見出し画像

【映画紹介】第5回『ジョン・ウィック:コンセクエンス

1.Prologue
先週、『名探偵ポアロ ベネチアの亡霊』を観たばかりだったので観ようかどうか悩んでいたのですが、友人に誘われてアッサリ視聴を決めました。今までVODでしか観たことがなかったシリーズなので一度くらいスクリーンで観ておかないと、という思いもありましたしね。リキ入れてドルビーシネマで観てきましたよ。

ぼくはドルビー特有の導入映像が結構好きで、「ああ~これが本物の“黒”ねえ」って毎度面白がっているのですが、目と耳が雑なので本編鑑賞中は本物の黒を認識できていないような気がしています。こまけえこたあ良いんだよ。

なんにせよ、派手なガンアクションをドデカいスクリーンとドデカい音量で味わえば、ドデカい満足感が得られるのは必定なので、一番いいのを頼むべきなんです。気合い入れて楽しんだんだ、と思うことが大事。大事なのは“心”なんす。たぶん。

2.Outline
すみません、ズルをします。あらすじは公式HPからの引用です。
「『Prologue』『Outline』『Sentiments』『Tips』の頭文字を取ってPOSTじゃ!」とかやっちゃったせいで、Outlineをやらないわけにもいかないので一応書くかという感じ。ちょっと今、あらすじを自分なりにまとめるエネルギーがなくって。ご容赦を。

 Quote
 裏社会の掟を破り、粛清の包囲網から生還した伝説の殺し屋、ジョン・ウィック。
 地下に身を潜め、全てを牛耳る組織:主席連合から自由になるために立ち上がった。
 組織内での権力を得た若き高官グラモンは、聖域としてジョンを守ってきたニューヨークのコンチネンタルホテルを爆破、ジョンの旧友でもあった盲目の達人ケインを強引に引き入れ、ジョン・ウィック狩りに乗り出す。そんな中、日本の友人、シマヅの協力を求めてジョンが大阪のコンチネンタルホテルに現れる・・・。
 果たしてジョンは、かつて忠誠を誓った世界との決着をつけて、真の自由を手にすることができるのか!?
 Unquote

         ※以下、ネタバレ要素を含みます。

3.Sentiments
映画を見終わった後、友人とご飯食べながら感想を言い合ったりもしたのですが、トータルで10分と話していなかったような気がします。だってこれは「ジョン・ウィック」なので、小賢しい考察とか思想とかを差し挟む余地があんまり無いんです。キアヌ・リーヴスがガンフーキメてれば、お客は満足しちゃうんです。ぼくは満足した。

アメリカ映画特有(?)の間違ったニッポン像が健在だったのも良かったですね。
ざっと挙げても、これだけあります。

 ・お酒の広告が広告の用をなしていない(なんて書いてあったか判然としないけど)
 ・大阪メトロがプラスチック製座席を採用している
 ・メッチャ気軽に矢道へ踏み入ってくる大阪コンチネンタルのメンバー
   (これが裏社会流のキュードー……ってコト!?)
 ・速射性と貫通力を併せ持つインチキ性能の短弓。しかも撃ってヨシ、殴ってヨシ
 ・厨房に抜き身で保管されているドス(錆びません!?)
 ・用心棒と言えば、防弾装備のスモウレスラー。極東じゃ常識だよなあ!?

こういう作り手の意図しないお笑いポイントが好きなので、ぼくは「間違ったニッポン像」には好意的です。頑張って再現しようとしていれば可愛げすら感じる。
あと、和弓や日本刀に対する信仰にも似た信頼感が感じられるのも良い。「ジャパニーズソードならボディアーマーも豆腐のように切れるぜ!」「防弾装備なんてキュードー(※弓道じゃない)の前では無力!」とばかりに善戦する旧式兵装の数々。
銃なんか捨ててかかってこい。南蛮の武器なんざメじゃねえのさ、といった風情。
野暮なことは言いっこなしです。

個人的に大阪編で笑えたのは、シマヅ(演:真田広之)に「梅田駅に行け」と言われてジョンが難なく目的地に辿り着いたシーン。日本人でも迷うんだぞ、ミスター・ウィック。大阪には梅田駅が五つあるんだぜ。それを追手も撒きながら辿り着くなんて……!
流石はジョン・ウィック。伝説の男。バーバ・ヤーガ。

話の舞台がパリとかに移って来ると「あれ!? 大阪編あんまり本筋に絡んでなくね!?」「真田広之のために仕立てられた舞台であって、それ以上でもそれ以下でもなかった……?」と思ったこともありましたが、最後の最後、シマヅの娘が出てきて伏線回収がなされたことでホッとしました。本作のテーマである“報い”に絡む形でしたので、綺麗に拾っていってくれたなと思います。これだから、エンドロール中に立ち上がるのはオススメできないのサ。

あと、実はまだ笑いどころがあります。たとえば、恒例の落下シーン。
二階からダンスホールに、ホテルの屋上から道路に、と今までも容赦ない落下が描かれていましたが、本作では階段を転げ落ちます。それも、222段も。
もうね、やりすぎると笑っちゃうんですよ。「人外キャラでも、もうちょい控えめに落ちたり轢かれたりするだろ!」と言いたくなるくらいに落ちてましたもん。ここへさらに、自ら落ちに行っている感が拍車を掛けました。鑑賞後も、「ツボ男(正式名:Getting Over It with Bennett Foddy)みたいだ」と言って友人と笑いました。
上からのアングルで、ジョンが火を噴く散弾銃(字面から想像される以上に燃えます)をぶっ放しているシーンも派手派手で笑顔になりました。

さて、馬鹿笑いしているだけのイメージがつきそうなので、ここで一つ、ロンダリングも兼ねて真面目な話を一つ。副題にもある通り、本作のテーマは“Consequence”だと思います。この語はResultと同じく“結果”という意味を持ちますが、ネガティブなニュアンスを持つ点が違うのだそうです。

んで、サブテーマは何かと言うと、それは“死と自由”だと考えます。作中でも散々ぱら「真の自由とは死ぬことだ」と言われてましたしね。これは、自由を求めるジョンやケインが死ぬ前振りだったと言っても良いでしょう。「誓印だけでなく兄弟の縁も守るべきだよね(意訳)」といった台詞をシマヅが言ってましたが、コレも本当にその通りで、諸々の契約関係から解き放たれようとも、しがらみから自由になることは中々できないものです。そういう意味では兄弟の縁も、仇同士の関係も同じようなもんでしょう。映画と視聴者、キャラクターと役者の関係も同様です。

“それ”から逃れるには死ぬしかない。
自由とはすなわち死。自由を求めることは死を求めることに他ならない。
4作目で疲労がピークに達し、「今回の映画でジョンを死なせてやってくれ」と願ったキアヌ・リーヴスのことが頭をよぎって、ぼくは妙に納得したりもしました。
本当、お疲れ様です。

侯爵がジョンに言っていた「お前は自分の墓を求めてさまよう亡霊だ」という指摘は的を射ていたのかも知れない。二重の意味で。

4.Tips
・我が輩、今年7月にシーランド公国男爵の位を拝命しましたので、爵位持ちのキャラが出てくると対抗心が燃え上がるのですが、本作で出てきたのはグラモン“侯爵”。序列としては公爵に次ぐ2番目の階級です。男爵は貴族の中では最下位の地位ですが、まあ公爵未満は所詮、ワン・オブ・ゼム。互角、といったところですね。むしろ上に行こうとする気持ちが強い分、男爵の方が上まである。ぼくの勝ちだ、グラモン。
・逃げてた奴が戦い出すと妙にガッツを見せるのは1作目からの恒例(でもないか)。なんならヴィゴより粘ってたぞ、金歯の大男。
・グラモン公爵がペニーワイズと聞いてビックリ。排水溝に押し込めておくには勿体ない美男子。
・決闘のシーン、3射目でジョンが撃ってないのが分かってニヤリ。公爵がケイン(演:ドニー・イェン)を押しのけて「代わろう」した時点でニッコニコ。「娘も自分も、もう自由か?」ってケインが確認したところで笑いをこらえるのが困難になりました。あまりにも順当に、死へ向かっていたので。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?