小千谷の闘牛「角突き」観戦記
新潟県の小千谷市内で「角突き」という闘牛が伝統催事として行われており、東京からのツアーがあると知って、亭主と一緒に参加しました。団体旅行に加わるなんて、学生時代の海外旅行以来ではないかしらん。でも観戦チケットを取ったり、駅からの足を確保したりせずにすむのだから、いたって楽ちん。
当日は雨でしたが、大型バスで山中の会場へ。道路っ端に、牛たちがおとなーしくつながれており、これから戦うぞという猛々(たけだけ)しさは皆無。これで大丈夫かいなと思いつつ、取り組み表をもらって観戦席に着くと、もう最初の一番が始まっていました。
取り組みは若い牛さんから順番に進み、それぞれ持ち主に手綱を引かれて、一頭ずつ登場するのだけれど、出てきても、まだおとなしい。丸い闘牛場を一周してから、揃いの法被を着た勢子さんたちが手綱を受け取り、対戦相手と向き合わせます。
牛さんの心の声としては「俺って平和主義なんだけどなー。こういうの向かないんだよ。でも、わざわざ来たんだしなー。しょんねえ、ちょっとやるべか」という感じ。小千谷市内の牛もいるけれど、甲府とか只見の牛さんもいて、トラックで「ドナドナ」してきたんだろうなと思う。
でも勢子さんたちが角を突き合わさせて、大声をかけたり、手を叩いたりしてハッパをかけると、牛さんも力を込めて押し合い始める。特に雨で足元の泥がぬかるんで、蹄が滑る。ずるずるとフェンスまで押される牛もいるけれど、押されっぱなしではなく、押し返したり、なかなかの見もの。
小千谷の闘牛は勝負をつけないのが特徴で、かならず引き分けで終わらせる。大将みたいな人が加減を見極めて合図を送ると、ひとりの勢子さんが牛の後ろ足に縄をかけ、ほかの勢子さんたちが牛の首に取りついて、鼻に指を突っ込む。牛は鼻の中が急所だそうで、それで大人しくなるとか。どの勝負も5分くらい。
牛によっては「やれって言うから、やったのにさー。もっとやらせろよー」ってのもいるし、「まあ、こんなとこだな。あー、ひと仕事すんだわ」ってな態度のヤツもいる。いずれにせよ、なかなかの迫力。勢子さんたちが、いっせいに二頭を引き離すのも、見ていて力が入ります。
会場の近くに、生徒十数人という小さな小学校があって、そこの子供たちが飼っている牛太郎(ぎゅうたろう)も出場。子供たち全員が、揃いの法被姿で応援に来ていて、荒々しい闘牛場の中で、なごむ感じでした。
取り組みが進むにつれて、ベテランが登場。百戦錬磨という感じで、登場する前から「モーモー」言ってて、登場してからも「早くやらせろー」「出てこいやー」と、いななき続ける。そういう取り組みも、とてもけっこうでありました。
中には相手と対面させられても、そっぽを向いていて「俺、やる気ないからねー」とアピールするのもいました。どうするのかと案じていると、突然、相手に襲いかかったのです。なんと、フェイントだったのですね。牛さんも、頭を使っていました。
結びの一番は、観衆の期待が盛り上がったものの、あっけなく短時間で引き分け。双方、やる気まんまんで、危ないと判断されたのか。場内アナウンスを担当していた方も「何かあったの?」と戸惑うほどでした。
でも、ほかの取り組みもよかったし、ともあれ満足でありました。スペインの闘牛みたいに残酷じゃないところが、日本的でいい感じです。
小千谷は錦鯉発祥の地だそうで、今も生産が盛んで、世界中の愛好家に高額で取引されるとか。錦鯉のミュージアムにもバスで行きまして、下は「花咲か爺さん」ふうに餌をまく夫。
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