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ブラック企業とダーク企業

社員を苦しめる会社

『ブラック企業』という言葉があります。
社員に膨大な仕事量を課してその上残業代を払わない会社、または不当な労働の強制や違法行為、パワハラ等が日常化している会社です。
それは基本的に仕事の「量的」な面で理不尽なことを社員に強いていると言えます。

これに対し最近は仕事の「質的」な面で理不尽なことを社員に強いる会社が目立ってきています。
私はそれを『ダーク企業』と呼びます。

『ブラック企業』は白か黒か、〇か✖かという判断で、客観性があります。
ですが『ダーク企業』は違います。
「じゃあ、グレーか?」ということではなく、しかも『ホワイト企業』の中にも『ダーク企業』は存在するのです。

『ダーク企業』とは?

『ダーク企業』のイメージはその名の通り『闇』です。
闇が示す奥行き感は時間軸を指します。
向かう先が闇、つまり「お先真っ暗」という意味です。
『ダーク企業』に勤めることは自分の将来に希望が持てないということなのです。

出世や給料アップを期待はしていない、別に仕事にやりがいなんか感じていないという人は昔からいます。
ある意味普通の人です。
それに多少仕事が辛かったとしても頑張ればコツが身に付いてきて、普通は辛くなくなっていくものですよね。

『ダーク企業』に勤める人には将来が今と変わらず辛いままのように思えます。
いや、間違いなく辛いままです。
「将来もずっと辛いままだ」という思いを社員に抱かせ続ける会社が『ダーク企業』なのです。

疲れたリーマン

『ダーク企業』ではどんなことが起きている?

なぜ『ダーク企業』では「将来もずっと辛いままだ」と思えるのでしょうか?
それは「辛い」と感じさせるようなことが仕事に織り込まれていて、辛さがずっと付きまとうからです。

例えば「残業を無くそう」なんていう取り組み。
さほど辛くないボリュームなので今まではサービス残業でも気にしませんが、どうしてもある程度は残業が生じてしまうとします。
それを何が何でも無くそうとすればどうでしょう?
仕事の効率化を徹底すれば実現は可能ですが、マイペースでやっていた仕事をスピードアップするのは相当苦しいことです。
なぜなら絶対的に課せられている仕事量をなるべく少ないストレスでこなすには、マイペースでやる方が本人にとって合理的だからです。

本来なら仕事のボリュームを見直したり仕事の仕組みを作り直すことが会社に求められて然るべきなのですが、まず会社はそんなことはしません。
「さあ、早く退社してくださーい!」と指示が飛び、照明が消えてPCが強制的にログオフされる状況は、おそらくこの先ずっと続きます。

「定時までに終わるのも仕事のうちだ」という意見もあるでしょう。
ですが今まで意識しなくてよかった「定時」を目指して一層頑張らなくてはならなくなった分の代償は支払われません。

他にも「スキルアップ研修」「成功事例発表会」などが増えてきて、従来の仕事を圧迫するなどということも、自称「進んだ会社」では近年増えているようです。
「嫌だな~」「意味ねーよな~」「あー、期限が迫るー!」と考えることが今までより圧倒的に増えてきていますよね。
悪いことではないものの社員には決して有難くなく、今後もずっと続く「辛さ」が広がりつつあります。
「ずーっと胃がキリキリする状態が続くんだろうなぁ」という思いがサラリーマンの心を傷つけていきます。

なぜ『ダーク企業』は生まれるのか?

例えば「残業削減」のブームはどうして起きてきたのでしょうか?
大きくは二つです。
①単純に人件費削減のため
➁ポジティブな波及効果を期待するもの

①は新手の不当労働です。
今までと同じ量の仕事を短い時間で終えろと言うのですから、奴隷に鞭を打つ行為と同じです。

『ダーク企業』らしい点は➁に表れています。
「会社に対してより一層の貢献をしようとするならば生産性を上げよう」
「与えられた時間で終えるようにするのが本当の仕事だ」
「期待を超える結果を出してこそ優秀なビジネスパーソンだ」
「学びの中にこそ成長はあるので、個々人で学び成長していかなければならない」
いかにもな美辞麗句を並べて社員を今まで以上に働かせようとします。

➁の問題は、それの何が悪いのか現代の日本人にはよく認識できない点です。
長すぎる不況の間に私たちは「模範的サラリーマン」像に慣らされてしまいました。そうでなければ生きていてはいけないというくらい、社会の隅々までこの価値観が受け入れられているのです。
現状を抜け出したいポジティブ思考の人や発想力のない経営者たちが安易な成功術に飛びついたのが始まりだと思いますが、それが今では下々の私たちまで嫌々付き合わせるようになってきています。

企業の「ダーク化」は、将来の出世を目指していない社員に対して業務改善や生産性向上への動機付けを行う必要性を、企業トップが感じていないのが要因の一つでしょう。
『働き方改革』というスローガンに乗って「何かカッコいいことをしてみたい」という経営者や人事担当者の虚栄心も強く作用しています。

「前向きなことはいいことだ~♪」とばかりにサラリーマンとしてのスキルアップに全力を尽くすよう社員たちに仕向けることが、企業トップの「お仲間」の間でのブームになっているのです。

偉そうなリーマン

職場のダーク化にはどう対処すればいい?

企業のトップが自社のダーク化にかぶれ始めれば、もう誰も止めることはできません。
一見良いことに思えますから自分でブレーキは踏めないのです。
トップが変わっても会社の方針は変わらないでしょう。ダーク化のDNAは社風にしっかり取り込まれてしまい、方針が変わることはありません。
くだらない取り組みが社員を苦しめ、モチベーションを下げ、経営判断をも狂わすということにいつか気付く日まで。

それまで社員のストレスは続きます。
それは耐え難いものです。いわゆる「クソどうでもいい仕事」に付き合わせられながら、大切な人生を消費していくのです。

そうした人生から逃れる方法は二つ。
①なるべく仕事から逃げて、心を平静に保つ。
➁悪いウィルスに感染した会社から早く逃げる。

私は長く①で時間を稼いでチャンスを待ち、予想していた早期退職募集がかかった時迷わず➁を選択しました。
生きていく方法は①の時間のうちに準備を始めていました。
十分な準備はできませんでしたが、コロナ禍でかえって新たなチャンスを掴めると期待しています。

皆さん、会社が理不尽なことを社員に要求するようになった時、会社の方針に付いて行けないなと感じた時、それはあなたが悪いとは限りません。
会社が悪い病気にかかっているのかもしれないのです。
英雄になろうとして組織改革に乗り出すのもいいですが、沈む船から早く逃げ出すのも賢いやり方ですよ。

案の定、今回は長い文章になってしまいました。
重い内容なので仕方ないですよね。
ここまで読んでくださった方、どうもありがとうございました。
皆さんのお悩みがこれで少しでも解消されることを期待しつつ、今回はここまでとしますね。

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