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おみこの日常

今日はとても平凡な日常すぎて疲れたので、ここに書き留めておきたいと思う。

今日という一日、私はとても波乱な出来事をくぐり抜けてきた。
まず今朝は、吹奏楽部の朝練で鍵を返さないといけなかった。戸締り係というのは、部員全員が練習所から出ていくまで帰れないという過酷な時間を過ごす係である。
しかし、2年生の先輩方が、来年の1月に開催されるアンサンブルコンテストの話に花を咲かせていたせいで、鍵を返しに行く時間を消耗してしまったのである。職員室は、8時25分になると職員会議が行われるため生徒は出入りできないことになっているので、私は焦燥感に苛まれていた。案の定、鍵を返したのは、予鈴がなった直後だったので、先生に大いに怒られた。

朝のHRが終わると、類型科目調査(来年進むのは文系か理系かを調べる作業)の紙を出さなければいけなかった。これは、来年学年が上がった時に必要であり、今後の進路に大きく影響してくる。

しかし、その紙がなかったのである。

昨日が提出締め切りで、今日の朝に急いで書き、ハンコまで押してきたのに、急ぎすぎていたせいかクリアファイルにしまっていなかったのである。
これはまずいと思い、クラス担任にその旨を伝えたら、当然怒られた。
私のクラス担任はネチネチと小言が長い。
しかし、私は「はい、その通りです。」と言いながら聞き流していた。「はい」と「すみませんでした」というのは魔法の言葉である。全てを終わらせることが出来るのだ。私は必死にペコペコしながら聞き流した。朝が来ない夜はない。
そうするうちに、担任の長い長いお小言は終わり、私は明日持ってくるという一生をかける約束を果たしたのである。

7時間目まで及ぶ授業と、夜まで続く部活動が終わり、私はその報酬に、部活動の顧問からもらったQUOカードで、ファミリーマートへ食べる牧場ミルクを買いに赴いた。

寒い中路地を歩き、ファミリーマートのドアを開けた瞬間、私は硬直した。

中学時代、私が嫌いだった奴がバイトしている....っ!!

バタン!!
(↑これは、コンビニの扉を閉めた音)

コンビニを歩きながら考える。

そういや、母が言っていた。
「あんたが嫌いなやつ、あそこのファミマで働いとったよ。」と。
お母さんに迎えに来て貰おうか。
いや、食べる牧場ミルクなしではこれから生きていけない。
しかし、嫌いな奴とわざわざ目を合わせる訳にもいかない。
だが、その時どうしてもアイスが食べたい気分だった。奴の前で、QUOカードを突きつけて、「これ、使えますか?」とドヤ顔してやったら、どれだけすがすがしいことだろう。
アイスのためならどこにでも行けるような気がした。

がんばれ、私。己を信じろ。

そう決意し、再びコンビニの扉を開けた。

嫌いな奴と目が合う。注がれる視線。
うっ、と一瞬怯んだが、一応店員である奴より、客である私の方が立場が上なのである。こんなものは屁でもない。

Twitterで今の状況をつぶやきながら牧場ミルクを探す。あった。
牧場ミルクは、アイスコーナーの所に、これでもかと言うくらい積まれていた。
キャラメル味と桃味、そして定番のバニラ味があった。まだ定番のバニラを食べたことがなかったので、バニラ味を買うことにした。

そして、いよいよお会計。奴と対面する時だ。 
大丈夫だ。私には牧場ミルクとQUOカードがついている。
私は一切目を合わせずに牧場ミルクをカウンターの上に出した。
お会計を進めていく。
値段を告げられた直後に、私は例の必殺技を繰り出した。
奴の前でQUOカードを突きつける。

「QUOカードって、使えますか?」

奴は怯んだ。引いているようにも見えた。
だがしかし、嫌いな奴に引かれても、別に友達が減るわけでもなんでもないのでそれでいいのだ。バカボンのパパ精神である。
「...はい。」
としぶしぶ言われたので、私は満面の煽りの笑みで、「あざーす!!」
と言ってやった。

どうせ貴様は高校という選択肢から切り離されたのだから、私が青春を謳歌している間に、せいぜい働いて社会の過酷さというものを思い知らされるが良い。
私は人外なりに楽しく生きているのだ。

これは実に痛快な出来事だった。
私は軽やかな足取りで牧場ミルクを手にし、家路についた。  

家に帰ると、夕飯は私の大好きなナポリタンだったし、母から1200円のお小遣いをもらった。

まぁ、今日も平凡で、めんどくさくて、人外のような1日だったというわけだ。




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