
はじめの剣は疾うに捨てた

この曲で一番刺さったポイントです、捨てたわけじゃないんですけど僕にも「はじめの剣」があったんですよ、リサイクルショップで1000円で購入したヤマハのアコースティックギターがその「はじめの剣」なんですけど、それを部屋の隅で眠らせてしまって長くなった時にこの曲に出会って、あぁもうリバイバル上映するほど積み重ねてしまった人生になってるんだなぁと心を揺さぶられました。
まぁ俺の人生は笑っちゃうようなハッピーエンドには程遠いですね、おい笑えよ。

適当に考えていた街の救い方
考えに考えていた死に際の言葉
適当に過ごしていた16歳の僕の日を
少しだけ悔やんだ

あーーーーーーーこれですよ(語彙力喪失)
リバイバル人生というタイトルがここに詰まっているんです、この曲のシメに相応しい歌詞です、街の救い方も死に際の言葉も結局「適当に過ごしていた」日々の一つで、それでも少しだけ悔やむんです、そこまで悪いものじゃないんです。

春最初の風が吹く前に

次行きましょう。
はるがこないまち
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https://nico.ms/sm31150011
YouTube
https://youtu.be/Gp3tQIVPFjY
歩く人さんの曲の雰囲気にピッタリなのえるさんのイラストが使われたMV。
春を「別れの季節」として綴られる歌詞がすっっっっっごく切なくてそこに乗せられる可愛らしい音と特徴的な調声、メリハリのある音の波がかなり上手く噛み合っています。

駆けだしたあなたの方へ
春最初の風が吹く前に
地図のどこにも描かれていない
「はるがこないまち」へ行こう

後から出てくる「別れの季節がやってこない 「はるがこないまち」へ行こう」という歌詞と並べると効いてくる歌詞ですね。
春=別れの季節という図式があるからこそ「はるがこないまち」に“あなた”と一緒に行こうという言葉の意味がグッときます。

食べてもなくならないキャンディ
何回でも来る桜前線
それと同じようなことでしょう
春は今年も この街へ

しかし「はるがこないまち」なんてものは存在しない、食べてもなくならないキャンディや何回でも来る桜前線と同じくあり得ないから「春は今年も この街へ」で歌が終わっていくんです、美しい構成ですね、何食って生きてたらこんな歌詞書けるんでしょうか。

ダイジェスト

あまり長くなりすぎるのも自分のやり方に反するのでここで「ここ好き」を一気にご紹介。

セグメントエラー
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https://nico.ms/sm30436318
YouTube
https://youtu.be/Ib9-GltYCv4
心地よい浮遊感のあるサウンドが特徴的なミクトロニカ。僕が歩く人さんを推すキッカケとなった曲。

鏡越しの自分と目が合う「この顔もよく知らないと」
言われたような部屋の中

新しい生活の中で変わっていく自分の中の何かにまで感じる孤独、自分にまで言われちゃどうしようもない。

嘘とバイナリ
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https://nico.ms/sm29930058
YouTube
https://youtu.be/w4-nUNq9EGk
歌われている歌詞と同じようで少し違う意味のもう一つの歌詞が同時に進んでいくMVが印象的な曲。某フォロワーに布教する時にトドメに投げつけようと思っていたら自分から聴きに行って勝手に沼落ちしていた曲。
 音 源 化 は ま だ で す か ?

今日は
幸せな嘘が連なった週刊誌と新発売のランチ買って
好きな音楽が鳴る頭の中で
そこは日常と空想と桃源郷が
混ざり合う世界さ
一昨日-昨日-〇〇-明日-明後日 は
嘘八百の週刊誌と ¥498(税込)を買って
頭から離れないメロディー
そこはReとlmが
混ざり合う世界さ!

表歌詞と裏歌詞です。
「幸せな嘘が連なった週刊誌」を「嘘八百の週刊誌」とバッサリ切り捨てるのも好きですし裏歌詞によく見られるエクスクラメーションマークから感じ取れるちょっとしたテンションの違いが心地良いとまで感じさせてくれます。

なぞなぞ
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https://nico.ms/sm30321305
YouTube
https://youtu.be/M6mg8OU_wmg
歩く人さんを知るキッカケになった曲。
短いながらも歩く人さんの良さが詰め込まれていて他愛もないことを美しく可愛く表現しています。
  音  源  化  は  ま  だ  で  す  か  ?  ?  ?

沈みきったその心に
水を振りまいてほしい

忘れていくその言葉を
どこか残してほしい
いつか見つけてほしい

これに関しては語る言葉を持ち合わせていません、感じてくださいこの良さを、この可愛さを。

雲を抜けた先の快晴で会おう

まだまだ語れますがそれは次に取っておくことにしましょう、最後の紹介です。

あいまいなエアライン
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https://nico.ms/sm32050816
YouTube
https://youtu.be/J_7q-Ah4xQU
最推し曲です。 音の量の緩急で一気に引き込みにくる恋の歌。 ナイトフライトで聴きたい曲ですね、というか飛行機乗るときは大体聴いてる。

言葉は空を切る 落ちていく
下手くそな紙飛行機の様で
広告の裏に想いを乗せて距離を競うよ

伝わらないし届かないですよねぇ言葉、それを「下手くそな紙飛行機」として表現しちゃうという視点がこの記事のタイトルにも含まれる「美しい世界」なんですよ、距離を競う相手もまたきっと下手くそな紙飛行機を投げるんでしょうね……

心は恋をする宙を舞う
風に踊るレジ袋みたいに
見えなくなるまで飛んで行ってしまう様な軽さだ

これです!!!!!!!!ツイッターでの僕を知る人なら薄々予想していたとは思いますがこれを語りたいがために第1回をこの人にしようと決めたんです!!!!!!!!!!!!!!
レジ袋が風に飛ばされてるだけの光景をここまで綺麗なものにしちゃう感性がヤバいんですよ、ポイ捨てされたレジ袋を恋をする心と並べちゃう発想は僕にはできないですね、しかも「見えなくなるまで飛んで行ってしまう様な軽さだ」と続けるセンスも最高です。 なんなんでしょうね、何食って生きてたらこんな歌詞書けるんでしょうね、2回目ですねこの記事で言うの。
この曲は結構「夜」なイメージなので街灯の下でレジ袋が風に吹かれてる様子を想像したんですけどそんなありふれた光景がここまでエモの塊になるとは、こういう作詞ができる人間でありたかった。

窓の外雲を抜けた先の快晴で会おう

ツイッターではいつもレジ袋のくだりばかり語っているんですけどこの歌詞も大好きです、飛行機が雲を抜けて雲海に出る瞬間って機内から見ていると結構綺麗な光景であることが多いんですよね、下手くそな紙飛行機やレジ袋でそんな綺麗な場所まで行って会おうという約束の言葉が本当に大好きなんです。

というわけで今回はここまで。
歩く人さんは現在ギタリストの166さんと組んでTHE LIQUID RAYというインスト楽曲を中心としたユニットでも活動していますのでそちらも是非聴いてください。

https://linkco.re/YN8Qc5gp

歩く人(PAdestrian)/THE LIQUID RAY
niconicoマイリス(歩く人)
https://www.nicovideo.jp/mylist/57139778
YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCiC39EEYn6DRi1nVd93eX7w

1stアルバム「qinema」は残念ながらCD版が在庫切れ中のようでDL版のみ販売中!
こちらも是非お手に取ってください!

それでは、次があればお会いしましょう。
  #vocanote #vocaPnote